開業リスクが高まる中での勤務医確保の難しさ
医院の規模を拡大しようとされている院長にとって、勤務ドクターの採用と定着は避けて通れない大きな課題です。勤務ドクターを雇っても数年で開業してしまう…。そんな経験をお持ちの先生も多いのではないでしょうか。開業志向の勤務ドクターの多くは、「ある程度治療ができるようになったから」と独立を決断しますが、院長からすれば「本当に開業して大丈夫?」と不安になるケースも少なくありません。
しかし、歯科医院は開業予備校ではなく、地域の患者の健康を守る社会的インフラとして存在しています。その役割を果たし続けるには、勤務ドクターにもキャリアの選択肢として「開業以外の道」を提示し、納得してもらう必要があるのです。
先生の医院では、勤務ドクターに対してどのようなキャリアパスを描ける仕組みを用意していますか?
勤務ドクターが開業を選ぶ心理背景とは?
勤務ドクターが開業に向かう動機は一様ではありません。明確に開業を目指して勤務している方もいれば、「このままここで働き続けても自分は評価されない」と感じて転職や開業を選ぶ方もいます。後者のタイプは、医院内での役割や成長の機会が見えないことから、外に活路を見出そうとするのです。
心理学でいう「自己効力感(自分にはできるという感覚)」や「自尊感情(自分には価値があるという感覚)」が低下すると、人は不安定な選択に走りがちになります。逆に言えば、これらを満たせる環境を用意できれば、勤務ドクターの離職や早期開業を減らせる可能性があります。
ある郊外の歯科医院では、勤務ドクターに「自分が医院の一員として尊重され、チームに影響を与えられる」と感じてもらえるよう、プロジェクトなど組織運営のリーダー役を任せるなどの工夫をしていました。これにより、「ただの補助者」から「医院の一翼を担う存在」へと意識が変化し、離職率が大きく改善したのです。
以前、勤務ドクターに聞いたのですが「大学の同期とは”いつ開業するか?”の選択肢しか話さない」と言っておられました。つまり、勤務ドクターとしての道が有力な選択肢としてはまだ根づいていないのです。
「待遇」よりも「存在意義」が問われる時代
給与や福利厚生の充実はもちろん大切ですが、それだけで人は長く働き続けてくれません。「待遇で入る人は待遇で去る」というのは人材育成の現場でよく言われる言葉です。
特にこれからの時代、「組織の理念に共感できるか」「自分が貢献しているという実感があるか」が、定着率を左右する要因になってきます。これはZ世代を中心とした若手層に限らず、30代後半〜40代の勤務ドクターにも共通して当てはまる傾向です。
ですから、院長自身が「自分のための歯科医院」ではなく、「地域と共にあり、スタッフと共に発展していく歯科医院」というビジョンを言語化し、それを医院内に浸透させていく必要があります。
魅力的なキャリアプランとは何か?
勤務ドクターにとっての理想的なキャリアとは、「院長にはならないけれど、医院の中核として成長できる道があること」です。そのためには、以下のような制度設計が求められます:
・専門領域ごとのリーダー制度、専門チームでの取組み推進(例:小児歯科・訪問・自費補綴など)
・外部研修の補助制度、専門医資格取得サポート制度(医院の方向性と合致する内容に限る)
・症例発表・学会参加の支援(医院の知見として蓄積できるようにする)
・中長期の評価制度と昇格モデル(単なる勤続年数でなく役割や成果に応じて評価されることを明確に示す)
・スタッフマネジメントでの役割設定(スタッフに尊敬される存在になる為のサポート)
勤務医の「成長モデル」を描ききれるか?
今後、医療費の抑制政策が加速する中で、歯科医院にも経営の効率化と役割の明確化が求められます。それに呼応するように、勤務ドクターの「成長モデル」もまた、組織の中でいかに力を発揮していくかが問われる時代です。
外部環境の変化をチャンスと捉え、勤務ドクターのキャリア支援の仕組みを再構築することは、単なる採用戦略にとどまらず、医院そのものの持続可能性を高める重要な戦略と言えるでしょう。
先生の医院では、「院長以外が輝くポジション」を用意できていますか?
もし、現時点で用意できていないのであれば、どこから手を付けるのが良さそうでしょうか?
もっと詳しく知りたい方は、お気軽にご相談ください。勤務ドクターのキャリア支援についての体制設計の構築支援も承っています。