動機づけ面接(Motivational Interviewing)は、患者との信頼関係を深め、治療への主体的な参加を促進する非常に有効なコミュニケーション手法です。TSD法や系統的脱感作といった技術は導入されていても、「患者のやる気」を引き出す深い対話がまだ習慣化されていない歯科医院は少なくありません。
今回は、動機づけ面接の基本会話パターンの実践法、治療コーディネーターや歯科衛生士による成功事例、そして「受診行動」を促す共感的対話のポイントについて、実践的にご紹介します。
動機づけ面接は、患者の「やってみたい」「変わりたい」を引き出し、その気持ちを支援する対話の流れが重要です。代表的な基本パターンを3つご紹介します。
・共感的傾聴
「その不安、よくわかります。私も同じように感じたことがあります。」と感情に寄り添う言葉をかけます。
・自己効力感の引き出し
「前回お話した、セルフケアでの磨き残しを改善できて良かったですね。私も嬉しかったです。次はどうしていきますか?」と、できたことを肯定します。
・変化志向を喚起
「今後の生活がこう変わったらどう思いますか?」と未来に焦点を合わせた質問で、意識を自分ごとに進めます。患者自身が「変化」を表明することが大切です。
治療コーディネーターや歯科衛生士が動機づけ面接を実践し、患者に安心と納得を提供した事例をご紹介します。
・むし歯治療の患者との会話
「プラーク付着の数値が改善しています」「どの様に磨き方を工夫されたのですか?」「そうしようと思われた理由は何でしょうか?」と聞くことで、患者自身が行動の理由に気づき、セルフケア継続への動機づけとなりました。なかには「子どもが生まれたのでむし歯菌をうつさない様にしたいと思って」という動機を話してくれた患者もいました。
・治療コーディネーターとの対話
「〇〇さんには△△の生活改善方法が合いそうです。どう思われますか?」と未来像を共有し、納得と信頼から治療法について相談してくれる様になりました。その結果、患者の意志で禁煙したり自費治療を選ぶ患者が増えました。
患者が診療を「自分ごと」として捉え、行動を変えるには、次のような対話設計が効果的です。
・小さな目標設定を共にする
「まずは来月もう一度来てセルフケアの正しいやり方を身につけてみませんか?」と継続を促す。
・自分らしさを引き出す質問
「日常の中で気がついたご自分の変化はありますか?」と尋ねることで、患者が自身の変化を言葉にするきっかけを作ります。
・次への承諾を確認する
「ご提案した次回の治療計画についてどう思われますか?」と質問し、患者が納得して参加できる意識づくりをします。
先生の医院では、患者に「自分ごと」を感じさせる対話が日常になっていますか? 単に治療を進めるのではなく、患者の内面から“やる気”を引き出すアプローチを取り入れてみませんか?
患者の動機づけの仕組み構築に関するご相談も歓迎しておりますので、いつでもお問い合わせください。