若手スタッフが「未来を描く」ことが難しい理由
日々の診療に追われる中で、自分の将来像を明確に持てている若手歯科医師や歯科衛生士は決して多くありません。たとえば、「あなたは3年後、どんな知識や技術を身につけ、どんな役割を担っていたいですか?」と尋ねても、即答できるスタッフはごく一部でしょう。
この背景には、人間の心理として「不確かな未来より、目の前の現実に意識が向きやすい」という特性があります。経験や知識が乏しければ、自分の可能性も限定的に捉えがちです。そのため、まずは身近な先輩や尊敬するロールモデルの存在が、キャリアビジョン形成の第一歩となります。
先生の医院では、若手スタッフに「将来どんな歯科医療従事者になりたいか?」と問いかけていますか?
成長には「学び」と「実践」の場が不可欠
キャリア形成は、単なる資格取得で終わるものではありません。国家資格も技術も、患者を健康に導くという目的のための「手段」にすぎません。よって、臨床の中で何を学び、どう実践するかが重要です。
たとえば、ある歯科医院では、歯科衛生士向けに「MFT(口腔筋機能療法)」の研修機会を継続的に設け、興味関心を持った歯科医師とスタッフをチームにして運営を任せました。その結果、若手スタッフが自らの専門性に誇りを持ち、継続的な学びと成果を積み上げられる環境となりました。
知識や経験が増えていく過程で興味を持つことで、もっと深く知りたいと思う様になり、「自分は何をしたいのか」「どう貢献したいのか」が少しづつ明確になってくるのです。
「成長の種まき」は院長の重要な仕事
若手のキャリアは「放っておけば自然と育つ」ものではありません。むしろ、適切な種まきをしなければ成長の芽は出ません。
院長としての役割は、未来を描けるような「経験の機会」を提供し、スタッフがロールモデルに出会える場を意識的につくることです。たとえば、他院の先進的な取り組みを見学する「外部視察ツアー」や、院内での「勉強会・症例検討会」「プロジェクト発表会」「レポート提出」などを継続的に実施している医院では、自然と自律的な学習が文化として根づいています。
また、スタッフにとっての「成功体験」は小さなものからで構いません。新しい技術を使って患者さんから感謝の言葉をもらった、患者が治療提案に「すごく丁寧な説明で納得できました。ドクターのお勧めの治療法でお願いします」言ってもらえたなど、そうした経験の積み重ねが自己効力感を高め、未来の自己像の明確化に繋がっていきます。
心を育てるマネジメントの視点
キャリア設計にはスキルだけでなく、「心」の成長が欠かせません。
どんなに技術が高くても、患者やチームに対して真摯でなければ信頼される歯科医療従事者にはなれません。「自分が技術を磨く理由は、患者を健康に導くためである」という価値観をスタッフが自然と持てるようになるには、日常の対話と院長の姿勢がカギになります。
「この医院で働くことで、自分の存在意義が見えてくる」
そう思える環境をつくるためには、経営理念を伝えるだけでなく、日々の診療やミーティングを通じて「行動で示す」ことが求められます。
先生の医院では、若手スタッフが「この仕事に誇りを持っている」と感じられる場面はどれだけあるでしょうか?
未来型経営のために、今できること
診療報酬改定や国の医療政策は、「効率化」「包括化」「アウトカム評価」など、ますます厳しい方向へ進んでいます。しかしこの流れは、裏を返せば「本質的な歯科医療」を実践する医院が評価される時代とも言えます。
スタッフの成長を支援し、キャリアを育てる医院は、結果的に患者満足や経営安定にもつながります。短期的な成果だけでなく、3年・5年・10年先のスタッフの姿を描くことが、未来に強い医院づくりの第一歩です。
先生の医院では、「3~5年後の主力メンバーをどう育てるか」を計画していますか?
「理念を掲げたとしても、その場所に続く道はまだ存在せず、地図にはまだ何も描かれていません」。理念の実現に続く道の方向を指し示すのはリーダーである院長であり、院長は幹部と一緒に道を描いてチームメンバーと共有し行動していく必要があるのです。
しかし、多くの医院では「ホームページに理念は載っている」のですが、地図には何も描かれていないままなのです。
未来を描く力のない歯科医院はこれから本格化してく医療費抑制政策にも対応できずにジリ貧になっていく。そう感じるのです。
記事をお読みいただき、「もっと具体的な育成制度や成長支援の仕組みを知りたい。チーム作りをしたい」と感じた院長先生は、ぜひ一度ご相談ください。医院の理念と未来に合った人材育成計画を一緒に描いていきましょう。