ある郊外の歯科医院では、以前リーダーとして活躍していた歯科衛生士が、出産・育児を経てパート勤務で復帰しました。院長もスタッフも、彼女の復帰を喜び、勤務時間や業務内容に柔軟に対応してきました。しかし復帰後しばらくして、彼女はこう語りました。
「今の働き方に不満はないけれど、皆が外部研修でスキルを伸ばしたり、新しいプロジェクトに関わる姿を見て、自分は置いていかれているようで苦しい…」
これは、労働時間の制約よりも「成長機会の喪失」からくる、自己効力感の喪失です。医療現場において“貢献している実感”は、給与や制度以上にモチベーションを左右します。
先生の医院では、パートや短時間勤務スタッフに、どのような成長機会を提供していますか?
成長意欲を活かせるかどうかが、医院の未来を左右する
日本の医療界では、人材不足が深刻になっていきますし、労働者をめぐる生活環境も厳しさを増しています。スタッフによっては子育てに集中したい人もいますが、「今までチームメンバーの中心として頑張ってきたのに・・・」と補助的な役割に自尊感情が低下するスタッフもいるのです。
「意見を言っても私は時間的制約で参加できないし、他のスタッフの負担を増やしてしまう・・・」「後輩がリーダーを担ってくれているから、意見があっても控えて邪魔をしない様にしないと・・・」と考えるスタッフは多いと感じます。
パート・短時間勤務者の「補助的戦力」扱いからの脱却する。成長意欲とスキルのある人材に対して、役割と責任を与え、評価対象とする仕組みを整えることが、持続可能なチームづくりにつながります。もちろん、子育て中に必要な配慮は十分に実施した上で「あなたは過去もそして現在も当院の中心メンバー」だと本人が感じられる状態を作る必要があるのです。
自己肯定感が高まる院内制度とは?
たとえば、以下のような取り組みは、パートスタッフの自尊感情を高め、離職率の低下にも貢献します。
・プロジェクト単位の役割設定:
時間ではなく、成果で役割を評価。パートでも担当者になれる仕組み。
・院内研修・症例共有のアーカイブ視聴:
短時間勤務でも知識共有の機会を確保。
・業務マニュアル・引き継ぎの仕組み化:
担当替えや急な休みでも安心して業務を続けられる環境。
・個別面談制度の充実:
短時間勤務者のキャリア希望を定期的にヒアリング。子育てのステージに合わせて、本人が本格的復帰へのステップがイメージできる様にする。
実際にある医院では、月2回のリーダーミーティングにパートのスタッフも参加できるよう時間を調整しました。そして子育て中のスタッフが「子育て応援プロジェクト」「在宅勤務制度構築プロジェクト」、そして患者向けの「母親教室プロジェクト」のリーダーに。これにより、発言機会が増えただけでなく、「チームの一員として見てもらえている」という実感につながりました。
人材不足時代の競争力は「活かす力」にある
今後の医療制度改革では、医科歯科連携やチーム医療の推進が重視され、報酬体系も「チーム単位」の評価へと進む見込みです。これは、時間に制約のあるスタッフであっても、チーム貢献によって正当に評価される可能性を意味します。
特に郊外エリアでは、人口減少と労働力不足の影響を早期に受けることから、「正社員中心」の発想を転換し、いかに多様な働き手を活かすかが、生き残りの鍵となるでしょう。「子育て中のパートスタッフが意見があっても気を使って発言を控える」という環境を作ってはいけないのです。
先生の医院では、パートタイムスタッフの成長支援や役割設定について、どのような仕組みがありますか?
「働きやすさ」の次に必要なのは、「やりがい」を提供する体制かもしれません。
このテーマに興味を持たれた先生には、具体的な院内制度の設計支援もご案内できます。お気軽にご相談ください。