予約管理と人員配置の最適化で診療オペレーションを整える
歯科医院の業務改善において、診療の「詰まり」や「バタつき」を解消するためには、予約管理と人員配置の見直しが欠かせません。これは業務フローを最適化する上で最も実務に直結する改善ポイントの一つです。
今回は、郊外にあるスタッフ20名・勤務医2名体制の歯科医院をモデルに、オペレーション視点から「予約管理と人員配置の最適化」について掘り下げてみましょう。
予約管理の精度が診療効率を決める
予約管理のミスは、現場の混乱を引き起こします。例えば、治療工程を深く理解していない受付スタッフが予約を入れると、実際の処置にかかる時間や人手を正確に予測できず、診療がバタバタすることがあります。
特に「新患は断るな」という院長の方針のもと、診療内容や時間を考慮せずにアポイントを詰め込むと、患者の待ち時間が長くなり、診療スタッフも作業レベルで動くことになります。
先生の医院では、受付スタッフと診療スタッフが「予約枠の考え方」を共有する時間を設けていますか?
アポの入れ方一つで、医院全体のリズムが変わります。ベテラン診療スタッフであればアポを入れないタイミングに受付が新患を入れてしまうことが繰り返されれば、「どうしてそこに入れたのか」と受付スタッフへの疑念が生まれ、チームの信頼関係にも影響を及ぼします。予約表の「余白」と「詰まり」の意味を、医院全体で見直す必要があります。
人員配置が診療の処理能力を決める
もう一つの大きな要素が「人員配置」です。診療チームの構成によって、同じ予約数でも処理スピードと治療の質が大きく変わります。
たとえば、経験の浅い勤務ドクターが枠を担当する日は、急患を入れたくても治療技術や所要時間の見積もりから無理が出てしまい、結果的に経験豊富なドクターに負担が集中するというケースがあります。
このような偏りは、ドクター個々のスキルの違いだけでなく、曜日ごとのスタッフ構成やペアリングの組み方にも起因します。特にシフト制を採用している医院では、日によってチームの処理能力に差が出やすくなります。
また、チーム制を導入している場合にはチーム間の連携が取れずに、忙しいチームと余裕のあるチームが生まれがちです。
処理能力を高める技術研修の必要性
こうしたバラつきを解消するためには、勤務医や歯科衛生士の技術研修によって「対応可能な治療領域」を広げていくことが重要です。
技術の幅が広がれば、それだけ予約の柔軟性も上がり、無理のない予約運用が可能になります。
また、特定の治療しかできない人材が多いと、アポ枠が余っていても入れられないジレンマが発生します。処理能力が高いチームを複数つくることができれば、「予約枠の余白」をつくりながらも、生産性は落とさない運営が実現します。
あと、ドクターが診療スタッフに頼り切っている歯科医院では、「あそこをドクターが自分でやってくれたらもう一人患者を導入できるのに・・・」なんて声も伝わってきます。
受付スタッフにも“アポを読む力”を
予約管理は診療チームだけの課題ではありません。受付スタッフにも「この治療は誰が・どれくらいの時間で・どのように対応するのか」を理解する力が必要です。
そのためには、治療の流れを説明する研修や、実際の診療を体験するオペレーション研修の導入も有効です。
単なるマニュアル化ではなく、現場の判断力を育てることが、混乱の少ない予約運用を生む鍵となります。受付スタッフが治療工程を把握し、「このチームならこの時間帯にこの治療が可能」と判断できるようになれば、現場の混乱も減り、患者満足度の向上にもつながります。
毎日の改善が「最適化」を支える
予約管理と人員配置の最適化は、一度仕組みを作って終わりではありません。診療内容やスタッフの成長によって常に変化します。だからこそ、「今週は診療がスムーズだったか」「どこで詰まったか」「誰に負担がかかったか」を定期的に振り返ることが重要です。
たとえば、週1回の「アポイントレビュー会議」を設け、受付と診療スタッフが一緒に予約表を見ながら改善点を話し合う時間を持つ医院もあります。こうした取り組みが、診療品質と生産性の両立を可能にするのです。
先生の医院では、アポイント運用や人員配置の課題をスタッフと一緒に見直す機会を設けていますか?
最適な予約と人員配置がなされて初めて、治療の質を落とさず、空き枠を計画的に生み出すことができます。そのためには、ドクター・歯科衛生士・診療スタッフ・受付が一体となって「見えるアポイント表」を作り上げ、運用し、改善し続ける体制づくりが欠かせません。
診療のバタつきに悩まれているなら、まずは「アポイント表がチームにとって見やすく、意味のあるものになっているか」を問い直してみてください。それが業務改善の第一歩になります。