「マネジメントの父」とも称されるピーター・ドラッカーは、20世紀を代表する経営学者です。彼の言葉は、企業だけでなく、医療機関や教育、非営利組織など、あらゆる組織に深い示唆を与えてきました。
今回は、ドラッカーの名言を通して、歯科医院が理念を持って組織を成長させ、チームの力を引き出し、患者に選ばれる医院へと進化するためのヒントを探っていきます。
「成果を上げるには、強みを活かすべきである」
歯科医院では、スタッフの不得意なことを矯正することに意識が向きがちです。しかし、ドラッカーは「弱みを直すのではなく、強みを最大限に活かすことが成果につながる」と述べています。
たとえば、治療の知識が豊富でコミュニケーションも得意な受付スタッフには治療コーディネーター的な役割を任せると、本人のモチベーションも高まり、医院全体の生産性も上がっていきます。
「組織の目的は『顧客の創造』である」
ドラッカーは「ビジネスの目的は利益ではなく、顧客を創り出すこと」だと明言しています。歯科医院経営でも、単に来院患者数を追うのではなく、信頼関係に基づく“リピート患者”を生み出す取り組みが求められます。
問診時の対話設計や、定期検診の重要性を丁寧に説明する体制、医院の「理念」を分かりやすく伝えるパンフレットなど、「価値を感じてもらう設計」が患者創造に繋がるのです。
例えば、先生の医院のすぐ近くに最新設備が整ったユニット30台の歯科医院が開業したとします。それでも「うちの患者は転院しない」と先生が自信を持って言える患者は何人くらいいるでしょうか?
「リーダーとは、人をして成果を上げさせる存在である」
院長は“最も診療が上手い人”ではなく、“人を活かして成果を出す人”でなければなりません。ドラッカーは、リーダーに必要なのはカリスマ性ではなく、行動・姿勢・信頼の積み重ねだと述べています。
スタッフがやる気を持ち、挑戦できる環境を作るには、「意見を聴く」「責任を任せる」「感謝を伝える」といった日々のマネジメントがカギになります。リーダーが変われば、医院文化が変わります。
・トップダウンを手放せずに医院規模が大きくなると、忙しさに院長が苦悩する
・院長ブランドで医院を作り、経営リスクがどんどん高くなっている
・スタッフに任せたはずなのに院長が介入してしまう
・リーダー教育をせずに権限だけを丸投げしてしまう
・管理型組織を作っているのに「うちのスタッフは自主性がない」と嘆く
・軸が無く院長の言う事がコロコロ変わるのにスタッフが動かないと責任転嫁
・スタッフには医院が何を目指しているのかが伝わっていない(理念を掲げれば伝わると言う勘違い)
これらは私が今まで出会ってきた院長がされていた初歩的な勘違いです。
組織が停滞したりスタッフが退職することが多い場合、その原因の95%は院長の勘違いです。だから院長がこれらの勘違いに気づいて原理原則に沿ったマネジメントをするだけで、組織は良い方向に進みだすのです。
院長の勘違いポイントを見つけて修正して頂くのも私がクライアント医院で担っている役割の一つです。
まとめ:ドラッカーの知見から歯科医院経営の本質を学ぶ
- ・スタッフの強みを活かし、成果が出やすい体制をつくる
- ・患者にとって価値ある医院体験をデザインし、信頼を育む
- ・院長が「成果を出させるリーダー」に変わることで医院が成長する
経営に正解はありませんが、「理念を軸にしながら、現場の成果につなげる」ことこそが、ドラッカーの言うマネジメントの核心です。歯科医院もまた、社会的な価値を持つ小さな組織。そこで働く一人ひとりの力を引き出す院長のリーダーシップこそ、医院の未来を左右します。
経営とは人の幸せを創造する為におこなうもの。いくら収益性が高い医院を作ったとしても”患者を健康に導く”という目的で一致したチームメンバーが自己成長に投資しながら患者に還元していくサイクルを作れていなければ”医療機関”としての評価は低いのです。
先生の医院では、「スタッフの強み」は可視化されていますか?そして、それを最大限に活かす役割分担ができているでしょうか?
医院が掲げる目的と目標を達成する為に、スタッフは自己成長の為の負荷から逃げずに立ち向かっていく医院文化は作れているでしょうか?
チームメンバーは自分が働く歯科医院を医療機関として誇ることが出来ているでしょうか?
チームビルディングでお悩みの場合にはご相談ください。スタッフひとり一人が活き活きと働くチーム作りをサポートさせて頂きます。