今日は歯科医院の成長に必要な「オペレーション視点」。
1.オペレーション視点(業務効率化)
2.患者視点(サービス向上)
3.歯科医療としての視点(医療の質)
4.5S視点+安全視点(職場環境・感染対策)
5.マーケティング視点(集患・認知・ブランディング)
なぜ業務フロー図が必要なのか?
歯科医院に新人スタッフが入社した際、まず戸惑うのは「誰が・何を・どのタイミングで行っているのかが分からない」という点です。一つひとつの作業内容はカリキュラムやマニュアルで教えられていても、それが現場でどう繋がっているかが分からないのです。
とくにユニットが複数台ある医院や、診療アポイントが高密度で組まれている医院では、現場は常に慌ただしく、新人が質問する余裕もない状況が生まれがちです。そうなると、新人は誰かの動きを真似したり、無難なバックヤードの作業ばかりになってしまいます。本来の役割を果たせずに「なんとなく」動く時間が増えてしまうのです。
先生の医院では、新人スタッフに対して「全体の流れ」や「自分の立ち位置」を伝える工夫をしていますか?
このような問題を解決するためには、「業務フロー図」を用いて業務全体を見える化することが効果的です。
チーム連携の仕組みを「見える化」する
歯科医院の業務は、受付から診療、会計、次回予約に至るまで、各セクションの連携によって成り立っています。1人ひとりが自分の役割を果たし、バトンを次に繋ぐ必要があります。しかし現実には、患者情報の引き継ぎミスや、やるべき業務の抜け漏れが起こりがちです。
とくに急患、患者の遅刻、スタッフの急病などのイレギュラーが多い日には、想定通りにいかないことが増えます。たとえば初回で十分なカウンセリングができず、検査も必要最低限のまま次回に持ち越すことになります。しかし、その「やり残し」が次回の来院で実行されないまま流れてしまうこともあるのです。
このような事態を防ぐためには、フロー図を使って「どこで何が起こりやすいか(イレギュラー)」まで見える化することがポイントになります。業務フロー図は単なる流れの図解ではなく、業務改善の土台でもあるのです。
成長段階に合わせた業務フロー設計を
同じ業務フローであっても、それを実行できるかどうかは、チームの経験値や成長段階によって大きく変わります。
たとえば、ドクターの手が早く、治療アシストにベテランスタッフが入る場合には、多少詰まった予約でもスムーズにこなせます。しかし、ドクターが若手でアシスタントも新人という構成であれば、同じフローをこなすことは現実的ではありません。
だからこそ、業務フロー図は一度作成して終わりではなく、チームの成熟度や人的構成に合わせて定期的に見直す必要があるのです。予約の取り方や治療の内容も、チームの成長段階に応じて調整していくことが必要です。
ベテランスタッフが休みの日はバタバタするという経験は多くの院長がされているでしょう。
「不公平感」の解消にも役立つ
どの医院でもよく聞かれるのが、「うちのチームばかりが忙しい」「他部署は余裕がありそうだ」という不満の声です。これは業務の偏りや流れの不整合があるサインとも言えます。
このようなときにも、業務フロー図の出番です。各部署の業務量と連携ポイントを明らかにすることで、偏りの原因を客観的に把握できるようになります。その上で、業務の再分配や役割の再設計を行うことで、スタッフ間の不公平感や不満を和らげることができるのです。
先生の医院では、「業務の偏り」や「負担感の違い」についてスタッフ間で話し合う場を設けていますか?
見える化された業務フローがあれば、感情論ではなく、事実ベースでの建設的な議論が可能になります。
業務フロー図は「改善の起点」
業務フロー図の作成は、「見える化」によって現状を整理するだけでなく、医院の成長に向けた「改善の起点」にもなります。イレギュラー対応の精度向上、情報連携の質向上、スタッフの動きの明確化、業務の標準化——すべてが、業務フロー図を軸に回り始めます。
歯科医院のように変化と判断の多い現場にこそ、動きを図解して共有し、更新していく仕組みが必要なのです。
組織が大きくなるほど「見えにくくなる」のは自然なこと。だからこそ、「見える化」する努力が医院全体の質を底上げします。
まとめ
業務フロー図を作成して業務の流れを見える化することで、
・新人の成長支援
・イレギュラー対応力の強化
・チーム内連携の質向上
・不公平感の是正
・医院の成長フェーズに応じた柔軟な運営
こうした複数のメリットが生まれます。
口腔機能管理など新たに取り組む課題も業務フロー図が必要。
「誰が・何を・どのように動くのか」を見える形で共有することが、チーム全体の力を底上げし、患者・スタッフ・医院の三方よしの経営に繋がるのです。