今日は歯科医院の成長に必要な「オペレーション視点」。
1.オペレーション視点(業務効率化)
2.患者視点(サービス向上)
3.歯科医療としての視点(医療の質)
4.5S視点+安全視点(職場環境・感染対策)
5.マーケティング視点(集患・認知・ブランディング)
デジタルツールの導入だけでは、情報共有の課題は解決しない
歯科医院における情報共有の方法は、この10年で大きく変わってきました。以前はバックヤードに貼り紙をして、朝礼で「各自読んでおいてください」と伝えるのが一般的でしたが、スタッフ数が増える中規模以上の医院では、その方法では情報が伝わりきらないケースが増えています。
最近では、LINE WORKSやChatworkなどのグループチャットをはじめ、マニュアルのクラウド化や電子カルテ・電子サブカルテ、予約ソフトとの連携、さらにはオンライン学習システムの導入など、医院のDX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでいます。スタッフの業務負担軽減のためにも、こうしたツールの導入は有効です。
しかし、どれだけツールが高度になっても、「伝えた(言った)」ことが「伝わった・理解された・行動された」とは限りません。ここに情報共有の本質的な課題があるのです。
「読まない側が悪い」ではなく、「どうすれば読まれるか?」の視点へ
情報が共有ツールにインプットされた途端、「あとは各自が読むべきだ」という雰囲気になりやすいのが現場の実態です。確かに「読んでいない人が悪い」という因果関係も一理ありますが、これは原因論の視点であり、問題解決にはつながりません。インカムで何でも言って丸投げする「言いっ放し」も同様です。
私がコンサルティングの現場で院長やチーフにお伝えしているのは、「どうすれば読まれるか?」「どうすれば行動につながるか?」という目的論の思考です。
これは患者指導にも通じます。歯科医院のドクターやスタッフは、患者に対して「歯科治療としての正論」をを伝えるだけでは行動変容には導けない。それと同じように、情報共有においても相手の理解と行動を促すアプローチが求められます。
先生の医院では、「なぜ情報が読まれていないのか?」「どうすれば読まれるか?」についてチームで話し合ったことはありますか?
情報の「重要度」と「伝達手段」を整理する
情報共有の仕組みを設計する際には、すべてをデジタルで完結させようとするのではなく、「何を」「誰に」「どの手段で」伝えるかを整理することが大切です。
たとえば、以下のような分類が考えられます:
・重要・緊急の情報: 朝礼や対面で直接伝達し、その後グループチャットに記録として残す
・重要だが緊急でない情報: 共有ボックスやチャットで配信し、週次ミーティングなどで補足説明
・ルーティン的な連絡事項: デジタルツールのみで完結
・教育・ナレッジ系の情報: オンライン学習システムや動画アーカイブを活用し、定期的に内容をアップデート、データベース化を進めます
このように、情報の「性質」によって伝え方を工夫することで、受け手の理解と行動が促進されます。
行動科学を活かしたアプローチを
情報共有の定着には、行動科学や行動経済学の視点も役立ちます。たとえば、
・ナッジ理論: 情報を見やすく、取りやすくする(例:共有チャット内の「重要」ラベルやピン留め機能を活用)
・習慣化の仕組み: 毎朝、チャットを確認する時間を設ける。
・フィードバックループ: 情報をもとに行動したことを振り返り、成果が出た事例を共有する
このような工夫によって、情報共有は単なる「業務の一部」ではなく、「行動を生む仕掛け」に進化していきます。
情報共有は、組織文化づくりの一部
情報共有の質は、医院の組織文化の成熟度を映す鏡でもあります。どれだけデジタル化が進んでも、チームとして何を大切にし、どう助け合って働くかという「文化」がなければ、情報は単なるデータでしかありません。
情報を伝える際の「言葉選び」や「タイミング」、そして相手の立場に立った「伝え方」こそが、信頼関係をつくり、チームの一体感を高めるポイントです。
「私は〇〇さんにちゃんと言いました」では駄目なのです。
先生の医院では、「この情報はどう伝えるのがベストか?」「どうすれば行動に繋がるのか?」という視点で、スタッフと一緒に考える機会を設けていますか?
まとめ:医院の価値観に沿った仕組みをつくろう
情報共有の仕組みは、「便利なツールを入れること」がゴールではなく、「情報が伝わり、行動が変わること」が本質的な目的です。そのためには、目的に応じた手段の選択と、相手の視点で考える設計力が求められます。
デジタルとアナログをどう組み合わせるか、医院として何を大切にするのか。それをチームで話し合いながら、自院に合った「情報共有の文化」を育てていきましょう。
三方よしの視点――患者の安心、スタッフの働きやすさ、そして医院の成長――を実現するためにも、情報共有の仕組みづくりは、今こそ見直す価値のあるテーマです。