「計画通りに進まない」のが前提の歯科医院経営
歯科医院が持続的に発展していくためには、理念(ミッション・ビジョン・バリュー)に基づいた経営計画の策定が欠かせません。しかし、現場でその計画を忠実に実行していくには、もう一つの重要な要素――業務改善の視点が必要です。
なぜなら、どんなに緻密な計画を立てても、医院では予期せぬ出来事が日常的に発生するからです。その代表的な例が「中堅スタッフの退職・休職」ではないでしょうか。
たとえば、「カウンセリングを強化しよう」と専任担当者を決めた矢先に、その中心スタッフが退職してしまった。結果として他のスタッフが兼任せざるを得なくなり、業務過多に。こうした事態は、どの医院でも決して珍しくありません。
中堅スタッフが抜けた時、医院はどうなるのか?
中堅スタッフは業務の中核を担う存在であり、育成や仕組みの橋渡し役でもあります。その層が不在になると、現場は一気に不安定になります。院長が意図する改善も「人が足りないから」「今は無理だから」と先送りされ、改善どころか現状維持もままならなくなってしまうのです。
先生の医院では、中堅層の退職や休職がどれほど業務に影響を与えているでしょうか?
特に規模が大きくなってきた医院では、「この人がいなければ回らない」状態が慢性化しがちです。そして気づけば、育休明けのスタッフや経験の浅い新人、そしてごく一部のベテランで構成された「綱渡りチーム」になっていることも珍しくありません。
「仕組み化」と「属人化排除」が未来への投資になる
こうした事態を回避するために必要なのは、属人化を減らす仕組み化です。診療の質を安定させ、スタッフの業務負荷を適正に保つには、計画的な業務改善が不可欠です。
例えば、カウンセリングや自費説明などを“誰でも一定の水準で対応できるようにする”には、単なるマニュアルだけでは不十分です。仕組みとして、院内教育の導線やキャリアアップ制度とリンクさせ、個人に依存しない体制を整える必要があります。
つまり、「人を変える」のではなく「仕組みで支える」視点にシフトしていくことが、医院のステージをひとつ上げる鍵となるのです。
「選ばれる医院」になるには業務改善が不可欠
昨日までのブログで書いたように、「選ばれる歯科医院」になるためには、理念の実現を日々の業務に落とし込む力が問われます。これは、単にマーケティング的な視点だけでなく、医院の内側を整える業務改善の積み重ねなしには成り立ちません。
郊外型の歯科医院でも、都市部の激戦区でも、「仕組みで質を高める医院」こそが、結果的に患者にもスタッフにも選ばれていくのです。
先生の医院では、属人化を減らすための業務改善に、どのように取り組んでいますか?
来週からの連載で紹介する「5つの視点」
本シリーズでは、歯科医院の成長に必要な業務改善の「5つの視点」について、以下のテーマで掘り下げていきます。
1.オペレーション視点(業務効率化)
2.患者視点(サービス向上)
3.歯科医療としての視点(医療の質)
4.5S視点+安全視点(職場環境・感染対策)
5.マーケティング視点(集患・認知・ブランディング)
これらは単なる「効率アップ」や「売上アップ」の話ではなく、理念をカタチにするための土台づくりでもあります。
次回からは、それぞれの視点がどう現場で活きるのか、どんな工夫で定着させるのかを、実例を交えながらお伝えしていきます。ぜひ、ご自身の医院に置き換えて読み進めていただければ幸いです。
お楽しみに。