スタッフの退職が多い歯科医院の特徴チェックリスト——「選ばれる医院」への第一歩
近年、歯科業界でも「人材不足」が深刻化し、退職者が出たからといってすぐに補充できる時代ではなくなってきました。そんな中で、院長先生が「なぜうちはスタッフの退職が多いのか」と感じることがあるなら、まずはその原因を構造的に見直すことが重要です。
本記事では、スタッフの離職が多い歯科医院に共通する特徴をチェックリストとして整理し、その背後にある本質的な問題について考察します。これまでのブログ①〜⑧の内容と合わせて、実践的な改善にお役立てください。
感情的で一貫性のないコミュニケーション
まず多くの医院で見られるのが、「院長の怒り方」に関する問題です。同じミスでも怒る日と怒らない日がある、怒られる人と怒られない人がいる、新人にまだ教えていないことをやらせて怒る……こうしたケースが積み重なると、スタッフは「何が正解か分からない」と感じ、職場への信頼を失っていきます。
人間は「理不尽さ」に対して非常に敏感です。組織心理学では、リーダーの感情が組織文化に大きな影響を与えるとされています。怒りを全く出さないことが良いわけではありませんが、「ルール」「伝え方」「再発防止策」の一貫性が欠けると、スタッフは安心して働けません。
先生の医院では、怒りを感じた時、どのように伝えていますか?感情任せの人格否定でなく、育成の一環として行動の修正のフィードバックになっているか、ぜひ振り返ってみてください。
負荷の偏りとマネジメントの未整備
「頼みやすい人にばかり仕事を振ってしまう」「変化に弱いスタッフにも一律に新しい業務を課す」といった状況は、中長期的に見てスタッフの疲弊と不満を生みます。さらに、思いつきで新しい取り組みを始めてすぐに止めてしまうと、組織全体が「どうせまた言う事が変わるだろう」と本気で取り組まなくなってしまいます。
これは「計画性のないマネジメント」によるものです。業務の割り振りや新規プロジェクトの導入は、スタッフのタイプや経験年数、負荷のバランスを見ながら設計されるべきです。
「このスタッフには何を任せるべきか」を個別に見極め、定着と成果に繋げるプロセスの設計が必要です。
尊敬できるリーダー像があるか?
スタッフが離職する理由のひとつに「院長を歯科医師として尊敬できない」という声もあります。「理念が見えない」「お金のために診療しているように見える」「スタッフには努力を求めるのに、自分は成長していない」などの意見は、信頼関係の崩壊を意味します。
理念経営においては、「どういう価値を患者に届けたいのか」が、日常の言動と一貫している必要があります。特に若い世代は、働く上での「意味」や「共感」を重視します。表面的な評価制度よりも、院長自身が「成長し続けている姿」を見せることのほうが、職場への信頼を高めます。
成長環境と人間関係の整備
「育成カリキュラムがない」「ミーティングも取れない」「器具も揃っていない」——こうした環境では、成長意欲のあるスタッフほど離れていきます。また、成長意欲のないお局スタッフが中心になって職場にネガティブな空気をつくっている場合、それが院長に放置されていれば、「ここにいても仕方がない」と感じるのは当然です。
先生の医院では、スタッフが成長を実感できる仕組みは整っていますか?また、スタッフ同士の関係性に問題があるとき、院長が適切に介入できていますか?
労働環境の基本をおろそかにしていないか
最後に見落としがちなのが、労働条件の整備です。有給が取れない、急病でも休めない、復職できる環境がない……これは単なる「気持ちの問題」ではなく、制度の不備です。こうした不満は、他の歯科医院と比較された瞬間に「転職」という選択肢を正当化する材料になります。
また、採用前に聞いていた話と実際の仕事内容が異なると、早期離職に繋がります。これは「心理的契約の裏切り」として知られ、信頼回復が極めて困難になります。
「選ばれる歯科医院」になるために
スタッフが退職する理由は一つではなく、日々の積み重ねの中に潜んでいます。今回ご紹介したチェックリストは、その兆候を見つけるためのヒントです。そして、それらを改善していくことで、院長・スタッフ・患者の三方よしの医院運営に近づいていけます。
ぜひ、これまでのブログ①〜⑧も振り返っていただき、「理念に基づく組織づくり」を具体的に進めていただければと思います。一つ一つの改善が、応募者のエボークトセットに入り、「ここで働きたい」と思われる医院へと繋がっていきます。