応募がないのではなく、「応募されない理由」がある
「歯科衛生士を募集しているのに応募がまったく来ません」。このようなご相談を多くの院長先生からいただきます。2022年時点で歯科衛生士の有効求人倍率は23.3倍。勤務歯科医師ですら5倍を超える中、確かに採用市場は非常に厳しい状況です。しかし、そんな中でも継続的に歯科衛生士を採用できている歯科医院が存在するのも事実です。
この差を生む要因は、「募集をかけた=応募が来る」という前提にあります。求人倍率が高い状況では、ただ募集を出すだけでは応募されません。むしろ歯科衛生士側が医院を選ぶ時代です。「募集しても応募が来ない」医院には、応募されない理由があるのです。
先生の医院では、「応募されたい」と思われるための工夫をしていますか?
歯科衛生士が「応募したくなる医院」の条件とは?
では、歯科衛生士はどのような医院に魅力を感じるのでしょうか? それは単に給与や休日の条件だけではありません。特に20代〜30代の衛生士の多くは、自分のキャリアをどう築くか、成長できる環境があるかを重視しています。具体的には以下のような要素です。
・歯科衛生士向けの育成カリキュラムやマニュアルがある
・チーム医療が機能しており、職種を超えた連携がスムーズ
・既存の歯科衛生士たちが楽しそうに働いている
・ブランクがあっても安心して働ける教育体制
・外部研修参加の支援制度がある
・院長が歯科衛生士の役割を重視し、成長を応援している
・評価制度が明確で、努力が正当に認められる
・結婚・出産などライフイベントにも柔軟に対応してくれる
これらすべてを一度に整備するのは難しいかもしれませんが、何から整えていくかを明確にし、段階的に取り組むことが重要です。
採用のために「やるべきこと」をすべてやっているか?
採用がうまくいっている医院では、「応募されたい医院づくり」に加えて、あらゆる採用チャネルをフル活用しています。以下のような取り組みを同時並行で行っている医院が多いです。
・求人媒体への掲載+スカウトメールの運用
・人材紹介会社への登録
・歯科衛生士専門学校との関係構築・実習受け入れ
・SNSやブログ、医院採用サイトを通じた魅力発信
・合同就職説明会への出展
・スタッフによるリファラル(紹介制度)の活用
・医院の見学歓迎体制の整備
つまり、「来るのを待つ」のではなく、「来てもらうために動く」ことを徹底しているのです。
応募がないと嘆く院長に「これらの取り組みをされていますか?」と尋ねると、「やろうとは思っていたけど…」というお声が少なくありません。情報発信と採用体制の整備は、他院との差別化の大きな一歩です。
「選ばれる医院」になることでエボークトセットに入る
求職者が職場を選ぶとき、最初に思い浮かぶ2〜3院が「エボークトセット」と呼ばれるグループです。この中に入れるかどうかが採用の明暗を分けます。特に歯科衛生士が卒業予定の専門学校や周囲の先輩歯科衛生士の中で、「あの医院はおすすめ」「働きやすそう」と評判が立つと、自然とエボークトセットに組み込まれていきます。
この状態に持っていくには、「選ばれる理由」を外に向けて見せていく努力が必要です。医院の理念、歯科衛生士の働きがい、チームの雰囲気、研修の様子などをブログやSNSで発信していくことで、求職者から見える医院像が変わります。
先生の医院は、求職者からどんな風に見られているでしょうか?
応募が来ないのは「採用できない」のではなく「選ばれていない」だけ
採用市場が厳しいのは間違いありません。しかし、それを理由に諦めるのではなく、採用できる医院との違いを客観的に見つめ、選ばれる医院づくりに戦略的に取り組むことが必要です。
「募集をしても応募がない」という状態は、努力の結果ではなく、努力の方向性の問題であることがほとんどです。医院の魅力を見える化し、伝える工夫を重ねること。そして、継続的に仕組みを整え、未来のスタッフ候補にとって安心して選べる医院になることが、これからの採用成功のカギになります。
「応募したい歯科医院」になる努力は、採用だけでなく既存スタッフの定着率向上や、患者さんからの信頼獲得にもつながります。三方よしの視点で考えたとき、採用活動とは「医院の未来をデザインする経営戦略の一部」。
だからこそ私はチームビルディングを通じて選ばれる歯科医院の構築をサポートしているのです。