成長の踊り場を突破する「採用と育成のバージョンアップ」
医院経営では、ドクターの治療技術が高まり、スタッフの育成レベルも一定の成熟を見せたタイミングで、必ずと言っていいほど「成長の踊り場」に差しかかります。これは、現状の仕組みや採用計画が、医院の実力と釣り合わなくなってくるために起こる現象です。
郊外の中規模歯科医院では、標準化されたマニュアルや定型的な育成プログラムを活用してきた医院が、ある段階で「このままでは限界がある」と感じることがあります。実際に、研鑽を重ねて質の高い治療を提供しているのに、その価値が地域の方々に伝わらず、収益や人材の循環に結びついていないケースは少なくありません。
先生の医院では、「今の採用・育成体制は、医院の成長ステージに見合ったものになっていますか?」
「医院のブランド価値」を活かすには、組織の器を拡張せよ
医院が理念に基づいたブランドコンセプトを持ち、日々その価値を磨いているのであれば、その価値を「地域にどう伝え、どう収益化するか」を同時に考える必要があります。
そのステップは以下の5つです。
1. ブランド価値を継続的に磨く(人材育成、技術研鑽)
2. その価値を商品化する(診療メニュー、接遇、空間設計など)
3. 価値を地域に伝える(マーケティング、情報発信)
4. 収益化する(適切な価格設定と仕組み)
5. 収益を再投資する(人・設備・時間)
これらのステップを実行し循環させるためには、各フェーズで必要な「人材の役割」と「組織の構造」を明確にしなければなりません。特に採用・育成計画は、医院の未来像から逆算して設計する必要があります。
採用と育成計画の進化は「役割設計」から始まる
医院の成長ステージに応じて採用や育成の戦略をアップデートするためには、「ポジションごとの役割設計」が出発点です。
たとえば、以下のように考えてみてください。
・担当医制度を導入するなら、若手ドクターにどの段階で責任を持たせるか?
・カウンセリングの質を上げるなら、治療コーディネーターにどこまでの説明責任を担ってもらうか?
・育成係やリーダーを配置するなら、マネジメントと指導の役割を明確に区別できているか?
このように、役割を細かく定義することで、「どのタイミングで・どんな人材が・どのレベルで必要になるか」が明確になります。そして、それを経営計画の中に「採用計画」と「育成ロードマップ」として組み込むことで、医院の器を一段階広げる準備が整います。
ステージごとに変わる「育成の中身」と「採用の質」
初期段階の医院では、マニュアルや技術チェックリスト中心の育成でも機能します。しかし、医院が拡大し、チームに多様性が出てくると、「価値観の共有」や「判断軸のすり合わせ」が必要になります。
たとえば、教育カリキュラムには以下のような内容が求められます。
・医院の理念と行動指針の理解
・自律的な問題解決力を育てるケーススタディ
・定期的なフィードバックと振り返り(経験学習の仕組み)
一方で、採用も「即戦力」や「専門スキル」だけで判断せず、「理念共感度」や「成長意欲」「チームとの相性」といった要素を重視する必要があります。
先生の医院では、採用時に「医院のビジョンや価値観をどのように伝えていますか?」
「仕組みから人へ」投資の重心を移していく
成長段階において、医院は「標準化された仕組み」によって安定性を得ますが、その先には「個々の人材力で差がつくステージ」が待っています。これは、マネジメントの世界で「コンティンジェンシー理論(状況適合理論)」として知られる考え方に近い。つまり、組織の構造や仕組みは、成長段階や状況に応じて適応させる必要があるということです。
採用・育成計画の進化は、仕組みによる管理から、人の成長に投資する経営へのシフトでもあります。そしてその投資は、医院・患者・スタッフすべてにとって「三方よし」の成果をもたらすものとなります。
まとめ:医院の未来から逆算して、今の仕組みをアップデートする
医院の価値を高め、収益に繋げ、再投資する。この好循環を回していくためには、医院のステージに応じた採用と育成の「バージョンアップ」が不可欠です。
現状の延長線ではなく、「未来の医院像」から逆算して、必要な人材像・役割設計・育成ステップを描き直してみましょう。
標準化の枠を超えた組織成長のカギは、「仕組み」から「人材戦略」への転換にあります。今こそ、先生の医院の採用と育成を見直す好機かもしれません。