理念がぼんやりしていると医院全体が迷走する
「うちは患者さん第一でやっています」「地域に根ざした医院を目指しています」
多くの歯科医院がそう語ります。けれど、いざスタッフに「院長はどんな医院を目指しているの?」と聞いてみると、
「うーん…正直よく分からないです」
と返ってくることが少なくありません。
これはつまり、院長の想いや経営の方向性が、チームに伝わっていない状態です。
理念そのものがないわけではなく、言語化されていない。
あるいは、言語化されていても「日々の業務に落とし込まれていない」のです。
スタッフが目的地を見失っていると、努力の方向もバラバラになります。これではどれだけ優秀な人材がいても、組織の力は十分に発揮されません。
先生の医院では、院長のビジョンがスタッフに伝わっていますか?
院長のビジョンが、すべての起点になる
歯科医院の発展において最も重要なのは、「3年後にどんな医院にしたいか」を院長自身が明確に描けているかどうかです。
これは売上目標だけの話ではありません。
・診療のスタイル
・スタッフのチームワークのあり方
・医院の社会的な役割
・患者さんとの関係性
・スタッフ一人ひとりの成長イメージ
こうした要素が統合された未来像こそが、「院長のビジョン」です。
このビジョンが明確であればあるほど、組織の一体感と生産性は高まります。
ビジョンのない組織は、いわば“設計図のない工事現場”です。誰が何をするべきか分からず、全体として何を建てようとしているのかも不明瞭。そんな状態でチームがまとまることはありません。
組織づくりの第一歩は「言葉にすること」
では、どうすればスタッフにビジョンを伝えられるのでしょうか。
ポイントは「言葉にすること」、そして「繰り返し伝えること」です。
たとえば、
- 医院として、どんな存在になりたいのか
- 患者さんにどう思われる医院でありたいのか
- スタッフにとって、どんな職場環境を実現したいのか
- 3年後には、誰がどんな役割で活躍しているのか
こうした問いに対して、明確な言葉で答えられるかが重要です。
そしてその言葉は、院内ミーティングや面談、評価制度、教育計画など、あらゆる場面で繰り返し使われるべきものです。
心理学でも「繰り返しが信頼を生む」と言われています。理念やビジョンもまた、一度言っただけでは伝わらない。繰り返すことで、ようやく浸透していくのです。
一人ひとりの成長と医院の未来をつなぐ
ビジョンがある医院では、面談の質も変わります。
単なる評価やフィードバックではなく、
- 「あなたには、3年後こんな役割を担ってほしい」
- 「そのためにこの半年で何を身につけていこうか」
といったように、未来に向けた成長課題を共有できるようになります。
するとスタッフ自身も「自分はこの医院で、どう成長していけるのか」が明確になり、日々の仕事へのモチベーションも高まります。
医院全体のビジョンと、個々のスタッフの成長ビジョンがリンクしていること。
これが、組織が同じ方向に進むための前提条件です。
先生の医院では、スタッフと3年後の成長像を共有できていますか?
そのための対話の場を、意図的に設けていますか?
まずは「自分の想いを言葉にする」ところから
多くの院長が、日々の業務に忙殺されて「言語化」の時間を持てていません。
けれど、チームがまとまり、生産性の高い医院を実現するためには、まず院長自身が立ち止まって、自分の想いに向き合うことが必要です。
どんな医院を作りたいのか?
どんなスタッフに育ってほしいのか?
その未来のために、今、どんな準備が必要なのか?
これらの問いを、ぜひ時間を取って紙に書き出してみてください。
そこから、医院の未来を描く旅が始まります。