組織のステージによって求められる人材は変わる
歯科医院の組織ステージも、一般企業と同様に進化の段階があります。フレデリック・ラルーの理論で知られる「レッド・アンバー・オレンジ・グリーン・ティール」という段階で見ると、日本の歯科医院の多くは「オレンジ型(管理と成果志向)」に位置し、一部が「グリーン型(価値観と関係性重視)」に進んでいる印象です。ティール型の医院は、まだほとんど存在していません。
このような組織の進化段階を理解することは、人材採用や育成の方向性を定める上で極めて重要です。たとえば、オレンジ型の組織では「目標達成能力の高い人材」が求められますが、グリーン型では「共感力とチーム貢献意識の高い人材」、ティール型では「自己組織化力や内発的動機」が重視されます。
先生の医院では、今どのステージにあり、どのステージを目指していますか?
まずは現状の組織ステージを認識し、3年後・5年後に医院がどの段階を目指すのかを定めること。それが人材戦略の起点となります。
目指す治療品質をビジョンにする
歯科医院のもう一つの重要な軸は、提供する歯科医療の品質です。一般歯科、矯正、インプラント、予防管理型など、どの分野に力を入れていくのか。そして、どのレベルの専門性を追求するのか。
多くの院長が休日返上で研修に参加し、最新の技術を学ばれているのは素晴らしい姿勢です。しかしその成果を医院全体の成長に繋げるには、チーム全体として「どの水準の歯科医療を提供していくのか」を明文化し、スタッフと共有していく必要があります。
たとえば、
・ドクターは〇年以内に◯◯学会の専門医(認定医)取得を目指す
・歯科衛生士の歯周病認定歯科衛生士の取得を奨励し支援する
・カウンセラーはカウンセリングスキルの認定を目指す
など、職種ごとに成長の方向性と期待値を示すことが、チームの進むべき道を照らします。
先生の医院では、どのレベルの歯科医療を「目指す姿」として言語化できていますか?
理想の組織像から逆算して人材戦略を考える
組織と治療品質のビジョンが定まれば、次は「その未来に必要な人材」を明確にしていきます。ここで参考になるのが、プロスポーツのチームづくりの考え方です。
たとえばプロ野球では「守りの野球を志向する」と決めれば、守備力の高い内野手やキャッチャーを意図的に育成・補強します。同様に、歯科医院も「予防管理型で地域に根ざす医院を目指す」と決めれば、施術やコミュニケーションレベルの高い歯科衛生士や、患者との関係づくりが得意な治療コーディネーターを必要とするはずです。
「どんな役割の人が、将来の医院に必要なのか?」
「その役割を果たすには、どんな資質が求められるのか?」
このように5年後の理想像から逆算して採用と育成を計画的に行うことが、安定した組織成長をもたらします。
採用前に「求める人物像と役割」を明確にする
多くの医院で見られる課題のひとつが、「とりあえず人が足りないから採る」という場当たり的な採用です。しかしこれは、数ヶ月後のミスマッチや早期離職を生み出す原因にもなります。
採用を成功させるためには、以下のような要素を明確にしたうえで募集することが重要です。
・その人に果たしてほしい役割(例:患者カウンセリング、オペレーションリーダー、技術指導担当 など)
・求める価値観や行動特性(例:協調性、課題達成力、自律性、成長意欲)
・その人の成長ステップ(入社1年目、3年目で何ができるようになっているか)
このように「ポジション・役割・成長ステップ」が見える状態で採用活動を行うことが、チームビルディングの成功に繋がります。
院長のビジョンがチームを導く
最後に強調したいのは、チームを導くのは「理念(ミッション、ビジョン、バリュー)」と「事業計画」です。これが曖昧だと、スタッフは目指す方向がわからず、日々の業務も単なる作業になってしまいます。
逆に、将来の医院像と提供する医療の品質を明確に描き、それをスタッフ一人ひとりに伝え、共感を得ることができれば、日々の行動が変わり、組織が一つのチームとして動き始めます。
先生の医院では、5年後の組織像とそこに向けた人材戦略が描かれていますか?
ビジョンを言語化し、人材の質と組織の成熟を計画的に高めていく。それこそが、理念に基づいた「三方よし」の経営に繋がっていくと、私は確信しています。