歯科医院経営コンサルタントの森脇康博です。
院長が高めてきた治療技術。こだわりを持って真摯に歯科医療に取組んでこられた院長が、経営面で苦戦されているという話を聞くと辛くなります。
私が開業医団体で勤務した30年間、多くの院長から「患者の為のより良い歯科医療」についての熱い想いをお聴きしました。
開業医団体時代、そういった熱い想いを持つ院長を支えていく仕事に遣り甲斐を感じたものでした。
だから、「真摯に歯科医療を追求する院長には成功して欲しい」。
心からそう思っています。
歯科医院をめぐる経営環境の変化
いま、歯科医療ニーズだけでなく多くのことが変化しており、従来の歯科医院では患者ニーズを満たせなくなっています。
そういった中で院長は何をすれば良いのでしょうか。
院長が強化すべき経営力は3つ
「商品力」
「SHOW」
「ブランド力」
勿論、戦術から考えるのではなく、「理念⇒ビジョン⇒戦略⇒戦術」の順に考えなければ上手くいきません。
コンサルタントに言われて導入したり、院長がモデリングした「戦術」はいっぱい落しこめていても、患者の感情を動かす「WHY※」が見当たらない歯科医院が多いのです。
「モデリング」も大切ですが、大黒柱である「WHY」がチームメンバーに落しこめていない組織は、大きくなる過程で壁にぶち当たり、推進力が低下します。
今回の”3つの経営力”も「WHY」がすでに存在する歯科医院を前提に書きます。
テクニックだけ導入してもマネジメントで壁にぶち当たりますので、まずは「WHY」を明確にするとことからお始めください。
※サイモンシネック著「WHYから始めよ!―インスパイア型リーダーはここが違う」参照
歯科医院の商品力を磨く
院長に必要な経営力、今回は「商品力」です。
先生がパン屋さんを経営していたとして、近くに開業したパン屋さんに顧客を取られたとしたらどうしますか?
「こだわりの商品」だと今までのやり方に固執する人もいるでしょうが、きっと多くの人が、競合のパン屋さんが人気である理由を調べ、お店で出すパンを見直すでしょう。
前者がダメで後者が良いということではありません。
こだわりの商品をお持ちなら「その魅力を顧客に伝え」「需要を喚起する」必要があるということです。
例えば、ニーズが減り続けている様に見える「補綴」。
減っているのはう蝕治療の中心だった患者層の「補綴」です。
「削って詰める」というニーズは減っていても、もっと高いレベルでの補綴ニーズは増えてきている。逆に高い技術力を持っているかが、これからポイントになっていくのです。
必要かどうかは患者が判断する
ただ、ここで「歯科医院での治療が必要かどうかを判断するのは患者自身」だという大きな壁が立ちはだかります。
社会的な歯科医療ニーズがあっても、患者が必要だと判断しなければ歯科医院には来ないのです。
では、どんな方法で患者に「治療が必要」だと感じてもらうのでしょうか?
その問題を解決するのが「商品力」なのです。
「商品力」とは
①顧客を惹きつける魅力、ブランドイメージ
②費用対効果
③製品の性能、付加価値
を指します。
心理学的に言えば、人は自分が快適に感じる世界をもち、その世界観に合致する商品やサービスを購入したいという欲求が生まれます。
「需要」には表面的な需要である「ニーズ」と、その裏にある本当の需要「インサイト」があり、本当の需要である「インサイト」を突かなければ、患者はその商品を「買いたい」とは感じません。
例えば昔、〇クド○ルドが健康ブームだからと野菜を中心にしたハンバーガーを売り出したところ、まったく売れなかったという話は有名です。顧客アンケートなどに書かれる表面的なニーズは「野菜バーガー」であっても、顧客のインサイトは「牛肉パテが何層にも重なる健康とは無縁の高カロリーバーガー」なのです。
ちなみに、「ニーズ」が必要な物で、「ウォンツ」が欲しいものだと捉える人が多いのですが、マーケティング的には「ニーズ」「インサイト」が顧客が手に入れたい感情で、「ウオンツ」はそれを実現できる(と顧客に感じさせる)「物」「体験」を指します。
だから、先生が提供する歯科医療サービス(ウォンツ)が、患者のインサイトを満たす魅力的な商品であると感じさせることができなければ患者はやってきません。
歯科医師として、歯科医療従事者としての「正しいあり方」はとても重要ですが、患者は「患者の欲求」で動いている事を無視することはできません。
「SHOW」
「ブランド力」
につきましては次回以降の更新でお伝えします。
Posted at 06:44