売上が1.5億円を大きく超え、歯科衛生士や勤務ドクターが増えてくると、院長ひとりで医院の全体を見渡すことは難しくなります。中規模の医院は、そんな転換点にあります。
この規模から、組織化(企業化)が始まります。管理する数値の項目は財務を含めて増え、分析と対策も厳密になっていく。
数値管理は経営に間違いなく必要です。それなのに、院長が数値管理に力を入れるほど、院内に小さな違和感が生まれることがあります。
今回は、中規模の医院で数値管理を進めるときに、院長が押さえておきたい視点を論じます。
中規模の医院では、数値管理の形がどう変わるの?
院長自身がすべての数値を見る形は、この規模で限界を迎えます。中規模から大規模に向かう過程で数値の管理は幹部や外部のブレーンが担い、大規模になると院長は報告を見て指示を出す、コクピット型の経営へ移っていきます。
見る数値も、個人別に広がります。歯科衛生士の生産性、継続管理(ストック)の指標、ドクター別の治療中断率と自費売上、治療コーディネーターの自費成約率などです。そして中規模から大規模に移行する過程では、一定の条件や共通点でグループ分けして行動や数値の変化を追う「コホート分析」なども経営分析に加わります(新患追跡など)。
数値の管理項目が増えると、院内で発生しやすい問題
ただ、数値管理が厳密になりチームメンバーがそこに係り始めると発生しやすい問題があります。それは、管理項目が増えるほど、治療品質や患者満足度の向上よりも数値を上げること自体が目的になりやすい事です。本来、数値は、医院が掲げる理念を実現するための手段のはずです。しかし、数値管理のやり方を間違えるとこの関係が見えなくなりチームメンバーは数値目標達成の取組に疲弊することになり易い。この状態を「手段の目的化」と呼び、院内に様々な問題を引き起こします。
とくに、この規模以降に導入されることが多い人事評価制度や歩合制は、勤務ドクターやスタッフの意識を「自己保存(自分を守ろうとする行動)」に向けやすい。そして、そういう医院では自分の評価に繋がらない行動は軽視され、院内がバラバラになり易いのです。だから、人事評価制度や歩合制は導入以上に日常的な運用が大事になります。
患者に寄り添いたいスタッフほど、数値管理に抵抗する
数値管理は医療とは相いれないもの。そう考えるスタッフは、院長も含めて、まだまだ多いと感じます。実際に手段である数値そのものに動機づけられるスタッフは、歩合や人事評価で自己保存に働きかける場合を除いて、多くありません。
むしろ、「患者に寄り添いたい」という意識が高いスタッフほど、数値管理に抵抗を示します。これは、スタッフに問題があるのではなく、患者への思いが強いからこその反応です。だから、この思いを大切にしながら誤解を解いていく、丁寧な関わり方が院長には求められます。保険医療制度が大きく変えられ、患者の自己負担が拡大し、保険医療機関に生存の為の努力が求められる時代。患者に質の高い治療を提供していく為には医院経営を更に発展させていく覚悟が院長に求められる。その為に「経営数値管理」は欠かせないのです。
スタッフに数値を伝えるとき、何を添えていますか
私がスタッフと話すときには、必ず「その数値を管理することが、歯科治療の品質を高めるために必要な理由」を合わせて話します。数値だけを示すのではなく、数値と医療の質のつながりを示すのです。
先生の医院では、スタッフに数値管理を求めるとき、その理由まで伝えていますか。「あなたたちの給料を上げていく為にも必要」という理由はダメです。医療としての必要性がスタッフに腹落ちして初めて、数値は「やらされるもの」から、医療の質を支える手段に変わっていきます。
中規模の領域では大規模との競合が始まる
また、医院を中規模以上に発展させていくには事業の柱を増やしていく必要があります。ただ、規模を拡大していく時に漠然と大規模歯科医院の真似をすると「同質化」によって大規模歯科医院の優位性が確定してしまうので注意が必要です。このシリーズでは数値管理を扱いますので詳しくは書きませんが、大規模歯科医院との競合の中で勝抜いていく為にも数値管理は重要になるのです。
次回は、売上5億円から30億円未満の大規模歯科医院を論じます。
先生の医院のこれからを、心から応援しています。
![]() |
|
![]() |
|
![]() |

















