経営分析の仕組みを整えたのに、成果が出ない・・・
数値を見える化し、台帳を整え、月次の会議で成果を確認する。経営分析の仕組みを整えたのに、成果が出ない。そうした医院は少なくありません。
分析した結果を売上や各種数値の改善に結びつける方法は二つあります。一つはマーケティング対策などですぐに手を打てるもの。そして、もう一つは成果を出すにはチームメンバーの成長とオペレーションへの組み込みが必要なものです。今回は経営的成果を出すための経営分析について考えてみます。
生産性だけを追いかけると、何が起きるか
たとえば、歯科衛生士の生産性を上げようとする場面を考えてみます。経験豊富な歯科衛生士であれば、質を落とさずに短い時間でできる施術があります。しかし経験の浅い歯科衛生士や成長がストップした歯科衛生士は、同じ時間ではできません。
その様な状況で院長が数値分析をし、生産性を上げる為に「歯科衛生士の施術時間を短くしよう」と考え、実践したらどうなるでしょうか。経験の浅い歯科衛生士や成長がストップした歯科衛生士は施術の質や患者コミュニケーションの質を保てませんので、患者からのクレームや、治療の中断が増えてしまいます。一時的に生産性の数値は上がっても、患者との関係が崩れ、結果として長期管理のストックが減っていきます。
このことを理解しないまま、数値だけを追いかけると、分析は成果ではなく、トラブルを生みます。つまりチームメンバーの成長なしに医院は発展していくことが出来ない。だから、チームメンバーは徹底的に鍛えていく必要がある。歯科衛生士だけでなく診療スタッフも受付も、成長の為の負荷を受け入れる人たちでチームを構成する必要があるのです。
小規模ほど、分析に回せる余力は小さい
もう一つの現実があります。小規模な医院ほど、チームメンバーは多くの役割を兼ねています。経営資源の多くは診療に配分され、経営管理に回せる余力はほとんどありません。
経営管理部門がない零細規模・小規模の歯科医院で、大型歯科医院と同じ分析をしても成果に結びつけることが出来ません。医院の規模と、チームの成長度に合わせた分析の設計が必要です。逆に医院の規模が大きくなっているのに、規模にふさわしい数値分析と改善の仕組みを構築できていない医院は更に深刻な経営リスクを抱えているのです。
医院規模は、五つの目安で考える
このシリーズでは、医院の規模を五つの目安に分けて考えます。零細規模(売上5,000万円以下)、小規模(5,000万円超から1.5億円未満)、中規模(1.5億円から5億円未満)、大規模(5億円から30億円未満。1医院、または小規模な分院展開)、そして超大型(広域での分院展開、~100億円)です。
ただし、この売上の区切りで、戦略が厳密に変わるわけではありません。あくまで目安です。地域によっても、医院のチームの成長度によっても、適した経営戦略は変わります。
日次・週次・月次で、数値の役割を分ける
医院規模にかかわらず共通する、数値の見方があります。日次で見る数値は、週次目標達成に向けた一日の成績表です。週次で見る数値は、月次の目標を達成するための状況を表します。月次で見る数値は、年間の目標を達成するための状況を示します。
外部の力を借りない場合には、この三つの数値目標(日次、週次、月次)を明確に決めたうえで、院長は翌日のカルテと予約状況、日次集計、週次集計を見ながら少なくとも毎日30分は、月次目標をどうやって達成するかについての対策を考える時間を確保してください。何故ならそこに数値改善の為の答えが眠っているからです。医院の規模が大きくなると、外部のブレーンや幹部が数値管理の実務を担うようになります。また厳密な財務分析、詳細なコホート分析なども経営分析に加わります(一般企業の分析手法に近づきます)。そのとき院長は、報告される数値をコクピットで見ながら幹部と話し、幹部に経営の指示を出す立場へ移っていきます。
また、一般的には分院を出す院長ほど早い段階で分院ごとの経営管理の仕組みを構築する必要があります。
先生の医院の規模と、チームの成長度は、いまどの段階にありますか。そして、いま追いかけている数値は、その段階に合っているでしょうか。次回は、零細規模の医院が、まず見るべき数値を論じます。
先生の医院のこれからを、心から応援しています。
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