最終回は、院長の覚悟について
このシリーズでは、国の保護に頼らず、質の高い医療を自力で続けていくための「企業力」を論じてきました。経営環境の分析、規模に応じた力、算定力、数値による検証、チームビルディング。どれも欠かせない力ですが、すべての土台にあるのは、院長が診療者であると同時に「経営者」になる覚悟です。
覚悟が決まった院長には、行動に変化が表れます。経営について学べる場に出かける。成功している院長の集まりに参加する。他の歯科医院を積極的に見学し、学ぼうとする。そして、経営や技術向上の専門家の助けを借り、そのために対価を支払う。時間とお金を使う覚悟が、変化の最初のサインです。
では、経営者になるために、院長は何を手放す必要があるのでしょうか。
手放すのは、「院長がすべてを決める組織」
院長に手放していただきたいのは、院長がすべてを決める組織という形です。そしてその根っこには、組織の位置づけを変えるという課題があります。
組織を「自分が裕福に暮らすためのもの」「自分がやりたいことだけをやるためのもの」と捉える段階から、社会的な存在へと育てていく。アドラー心理学でいう共同体のような存在へ、昇華させていくことです。
「自分のために使って何が悪い」という考えは、間違いではない
もちろん、院長は多額の資金を投じて歯科医院を開業しています。「リスクを背負って稼いだお金を自分のために使って何が悪い」という考えは、正しい。
ただ、「院長がさらに稼いで裕福になるために、全力を尽くそう」と考えるスタッフは、いません。院長の経済的な成功だけを目的にした組織には、チームを一つにする力が生まれにくいのです。
利他へ向かうのは、自然な成長の段階
マズローの欲求段階説では、物理的・経済的な欲求が満たされると、より高い段階として、利他や社会的な評価へ意識が向かうとされています。院長も同じです。物理的・経済的な欲求が満たされたあと、利他や社会への貢献へ関心が向かうのは、自然な成長の段階です。
その段階に至らなければ、院長の存在が求心力を持つことはありません。スタッフは、院長がどこを向いて経営しているのかを、よく見ています。
もちろん、経済的な成功が十分でない段階で、利他の意識が強い院長もおられます。それは尊いことであり、否定すべきことではありません。ただ、物理的・経済的な成功をある程度得なければ、スタッフの雇用そのものを守れなくなっていくという問題も、あわせて考えていただきたいのです。
理念的な成功と、経済的な成功の、両方を
医療への志が高く、臨床で実践を重ねておられる院長には、経済的にも成功してほしい。努力が報われてほしい。私はそう考えて、真摯に歯科医療に取り組む院長を支える道を選びました。
だからこそ、多くの院長に、理念的な成功と物理的・経済的な成功の両方を実現していただきたいと願っています。そのために手放していただきたいのは、院長がすべてを決める組織です。
先生の医院は、院長がすべてを決める組織になっていないでしょうか。質の高い医療を守り続けるために、診療者から経営者へ。その一歩を、今日から踏み出してください。
先生の医院のこれからを、心から応援しています。
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