数値を改善する力の源は、チームにある理由
前回は、数値によって医院の質と経営を検証することを論じました。しかし数値を改善するのは、数値そのものではなく、チームの力です。その力の源となるのが、チームビルディングです。ここでいうチームビルディングとは、組織が目的の下にまとまり、力を発揮する力のことです。
目的の下にまとまっている組織は、何が違うのか
目的の下にまとまっている組織には、はっきりとした特徴があります。緊急ではないけれど重要なことに使う時間、いわゆる「第二象限」の時間が、全体の1割近くを占めているのです。そして、数字に追われチームメンバーが疲弊している医院では第二象限に使う時間に治療予約を詰め込んでしまう。昔はミーティングをしっかりしていたが今はあまり出来ていないという医院が該当します。
この第二象限の時間に行われるのは、目的と目標、そして手段との関係を理解すること、チームメンバー同士が互いを理解することです。日々の診療は、緊急のことで埋め尽くされがちです。その中で、あえて目的や互いの考えを語り合う時間を確保している組織は、メンバーの動きがそろいます。
組織が大きくなると、「血流」が末端に届きにくくなる
組織の規模が大きくなると、組織の末端まで血流が届きにくくなり、末端で問題が起きやすくなります。院長の考えが、現場の隅々まで届かなくなるのです。
これを防ぐには、幹部スタッフや幹部候補が、組織の目的に動機づけられながら、数値も追う状態になっていることが必要です。数値の成果を追うことが中心になり、「手段の目的化」が起きないようにするための継続的な取り組みが欠かせません。数値は目的を実現するための手段であり、数値の達成そのものが目的になってしまえば、チームは疲弊していきます。
外発的な動機づけだけでは、人は動き続けられない
一方で、力を発揮できない組織にも、共通点があります。人事評価制度、歩合制、指示、表彰制度といった「外発的動機づけ」の手段だけで、人を動かそうとしている組織です。
これらの手段が悪いのではありません。医院規模が大きくなったり分院展開をすれば必要な制度だと思います。しかしそれだけでは、スタッフは「自分が評価されるために動く」状態になり、医院の目的を自分ごととして受け止めるところまで至りません。その理由は、これらの制度が機能するにはリーダーによるメンバーへの関わり方、つまり「運用方法」こそが大切であり、手間をかけずに仕組みだけで人を動かそうとすると失敗するのです。
権限委譲は、「丸投げ」ではありません
組織化によって幹部に権限を委譲したとしても、院長による幹部の育成と継続的なサポートは必要です。ここを怠り、丸投げしたままの組織は、少しずつ弱体化していきます。
スタッフのライフイベントによる一時的な離脱や退職、新人の比率の上昇、継続的な教育の不足。こうした変化が重なると、組織の力は落ちていく。そしてそれは経営の数値にも表れ始めます。
すると院長は、数値の成果を出そうと焦り、組織へのコントロール、つまりトップダウンを強めようとします。しかし弱体化し始めた組織は、その圧力に耐えられません。場合によっては多くの退職者が出て、組織はさらに崩れていきます。
組織は、組み立て体操のピラミッドと同じ
組織は、運動会で演じる組み立て体操のピラミッドと同じだと私は考えています(最近は組み立て体操をしない様ですが)。完成させるには、一人ひとりの体力とスキル、そして全員の呼吸を合わせることが必要です。そして完成した後も、崩れないように維持し続けることが必要。
一度つくれば終わり、という組織はありません。完成させ、高いレベルで維持するために、弛まぬチームビルディングが不可欠です。先生の医院では、目的を語り合う時間を、日々の診療とは別に確保できているでしょうか。次回は最終回として、診療者から経営者へ踏み出す院長の覚悟を論じます。
先生の医院のこれからを、心から応援しています。
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