教えたのにできない後輩を、どう評価していますか
先輩スタッフが新人スタッフに業務のやり方を教えたのに、新人スタッフがうまくできない。そのとき、「能力が低い」「やる気がない」と評価してしまう。こうした場面は、全国の歯科医院で起きています。
しかし、うまくいかない原因は、本当に新人スタッフの側にあるのでしょうか。問題は、院長が幹部や指導担当スタッフに、人を育てるためのマネジメントスキルを学ぶ場を提供していないことにあります。
教育カリキュラムやマニュアルがあっても、うまくいかない理由
教育カリキュラムやマニュアルを整えている医院は、少しずつ増えています。ところが、それを新人にどのような手順で落とし込んでいくのかというステップについて話し合われ、マニュアルとして整備され、指導担当や幹部に伝えられることは、ほとんどありません。
指導を受けるスタッフの成長度は人によってまちまちで、効果的な教え方も違います。それなのに、指導担当は、自分が新人のときに教わったやり方で新人を教えることが多いのです。
その教え方が合う新人であれば、効果が出ます。しかし合わない新人には、効果が出ません。そして多くの場合、効果が出ない理由は「新人の能力の違い」と判断され、指導する側の責任は問われないままになります。
カリキュラムやマニュアルが整備されていない医院では、状況はさらに厳しくなります。新人は、指導担当から教えられたことを短い時間のうちに覚えなければなりません。そして複数の先輩が指導する医院では先輩によって言うことが違う。マニュアルによって復習もできませんし、分からないことを何回も聞くのは心理的ハードルが高いのです。
「教える」とは、本来どういうことか
教えるという行為は、本来、次のような段階を踏むものです。
①作業の内容と流れを、目的を含めて説明する(マニュアルを使います)。
②指導担当が、正しいやり方を見せる。
③新人に、目の前でやってもらい、できている箇所と改善する箇所を伝える。
④練習する時間を確保し、分からないことを聞き返せる心理的安全性を確保する。
⑤期限を決めてテストを行い、合格基準に達していれば、次のステップに進む。
復習のためには、動画を含むマニュアルが欠かせません。そして、分からない点を躊躇なく聞ける関係を指導者がつくれなければ、新人は「分からないけれど、質問して叱られるのが怖い」という状態になります。この状態でできるようにならないのは、新人の能力の問題ではありません。
指導はなぜ、チームメンバーには上手くできないのか
相手の成長度に合わせて、アプローチを変える。この考え方はSL理論にも表れています。自分のやり方で上手くいかなければ、相手に合わせてやり方を変える。院長も幹部も、患者に対しては、日頃からこれができている方が多いはずです。
ところが、チームメンバーに対しては、同じことが難しくなります。アンガーマネジメントでは、その理由を「自分にとって近い存在は、コントロールできると思ってしまうから」と説明しています。親子関係や職場の上下関係が、その例です。近い存在だからこそ、やり方を変えるのではなく、相手をコントロールしようとしてしまうのです。
先生の医院で、「あの子は能力が低い」と評価されているスタッフは、いませんか。その評価の前に、教え方は、その人の成長度に合っていたでしょうか。実際に、入社時は「能力が低い」と評価されたスタッフが、10年経っていまは医院に欠かせない主力メンバーという例も珍しくないのです。
次回は、リーダーの得意分野は一つではないことを、PM理論をもとに論じます。
先生の医院のこれからを、心から応援しています。
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