「歯が痛い時だけ行く場所」からの脱却
多くの院長の努力により定期管理型の歯科医院が増え、定期的に歯科医院に通う患者が増えています。ただ、それでも患者によっては、歯科医院は「歯が痛くなったときにだけ行く場所」という位置づけにとどまっています。その理由は多くの歯科医院が長年、トライアル型の経営を続けてきて顧客維持活動を重視してこなかったからです。歯科界としてそこから抜けだすにはホスピタリティの三層目である「SHOW(患者体験を演出する企画)」について考える必要がある。患者への関わり方を変え、患者の認識そのものを塗り替える体験を作り出すことが必要不可欠なのです。
歯や歯茎の健康を守るために継続的に通う場所へと患者の意識を置き換える。そのために必要なのが、「飽きさせない演出」と「新たな提案」です。
キッズイベントが持つ「連鎖」の力
比較的規模の大きな歯科医院で実施されているキッズイベントには、単発の集客効果を超えた力があります。子どもが歯科医院での体験を楽しいものと感じると、親は歯科医院に連れていきやすくなります。さらにその体験がママ友への口コミとして広がっていきます。また、子ども向けのキッズクラブ運営や表彰企画、母の日イベントなど、患者との接点を増やす取り組みは、歯科医院での体験全体を肯定的なものに変える効果を持ちます。この積み重ねとデンタルIQ・EQの向上への取組によって、歯科医院は「痛いから行く場所」ではなく「健康を守るために通う場所」へと患者の認識を転換させていきます。
大切なのはイベントの企画だけでなく口コミの発生も含めて設計すること。口コミは自然発生するものではないことを理解して口コミのトリガーを企画の中に埋め込むことが必要なのです。
ターゲットに合わせた企画設計が必要
SHOWの設計は、すべての医院で同じ内容になるわけではありません。都市部で矯正治療の需要が大きい医院であれば、審美的、美容的要素を加えた企画。口元を美しく保つための化粧教室のような取り組みが響くターゲット層が存在します。医院が想定するペルソナが長く通い続けたいと感じる企画を、そのペルソナに合わせて設計することが重要です。キッズイベントが万能というわけではなく、自院が届けたい相手にとって価値のある体験は何かを考える必要があります。
歯科衛生士枠の「日常」も演出の対象になる
SHOWは特別なイベントだけを指すのではありません。歯科衛生士枠に定期的に通う患者の日常的な来院体験も、演出の対象です。「施術をして帰る」だけの関わりから、来院そのものが患者にとって心地よい体験になるよう、ブラッシュアップし続けることが求められます。
もちろん、医療面接など医療従事者が身に着けるべきスキルを磨くこともSHOWに繋がる。患者との対話の質とSHOWとしての体験演出が組み合わさることで、患者にとって歯科医院への来院が「義務」から「楽しみ」に近づいていきます。
患者が自分にとって必要な治療を受け入れ、重症化予防で通い続ける長期管理型歯科医院。そこに近づいていくことが経営の安定に繋がりますし、患者が離脱し続ける歯科医院から脱却するために患者体験をトータルに設計することが重要になっているのです。
シリーズを振り返る—ホスピタリティの三層構造
このシリーズでは、歯科医院におけるホスピタリティを四つの角度から論じてきました。
第1回では、生産性向上とホスピタリティ強化を両立させるために「レーンを分ける」発想を述べました。第2回では、接遇マナーだけでは患者は離れていくこと、医療面接スキルという二層目の重要性を論じました。第3回では、傾聴・質問・要約・共感という具体的な医療面接スキルの育成方法を示しました。
そして第4回の今回、SHOWという三層目が「痛い時だけ行く場所」を「継続的に通う場所」へと患者の意識を変える力を持つことを論じました。基礎的接客接遇・医療面接スキル・SHOWの三層が揃ったとき、ホスピタリティは公的価格という制約の中で歯科医院が未来を切り拓く、最も確かな武器になります。
先生の医院のこれからを、心から応援しています。
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