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院長が備えておくべき経営リスク【第5回】保険で守られる範囲が狭まるとき、歯科医院の院長は収益をどう支えるのか  [2026年11月05日]
シリーズ最終回の今回は、保険で守られる「療養の給付」の範囲が、段階的に狭まっていくリスクを論じます。診療の中心を保険診療に置いてこられた院長ほど、避けて通れないテーマです。

まず、国がなぜ医療費を抑えようとするのか、その背景から整理します。背景を理解すると、これから起きる変化の方向が見えやすくなります。

 

国は、なぜ医療費を抑えようとするの?

医療費の削減を進めるのは、日本の財政から見た必要性があるからです。国は、国家財政を破綻させないために、長年、社会保障制度と税の一体改革に取り組んできました。

国は、国民にとって必要な疾患に療養の提供を届けながら、増え続ける医療費に優先順位をつけて抑える必要があります。それだけではありません。社会保障制度を維持するには、支出の抑制と、国民と企業の収入が増えることによる税収の増加の、両方が必要です。経済の発展が続かなければ、国の財布の中身は減り続け、さらなる医療費の抑制を考えなければならなくなる。国が社会保障費増大の深刻さに気づいたのが老人保健法が施行された1983年の前あたりですので、国は約40年をかけて日本の社会保障制度を変えてきたのです。もちろん、制度改革はこれから更に加速していきます。

 

診療報酬は、どちらの方向に変わっていくの?

現状を調べたところ、骨太の方針2026でも、現役世代の保険料率の上昇を止める方針のもと、給付と負担の改革が続けられます。地域医療構想の推進に基づいて、診療報酬体系の見直しも進みます。

歯科関連の診療報酬体系の現状としては、補綴など既存の評価項目に点数を積み増すよりも、「訪問」「連携」「管理」への配点が多くなっています。だから医院の算定項目が既存の点数中心のままであれば増えていく経営コストをカバーできなくなっていく。だから歯科医院は、保険診療における収益構造の有効な強化の方法を見つけなければ、収益性が下がってしまいます。たとえば、初診から治療の完了で終わるトライアル型の収益から、定期的な管理で続くリピート型の収益への移行です。

 

保険の範囲は、これからも狭まっていくの?

メーカー薬の患者負担の増加や、OTC類似薬の見直しに見られるように、保険の対象から外す動きも、これから更に進むと私はみています。骨太の方針2026では、OTC類似薬の保険給付の見直しについて、2027年度以降の対象拡大を検討するとされています。70歳以上の窓口負担の見直しも、盛り込まれました。

現時点の予測ですが、保険で守られる範囲が段階的に縮小していく流れは、続くと考えられます。だから院長は、「保険診療における収益性の拡大」と「保険診療以外の新たな収益の確保」の両方を、考えざるを得ない時代に入ります。

 

いちばん心配なのは、誰への影響?

保険の範囲が段階的に縮小されるなかで、私が心配しているのは、保険を中心に治療されている医院の収益の低下です。そして、患者のうち弱い立場の人に、保険で治療を届けられない部分が増えることです。保険診療で地域のプライマリケアを長年守ってこられた院長に、いちばん影響が出てくると心配しています。

 

収益モデルの複線化は、規模でどう変わるの?

零細規模と小規模の医院は、リピート型の収益の強化、自費売上の強化が中心です。中規模の医院は、リピート型の収益と、自費のコンテンツの強化です。このとき、大規模以上の医院に同質化の戦略を取られないよう、専門化やポジションチェンジも検討します。

大規模以上の医院は、マーケットシェアの奪い合いになります。ブランド化できる治療のコンテンツを見つけて磨き、地域における圧倒的な優位性の確立を争うことになります。

すべての院長に共通してお伝えできるのは、人件費などを含む経営コストが増え続ける時代においては「医院の収益性を強化する戦略が必要である」ということです。ただ、戦略は経営環境や経営資源によって変わるため、具体的な対応案は医院ごとに違います。そこが、ブログを書いていて歯がゆいところです。

先生の医院の収益は、保険の範囲が狭まったとき、何で支えられるでしょうか。その柱を、数値でご説明できますか。

診療圏の縮小、採用、賃上げ、保険給付の縮小。この4つのリスクに共通するのは、現状と未来を数値で見える化し、自院の戦略を立てることです。国も企業も自助が求められる時代に、先生の医院が選ばれ続けるための備えを、今日から始めてみてください。

先生の医院のこれからを、心から応援しています。

 

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Posted at 05:00