「増設して予約が埋まるだろうか」という不安の正体
ユニット増設や移転拡大を検討しながら踏み切れない院長に共通する不安があります。「増やした枠を本当に埋められるか」「借入金を返済できるか」「うまくいかなかったらどうするか」。これらはすべて現状維持バイアスから来る不安です。
この不安が生まれる本当の理由は、「目標を達成できる根拠」が積み上がっていないからです。戦略も戦術も経営計画もないまま「なんとなく増設したい」という状態では、不安が勝つのは当然です。投資というリスクを超えるには、決断するための明確な根拠が必要です。例えば、大きな医院の院長はユニットを1台拡張し、どんな対策をすれば売上がいくら増えるのかをご存じです。私と院長との共通言語は「枠を作れば勝手に埋まっていく」であり、ユニット増設はリスクではなく「確度が高い計画」なのです。
投資判断の前に「目的」を問う
ユニット増設を判断する前に、院長がご自分に問うべきことが一つあります。「なぜ大きくしたいのか」という目的です。
「地域で一番信頼される歯科医院をつくりたい」「DH枠で患者の長期管理をする為に予約枠を増やす必要がある」「スタッフが長く働き続けられる組織をつくりたい」。目的が明確であれば、ユニット増設はその目的を達成するための手段として位置づけられます。目的が曖昧なまま拡張しても、判断の軸がないため経営が迷走しやすくなります。
一方、院長が現状に本当に満足されているなら、拡張を無理に進める必要はありません。55歳以上で大きな借入金もなく、リタイア後の資金も準備できている院長が、経営環境の悪化に合わせて縮小しながら最適化していくという選択も、立派な経営判断です。拡張が正解ではなく、目的に合った選択が正解です。
ただし、医院の承継や売却をお考えなら話は別です。私はクライアント医院の院長に「リタイア時に医院価値を最大化させましょう」とお話しするのですが、医院価値を高め続けることで「引き継ぎたい」という人が現れるからです。
根拠を積み上げてから決断する
投資判断に必要な根拠は、感覚ではなく数値から積み上げます。現在の歯科衛生士の担当患者数は上限に近いか。新たなユニットを担当できる歯科衛生士を採用できる見込みはあるか。増設後の損益分岐点はどこにあり、何人の患者が来れば達成できるか。これらを数値で確認してから初めて、投資判断の土台ができます。
最近では、経営体質(収益構造)の改善の為に攻めることが必要だとも感じます。昭和型のトライアルモデルから脱しリピート型収益に移行することで経営の安定性は格段に向上する。私の愛読書である林總先生の「コハダは大トロより、なぜ儲かるのか?」(ダイヤモンド社)を読めば分かりますが、大トロが儲かるという錯覚から院長は目覚める必要があるのです。
「周りの院長が増設した、分院を出したから自分も・・・」から「この数値的根拠があるから増設する」へ。この転換が、投資を成功に近づけます。次回は、その増設を支える人材確保の設計を論じます。
先生の医院のこれからを、心から応援しています。
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