明日から5月6日まで、経営ブログはお休みさせて頂きます。
5月7日から再開しますので、お楽しみに!
採用環境の現実を、正確に把握していますか
歯科衛生士の採用倍率は20倍を超えていると言われます。最近では診療スタッフや受付も集まりにくいという声が増えています。しかしこの状況は、地域によって大きく異なります。
歯科大学や歯科衛生士学校が地域にどれだけあるか。医院が都市部からどの程度離れているか。通勤時間はどのくらいかかるか。地域の家賃相場(家賃が高い地域ではスタッフは医院の近くに住めない)。子育て中のスタッフにとっては、保育所や学校の近さ、買い物の利便性、スタッフ用の駐車場があるのかも医院選びの基準になります。診療の開始・終了時間、土曜日の勤務時間も影響します。
採用戦略を考える前に、まず自院の採用環境がどのような状況にあるかを正確に把握することが出発点です。全国平均の数字ではなく、自院が置かれている地域の実態を見ることが、現実的な戦略の土台になります。
先生の医院の採用環境は、今どのような状況ですか。その実態を把握した上で対策を立てていますか。
「どんな人を採るか」が決まらなければ、採用は始まらない
個別経営相談で採用戦略について院長にお聞きすると、「ちゃんとやっています」とおっしゃることが多い。しかし具体的に何をしているかを聞くと、ハローワークや採用サイトに広告を一本出しているだけ、募集文章を見直すこともしないしスカウトメールさえ送っていない、という医院が少なくありません。つまり、野球でいえば打席に立つ回数が圧倒的に少ないですし、どうやってヒットを打つのかという戦略も無いことが多いのです。
採用の前提として、「どんな人材を採りに行くのか」を明確にすることが必要です。求める人材像が曖昧なまま広告を出しても、応募してきた人材が「思っていたのと違う」という結果になります。
求める人材像を明確にするとは、単に「経験者歓迎」「明るい方」といった言葉ではありません。どんなスキルの水準を持っているか、どんな価値観を持っているか、医院のどんな成長段階に貢献できるか。これらを院長が具体的にイメージできている状態です。
人材像が明確になって初めて、「その人材はどこにいて、どうすれば出会えるか」という問いが立てられます。求める人材に届く求人の設計も、採用チャネルの選択も、面接での見極めも、すべてここから始まります。
時代は「広告」から「繋がり」へ移行している
募集広告を出せば応募が来る時代は終わりつつあります。採用サイトへの掲載は必要な手段のひとつですが、それだけでは選ばれません。
特に歯科衛生士・歯科医師・歯科技工士については、医院の口コミが業界内で回る傾向があります。先生の医院の待遇、職場環境、院長の人柄、スタッフの定着率。これらはすでに、応募を検討している人材に伝わっている可能性があります。だから評判の良い医院には自然と人材が集まり、評判の悪い医院には応募が減っていく。この構造は、採用広告の量で簡単に逆転できるものではありません。
歯科衛生士が多く在籍していて育成制度が整備されている医院に歯科衛生士が集まるのは、この口コミの構造があるからです。在籍しているスタッフが「この医院で働いていてよかった」と感じていれば、その声が外に出ます。紹介や推薦という形で、採用広告を出さなくても人材が集まる仕組みが生まれます。
有能な人材を採るには、有能な人材が働きたい医院をつくるしかない
有能な人材を採用したいという院長は多い。しかし有能な人材は、自分の力が十二分に発揮できる環境を求めます。到達ステージが低い医院に、家庭の事情などで有能な人材が応募してくることは稀にあります。しかし、そういった人材が力を発揮できない環境に長く留まってくれることは、基本的にありません。
つまり、有能な人材の採用と定着は、採用活動だけでは実現しません。医院の成長環境を整えること、臨床の質を高めること、スタッフが長期で働き続けられる環境を作ること。この積み重ねが、有能な人材が「ここで働きたい」と感じる医院をつくります。
労働条件も同様です。給与水準、勤務時間の設計、育児・ライフイベントへの対応、キャリアパスの見通し。これらが整っている医院は、採用市場において明確なアドバンテージを持ちます。逆に、労働条件が業界水準を下回る医院は、どれだけ採用広告を出しても選ばれにくくなっていきます。だから医院の収益性を高め賃上げや労働条件改善を続けられる医院を作る必要があるのです。
採用戦略の本質は「選ぶ側」ではなく「選ばれる側」になることです。先生の医院は今、人材から選ばれる理由を持っていますか。
面接で何を見るか ― スキルより「一緒に成長できるか」
採用面接では、応募者の経験・スキルを確認することはもちろんですが、それだけでは不十分です。経験年数や資格は書類で確認できます。面接でしか分からないことに集中することが大切です。
私が面接で重視するのは、その人が「成長したいと思っているか」「自分の課題に向き合える人か」という点です。これまでの仕事で何を学んできたか、うまくいかなかったことをどう受け止めているか、次の職場で何を実現したいか。こうした問いへの答え方に、その人の姿勢が現れます。
また、医院の価値観との相性を確認することも重要です。院長が大切にしていること、医院が目指している姿を面接の中で伝え、応募者がどう受け取るかを観察します。「この医院で働きたい」という動機が、給与や勤務条件だけではなく、医院の方向性や文化への共感から来ているかどうかを確認することが、定着率に直結します。
スキルは入職後に育てられます。しかし姿勢や価値観の根本的な部分を変えることは難しい。だからこそ「今のスキルが高い人」より「この医院で一緒に成長できる人」を選ぶという視点が、長期的には医院にとって有利に働きます。
3年後・5年後の採用環境は、今より厳しくなる
少子化による労働人口の減少は今後も続きます。歯科業界だけでなく、あらゆる業種が人材を奪い合う時代が来ます。他業種との競争の中で、歯科医院が人材を確保し続けるためには、今この段階から採用の基盤を整えておく必要があります。この頃にはAI失業も増えている可能性がありますが、それらの人材が医療業界に流入してくる可能性は高くないと私は考えています。
3年後・5年後には、今と同じ採用方法では通用しなくなっている可能性があります。採用サイト一本だけで選ばれる時代ではなくなります。評判が悪い医院には応募が来なくなります。労働条件が新たな業界水準を下回る医院からは、在籍スタッフも離れていきます。
対策を積み重ねてきた医院が、その時代でも人材を確保できる側に立ちます。採用広告の出し方を工夫することはもちろん必要です。しかし、それと並行して「選ばれる医院」になるための環境づくりを続けることが、中長期の採用戦略の本質です。
先生の医院は今、3年後・5年後の採用環境に向けた準備を始めていますか。
まとめ
採用戦略は、採用広告の出し方だけの問題ではありません。自院の採用環境を正確に把握し、求める人材像を明確にし、「広告」から「繋がり」へと採用チャネルを広げていくこと。そして何より、有能な人材が「ここで働きたい」と感じる医院をつくり続けること。この積み重ねが、厳しさを増す採用環境の中で人材を確保し続ける力になります。
採用は結果であり、医院の日常の積み重ねが採用力をつくります。面接の前に、医院そのものが問われています。
次章では、育てた人材が力を発揮し続けるための「マニュアルとカリキュラムの作り方」をお伝えします。
先生の医院のこれからを、心から応援しています。
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