はじめに
先日、テレビの街頭インタビューで若者が「必要な情報はTikTokで得ています」と話していました。
Z世代以降の世代が何かを調べるとき、Googleではなく、TikTokやInstagramで動画を探し、ChatGPTに直接質問する。
これは特定の若者の話ではありません。情報収集の行動そのものが、世代を境に大きく変わりつつあります。
この変化は、歯科医院の集患戦略に直接影響します。「ホームページをSEO対策して、Googleで上位表示させる」という戦略を前提としていた世界が、静かに、しかし確実に変わり始めています。今回は、その変化の実態とその意味をお伝えします。
データで見る「Google検索離れ」の現実
まず、現状をデータで確認しましょう。
サイバーエージェントの調査(2025年)によれば、Z世代(1990年代後半〜2010年代序盤生まれ)のTikTok利用率は52.8%に達しています。一方で上の世代のTikTok利用率は30.9%にとどまり、世代間の差が鮮明です。また、SHIBUYA109 lab.の調査では、Z世代が「お出かけする際に場所や体験をどこで見つけるか」という問いに対して、Instagram(64.6%)、TikTok(39.0%)、X(35.1%)の順で多く、検索エンジンは28.8%と5番目に後退しています。
つまり、Z世代が「行きたい場所・使いたいサービス」を探すとき、すでに検索エンジンは主要な手段ではなくなっています。情報の入り口がSNSの動画コンテンツに移行しているのです。
生成AIの利用率も急速に伸びています。日本リサーチセンターの調査(2025年6月)によれば、生成AI全体の利用経験率は2023年3月の3.4%からわずか2年余りで30%を超えました。特に20代男性の利用率は4割以上に達しており、「わからないことはChatGPTやGeminiに聞く」という行動が若い世代の日常になっています。
Z世代はなぜGoogleを使わないのか
Z世代が検索エンジンから離れている理由は、単なる「流行」ではありません。情報を得る体験の質の差が、行動を変えています。
Googleで検索すると、テキスト中心のページが並びます。自分が本当に知りたいことにたどり着くまでに、複数のサイトを読み比べる手間がかかります。一方、TikTokやInstagramのリールでは、短い動画の中に「見た目」「雰囲気」「リアルな体験談」が凝縮されています。文字を読むより速く、感覚的に情報が届きます。
さらに、Z世代の情報収集には「共感できるリアルな声を重視する」という特徴があります。企業や医院が発信する「公式の情報」よりも、実際に行った人・使った人の体験談を信頼します。Googleの検索結果に並ぶホームページは「企業側の発信」として受け取られやすく、SNSの投稿は「リアルな体験」として受け取られやすい。この非対称性が、情報収集の行動の差を生み出しています。
生成AIへの直接質問も同じ文脈で理解できます。「近くのおすすめ歯科医院を教えて」とChatGPTに聞けば、複数サイトを読み比べることなく、まとめられた回答が返ってきます。検索→サイト選択→読む→比較という従来のプロセスが、一つの質問に圧縮されます。
歯科医院の集患への影響:今起きていること
この変化は、歯科医院の集患にどう影響するでしょうか。
現在の歯科医院の集患戦略の中心は、ホームページのSEO対策とポータルサイトへの掲載です。Googleで「地域名+歯科」「治療名+地域名」などと検索したときに上位表示されること、Googleビジネスプロフィールの口コミやEPARKなどのポータルサイトで評価が高いこと。この二つが新患獲得の主軸になっています。
しかし、情報収集の入り口がSNSや生成AIに移行するにつれて、この戦略の有効性は相対的に下がっていきます。20代・30代の患者が歯科医院を探すとき、GoogleではなくInstagramやTikTokで「地域名+歯科」と検索する割合が増えています。その検索結果に医院の投稿が出てくるかどうかが、認知の入り口を左右し始めています。
重要なのは、SNSで歯科医院を探す患者の動機が、従来の検索とは異なる点です。Googleで検索する患者は「近くて便利な歯科医院」を探している場合が多い。一方、Instagramで歯科医院の投稿を見て来院する患者は、その医院の雰囲気・スタッフの人柄・治療の考え方に「共感」して来院しています。つまり、SNS経由の患者はすでに医院との価値観のマッチングが始まった状態で来院します。前回のシリーズでお伝えした「かかりつけ患者からの紹介」と同じ構造が、SNSを通じても生まれうるのです。
今の医院に求められる視点の転換
ここで先生に整理してほしいことがあります。現在の集患戦略は、どの世代をターゲットにしているかです。
40代・50代の患者が中心であれば、Googleホームページ戦略はまだ有効です。この世代はまだ検索エンジンを主に使っています。しかし10年後を見据えたとき、今の20代・30代が医院の主要な患者層になる時期に向けて、今から情報発信の入り口を広げておく必要があります。
加えて、スタッフの採用においても同じ変化が起きています。歯科衛生士・診療スタッフの求人に応募してくる若いスタッフは、まさにGoogleよりSNSで情報を得ている世代です。医院の求人をGoogleで検索する前に、Instagramで医院のアカウントを確認し、スタッフの雰囲気や院長の人柄を動画で確認しています。集患だけでなく、採用においてもSNSの影響力は増しています。
ただし、すべての医院がすぐにSNS対応を迫られているわけではありません。医院によってはネット経由の新患への依存率が低い場合もあるでしょう。
立地・ターゲット層・現在の患者構成によって、対応の優先度は異なります。重要なのは「変化が起きていることを知った上で、自院の状況を判断する」ことです。
まとめ
若い世代の情報収集行動の変化は、一時的なトレンドではありません。動画で感覚的に情報を得る、AIに直接質問する、という行動は、デジタルネイティブの世代が成熟するにつれてさらに加速します。
「ホームページを作ってSEOをかければ患者が来る」という前提は、今後5〜10年で大きく揺らぎます。その変化に気づいた医院が、今から情報発信の設計を見直し始めることが、将来の集患力の差を生みます。
次回、シリーズ2では、GoogleがAIを検索に組み込んだことで何が起きているか、そしてポータルサイトの集患力がなぜ下がりつつあるかを、最新データをもとに掘り下げます。
先生の医院のこれからを、心から応援しています。
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