入社から1カ月経つと先輩スタッフの評価が始まる・・・
新年度が始まり、新人スタッフが入社してから1カ月が経つ頃になると、先輩スタッフから「あの新人はどうも覚えが遅い」「基本的なことが身についていない」といった声が上がり始めます。
こうした評価は、先輩スタッフが日々の観察から感じたことであり、まったく的外れというわけではありません。
しかし問題は、その評価が「先輩スタッフ自身の価値観」を基準にしていることが多い点です。
「常識的には〇〇するべきでしょ」「自分が新人のときはこうしていた」。
こうした言葉が出てくるとき、評価の基準は医院の価値観ではなく、先輩個人の価値観になっています。
そしてその評価は、新人スタッフの成長を助けるためではなく、値踏みのための評価になっていることがあります。
先生の医院では今、新人スタッフへの評価がどのような視点で行われているか、確認できていますか。
新人スタッフは「日本のルールを知らない外国人」のようなものである
私は新人スタッフを、日本の文化やルールをまだ詳しく知らない外国人のようなものだと考えています。
外国人が日本の慣習を知らないのは、その人の能力が低いからではありません。単純に、経験がないから知らないだけです。
丁寧に教えれば理解でき、実践を通じて身につけていける。「知らないだけだ」という前提で接するか、「常識的に分かるはずなのに」という前提で接するかで、育成の成果はまったく変わってきます。
新人スタッフが医院の価値観や仕事の進め方を知らないのは当然のことです。
学校では習わないことばかりですし、前職や家庭環境によって持っている常識はまったく異なります。その前提を先輩スタッフ全員が共有できているかどうかが、新人育成の出発点になります。
「能力の値踏み」ではなく「成長の中間目標への伴走」が評価の本質
新人スタッフに必要な評価とは何か。それは、先輩スタッフの価値観から「できているかどうか」を判定することではありません。
医院が大切にしている価値観を基準に、その新人スタッフの現在地を確認し、次の中間目標に向けて何が必要かを示すこと。それが評価の本来の目的です。
言い換えれば、評価は「その人が優秀かどうか」を判断するためにあるのではなく、「その人が次のステップに進むためには何が必要か」を明確にするためにあります。
評価が値踏みになったとき、新人スタッフは「自分はここに向いていないのかもしれない」と萎縮し、成長が止まります。
評価が伴走になったとき、新人スタッフは「次に何をすればいいか」が見え、動き出せます。
先生の医院の評価制度は、どちらの方向を向いていますか。
育成プラン通りに育たないのは、新人ではなくアプローチに問題がある
「育成プランを用意しているのに、思うように育たない」という声を院長からよく聞きます。
しかし私は、育成プラン通りに育たない原因の多くは、新人スタッフ側にあるのではなく、育成アプローチの側にあると考えています。
人の行動特性はそれぞれ異なります。論理的に説明されると理解が進む人もいれば、実際にやってみることで身につく人もいる。
フィードバックをその場でもらいたい人もいれば、一人で考える時間が必要な人もいる。褒められることで伸びる人もいれば、課題を明確に示してもらう方が動きやすい人もいます。
こうした個人差を無視して、育成担当スタッフが「自分のやりやすい方法」だけで教えていると、新人スタッフの特性に合わないアプローチを続けることになります。
その結果、「この子は教えても伸びない」という評価に至りますが、実際には「この子にはこのアプローチが合っていなかった」というだけのことである場合が少なくありません。
交流分析やPCM心理学、ソーシャルスタイルといった行動特性の分析ツールは、こうした場面で有効です(値踏みになると逆効果ですが・・・)。
新人スタッフごとの特性を把握し、どのようなアプローチが学習と成長を促しやすいかを考える手がかりになります。
育成担当スタッフが新人スタッフと相性の良い特性を持っているかどうかも、育成の成否に影響します。誰が育成を担当するのかという配置の問題も、見直す価値があります。
画一的な育成から、個別最適な育成へ
「新人はみんな同じように育てる」という発想は、もう通用しない時代になっています。
採用する新人スタッフのバックグラウンドが多様になり、価値観も成長のペースも異なります。
一人ひとりの現状を洞察し、その人に合った育成アプローチを選んでいける医院では、新人が育ちやすい。
そしてそういった医院では、スタッフの定着率も高くなる傾向があります。
個別最適な育成を実現するためには、いくつかの土台が必要です。
医院として大切にしている価値観と行動指針が明確に言語化されていること。
新人スタッフの現在地と中間目標を設定できる育成プランがあること。
育成担当スタッフが「自分のやり方」だけでなく「相手の特性に合わせたアプローチ」を使い分けられること。
そして院長が育成の進捗を把握し、必要に応じてアプローチを見直せること。
こうした仕組みは一度にすべて整えようとすると重くなります。
まず「評価の基準を医院の価値観に揃える」ことから始めるだけでも、先輩スタッフの新人への関わり方は変わってきます。
まとめ
新人スタッフが育たないとき、その原因を新人スタッフ本人に求める前に、育成アプローチを見直してみてください。
評価の基準は先輩の価値観ではなく医院の価値観に。育成の目的は値踏みではなく次の成長目標への伴走に。そして、一人ひとりの特性に合ったアプローチを選べる育成の仕組みへ。
新人スタッフが育つ医院は、スタッフ全体が育つ医院です。
そしてスタッフが育つ医院だけが、これからの歯科医院経営を支えていける組織になっていきます。
新人育成の仕組みを一緒に設計したい院長は、ぜひ一度ご相談いただければと思います。
先生の医院のこれからを、心から応援しています。
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