「連携している」と「連携の実態がある」は違う
歯科医科連携について、「うちはすでにやっています」とおっしゃる院長がいます。しかし具体的な内容を聞いてみると、医科から診療情報提供書をもらってカルテに貼り付けている、という状態のことがほとんどです。
これは連携の「入口」です。連携の実態ではありません。
国が求めているのは、情報が双方向に行き来するキャッチボールです。医科から情報をもらい、歯科側での治療経過や口腔の状態を医科の主治医にフィードバックする。そのフィードバックをもとに医科側の治療方針が調整される。この往復があってはじめて、連携は「実態」になります。
重症化予防連携強化加算が今回の改定で旧「歯周病ハイリスク患者加算」から見直された背景には、この一方通行の連携では管理料を設けた目的が達成されないという国の問題意識があります。
オペレーションへの落とし込みは、難易度が高い
では、連携の実態をつくるためのオペレーションを院内に落とし込むことは、実際にどのくらい難しいのでしょうか。
正直にお伝えします。医院によって違いますが、対象患者をもれなくピックアップし、継続的なキャッチボールを行うのはかなり難しいです。
医院の規模が違う。マンパワーが違う。DHによって知識量も違う。現在のオペレーションが違う。連携する相手の医科のドクターが連携に慣れているかどうかも違う。これらすべてが異なる条件の中で、「自院に合った連携のフロー」を設計して実際に動かすことは、簡単ではないのです。
先日、クライアントの医院でも口腔機能管理と重症化予防連携強化加算のフローを一緒に考えていましたが、話し合えば話し合うほど課題が出てくる。患者への説明の仕方、文書の様式、医科への情報提供のタイミング、カルテへの記載の仕方、スタッフへの教育。整えなければならない要素が次々と出てきます。
しかし、だからこそ取り組む価値があるとも思っています。難しいから多くの医院が手をつけていない。手をつけていないからこそ、今から始めた医院に大きなアドバンテージがある。
連携の実態をつくる「三つのステップ」
連携のオペレーションをゼロから構築しようとすると、全部を一度に整えようとして止まってしまうことがあります。まず三つのステップで考えることをお勧めします。
第一ステップは「対象患者を特定する」ことです。糖尿病・高血圧・骨粗鬆症などの全身疾患を持つ患者で、医科での管理が行われている患者を特定します。現在の患者の中に何人いるか、カルテ情報から把握することが出発点です。
第二ステップは「情報提供の仕組みをつくる」ことです。医科の主治医に対して、歯科側からどんな情報を、どのタイミングで、どんな様式で提供するかを決めます。様式は厚生労働省が参考様式を示していますが、自院の実態に合わせて使いやすい形に調整することが必要です。最初は丁寧すぎるくらいの内容で送り、医科側の反応を見ながら修正していくことが現実的です。
第三ステップは「継続する仕組みをつくる」ことです。一度情報提供をしても、その後の経過を追わなければキャッチボールは続きません。患者の来院ごとに状態を確認し、変化があれば医科に情報を送る。医科から返信があれば診療に反映する。この継続的なサイクルを、誰が担当してどう管理するかを院内で決めておくことが必要です。歯科衛生士が患者管理の中心を担う体制ができていると、このステップが回りやすくなります。
連携に消極的な医科のドクターへの対応
連携の実態をつくろうとするとき、必ずといっていいほど直面するのが「連携相手の医科のドクターが積極的ではない」という壁です。
医科のドクターには、歯科からの情報提供に慣れておられる方と、そうでない方がいます。歯科からの文書が届いても「どう扱えばいいか分からない」「忙しくて対応できない」という反応も実際にあります。
こうした状況に対して、いくつかの現実的なアプローチがあります。
一つは「簡潔で読みやすい様式で送る」ことです。医科のドクターは多忙です。長文の情報提供書より、患者の状態と歯科側の対応を一枚で把握できる様式の方が読まれやすい。最初の情報提供の質と読みやすさが、その後の関係性をつくります。
もう一つは「地域の多職種連携の場を活用する」ことです。地域ケア会議や多職種連携の勉強会に参加することで、顔の見える関係が生まれます。文書だけのやり取りより、一度でも顔を合わせた相手への情報提供の方が、反応を得やすくなります。
そして「返信がなくても続ける」という姿勢も必要です。最初から双方向のキャッチボールが成立するケースは多くありません。歯科側から情報を送り続けることで、少しずつ関係が育ちます。諦めずに続けることが、本当のキャッチボールへの道です。
壁にぶつかっても、諦めずに落とし込む
連携のオペレーションを院内に落とし込む作業は、一度で完成するものではありません。やってみて課題が出る、修正してまたやってみる。この繰り返しで少しずつ実態に近づいていきます。
最初は完璧を目指さないことが重要です。連携の対象患者を絞る、様式を簡潔にする、担当者を一人に決める。他医院のやり方から学ぶ。できるところから小さく始めて、動かしながら改善していく。こうした試行錯誤のプロセスの中で、自院に合った連携の形が育まれます。
連携の実態をつくろうと努力される医院は、患者のかかりつけ歯科医としての責任を果たそうとされる素晴らしい医院だと感じます。糖尿病の患者の口腔状態を継続的に管理し、医科の主治医とキャッチボールをしながら患者の健康を支える。この関わりは、患者にとって大きな価値があります。そしてその価値が積み重なることで、患者が長く通い続ける医院になります。連携の実態をつくることは、制度対応であると同時に、医院の価値を高める取り組みでもあるのです。
先生の医院では今、医科歯科連携のフローを院内のオペレーションに落とし込む作業を始めていますか。
国はデータで連携の実態を見ている
最後に、改めてお伝えします。
国はレセプトデータを通じて、連携加算を算定している医院の診療実態を分析しています。医科への情報提供の文書が添付されているか、継続的な管理が行われているか、中断した場合に記録が残っているか。これらはいずれ、データとして検証される可能性があります。
形だけの算定は、制度の目的を達成しません。それだけでなく、将来的に適時調査の対象になるリスクもあります。連携の実態をつくることは、医療の質を高めることであり、同時に医院を守ることでもあります。
「難しい」という理由で後回しにし続けることのコストは、時間が経つほど大きくなります。今から小さく始めて、続けていくことが、最も現実的な道です。
まとめ
医科歯科連携の実態をつくることは、難しい。しかし、だからこそ価値がある。対象患者の特定から始め、情報提供の仕組みをつくり、継続するサイクルを院内に組み込む。壁にぶつかっても諦めずに落とし込む作業を続けた医院が、本当のキャッチボールを実現し、患者にとっての真のかかりつけ歯科医になっていきます。
次回はシリーズ最終回として、診療報酬改定対応を経営戦略に落とし込む視点をお伝えします。先生の医院が何から始めるべきかを一緒に考えていきます。
先生の医院のこれからを、心から応援しています。
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