はじめに
人件費、光熱費、材料費・・・、どれをとっても上昇が続いています。
少子高齢化による労働人口の減少が加速する中、歯科医院のスタッフ採用は年々難しくなり、既存スタッフの賃金水準を引き上げなければ離職リスクが高まる一方です。
さらに、院内設備の維持コスト、医療材料の価格上昇も重なり、以前と同じ売上でも手元に残る利益が減っていると感じている院長は少なくないはずです。
こうした状況の中で、先生の医院では収益改善のためにどのような手を打とうとされていますか?
「新しい自費メニューを増やそう」「広告費を使ってもっと新患を呼ぼう」そう考える院長が多いのは自然なことです。
しかし今日は、その方向性が中規模以上の歯科医院にとって必ずしも最善ではないこと、そして本当に手をつけるべき場所がどこにあるのかをお伝えしたいと思います。
トライアル型収益とリピート型収益とは?
歯科医院の収益構造を大きく整理すると、「トライアル型収益」と「リピート型収益」の二つに分けることができます。
トライアル型収益とは、新患の獲得や補綴治療・インプラントなどの処置を中心とした収益モデルです。患者が来て、治療して、終わる。次の収益は次の新患から得る、という流れです。
昭和型、平成前期型の歯科医院はこの収益構造を中心に運営されています。
リピート型収益とは、う蝕や歯周病の治療と定期管理・口腔機能管理などを通じて、既存患者が長期にわたって医院に通い続けることで生まれる収益モデルです。
患者一人当たりの生涯価値(LTV)が高くなり、安定した収益の基盤が生まれます。
そして、国も歯科医院が患者のライフステージに合わせた継続的な管理と指導、治療を続けることを望んでいます。
経営の安定という観点から見たとき、リピート型収益の比率をどれだけ高められるかが、これからの歯科医院経営の核心です。
トライアル型を主軸に置いたまま収益改善を図ろうとすると、どうしても「新患獲得競争」か「自費強化」という方向に向かいます。しかしその先には、厳しい現実が待っています。
自費強化という対策が「レッドオーシャン」である理由
補綴需要は、人口動態の観点から見ると長期的には減少傾向にあります。
高齢化が進むほど、むしろ口腔機能管理・訪問診療・重症化予防管理といった分野の需要が増す。
一方で、クラウン・ブリッジ・インプラントといった補綴治療の市場は社会全体から見れば縮小していきます。
そして補綴治療の市場は60歳以上の患者や急患層が支えていますので、団塊の世代が来院市場から卒業し始めるであろう5~10年後以降からは市場の縮小は加速していくのです。
その補綴市場の中でより多くのシェアを取ろうとするのが、多くの医院が採る「自費強化」という戦略です。
しかし、同じことを考えている医院が全国に多数存在する中で、この競争に勝ち抜けるのは、大都市部においてはブランドを確立した一握りの医院に限られます。
大都市部で中規模医院がこの戦略に過度に傾倒することは、消耗戦に参加することを意味します。
地方都市では「自費全体の需要量」「競合状況」によって判断が分かれますが、トライアル型に過度に依存する経営は経営リスクが高いのです。
リピート型収益の基盤が整っていないまま自費を強化しても、患者が定着しなければ次の補綴需要を取り込めず、また新患を呼び込むための広告費がかさむという悪循環に陥りやすい。
では広告費を増やして新患数を伸ばすという手はどうでしょうか。
これについても、近年は「広告費倒れ」と呼ばれる状況が増えています。
競合が増え、クリック単価や掲載費が上昇する一方で、新患一人を獲得するためのコストは上がり続けています(ブランド力が無い場合はCPA=患者獲得単価が高い)。
先生の医院の商圏でも、すでにその傾向を感じておられるのではないでしょうか。
コスト上昇時代に収益を守る、本当の打ち手とは
コスト上昇に対応するための収益改善策は、「患者治療単価の向上」「患者LTVの向上」「診療効率の改善」の三つを組み合わせることで設計されます。
特に中規模以上の医院では、この三つを「既存患者の管理の質を上げる」という一つの軸で統合することが可能です。
たとえば、定期管理患者が増えれば、一人の患者が長期間にわたって医院に来院し続けます。これは単価の積み上げであり、LTVの向上そのものです。
さらに定期管理患者はデンタルIQもEQも高いことが多く、治療説明の理解度も高い。新患よりも歯科衛生士との信頼関係が築かれているため、必要な処置を提案しやすい状況も生まれます。
また、診療時間の設計も重要な経営判断です。人材確保の観点から、今後の歯科医院は診療終了時間を早めていく方向に舵を切らざるを得ない局面が来ます。
しかし、保険診療中心で損益分岐点比率が高い医院が診療時間を単純に減らせば、容易に赤字になります。だからこそ、患者治療単価とLTVを上げる戦略を同時に進めることが不可欠なのです。
有効な設備投資の一つが、歯科衛生士ユニットの増設です。歯科衛生士が主体的に患者管理を行うユニットが増えることは、リピート型収益の基盤を物理的に広げることを意味します。
院長が直接処置しなくても収益が生まれる構造をつくるという意味でも、この投資は経営的な合理性があります。
まとめ
収益改善の入口は「新しい何か」ではなく「今ある患者との関係の深化」にある
コスト上昇時代に収益を守るための道筋は、新しいメニューや広告の前に、すでに医院に来ている患者との関係をどれだけ長く・深くできるか、という問いに向き合うことから始まります。
トライアル型からリピート型への転換は、一朝一夕にはできません。
しかし、中規模医院以上であれば、歯科衛生士を中心とした定期管理の仕組みを整え、患者一人当たりのLTVを着実に高めていくための経営資源は十分にあるはずです。
先生の医院の収益構造を一度立ち止まって見直してみてください。今の売上の中で、リピート型収益はどの程度の割合を占めていますか?
リピート収益の比率を高めるために、次の一手をどこに打つかを迷われているのであれば、ぜひ経営相談(有料)にお申込みくださいね。
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