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【診療報酬改定シリーズ第4回】口腔機能実地指導料が独立した意味を考える  [2026年05月13日]
おはようございます。
歯科医院経営コーチの森脇康博です。
 
私は大阪の開業医団体で30年勤務し、院長の近くで経営と医院づくりを応援したいと独立して13年が経ちます。
このブログでは歯科医院経営とマネジメントに役立つ情報を発信します。
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「加算」から「独立点数」へ・・・この変更は小さくない

令和8年改定で、口腔機能実地指導料(46点)が新設されました。これまで歯科衛生実地指導料の中の「口腔機能指導加算」として位置づけられていたものが、独立した点数として切り出されたのです。

加算が一つ独立しただけ、と受け取る院長が多いかもしれません。しかしこの変更の意味は小さくありません。

診療報酬の中で、ある行為が「加算」から「独立した点数」に格上げされることは、政策的に大きな意味を持ちます。独立点数の新設には中医協での審議やエビデンスの蓄積が必要であり、国が「この行為は口腔衛生指導とは別の、独自の専門的行為である」と再定義したことを意味します。

なぜ国は、この行為を独立させなければならなかったのか。その背景を読み解くことが、今回のテーマです。

口腔機能の問題は、国が想定する以上に深刻になっている

口腔機能実地指導料が独立した第一の理由は、口腔機能の問題が国の想定以上に深刻だからです。

高齢化の進行に伴い、口腔機能低下症の患者は増え続けています。口腔機能の低下はオーラルフレイルにつながり、低栄養・誤嚥性肺炎・全身機能の低下を引き起こします。国はこの連鎖を口腔の段階で止めたいと考えており、歯科医院が「口腔機能の管理と改善」に本格的に取り組むことを制度を通じて求めています。

小児においても口腔機能発達不全症への対応が求められています。食べ方・飲み込み方の問題は成長に直結する課題であり、早期の介入と継続的な指導が必要です。

しかし現場の実態はどうでしょうか。以前の記事でもお伝えした通り、口腔機能管理は「制度先行・エビデンス後行」の構図にあります。国が求めているものの、多くの歯科医院はまだオペレーションに落とし込めていません。

しかし私は、だからこそ取り組むことに意味があると考えています。国もエビデンスを十分に持っているわけではありません。多くの歯科医院が取り組み、臨床の中で改善事例を積み重ねていくことで、初めてエビデンスが生まれます。現場から積み上がったエビデンスが、次の改定で制度をさらに前に進める力になるのです。

歯科衛生士の「専門職としての格上げ」が始まっている

口腔機能実地指導料の独立には、もう一つの重要な意味があります。歯科衛生士の役割が、制度的に格上げされつつあるということです。

今回の口腔機能実地指導料は、「口腔機能発達不全症及び口腔機能低下症に関する研修を受講した歯科衛生士」が実施しなければ算定できません。つまり国は、口腔機能の管理を歯科衛生士の中でも特に専門的な研修を受けた人材に担わせるという設計をしました。

これは「歯科医師がやっていた業務を歯科衛生士に降ろす」という単純なタスクシフトとは異なります。むしろ「歯科衛生士が担う業務の中に、より高度な専門領域を新たに設け、その専門性に独立した報酬を付与した(歯科医師の管理指導は必要)」と読むべきです。歯科衛生士の業務の格上げ・専門化が、制度を通じて進んでいるのです。

歯科医師が管理計画を立て、継続的な実地指導は研修を受けた歯科衛生士が担う。この役割分担の構造は、医科における医師と看護師の関係に近い形への移行とも読めます。

この流れは、歯科医療の提供体制の再設計につながっていく

少し視野を広げてお話しします。

歯科医師の年齢構成を見ると、60歳以上の院長が多く、これから10年でリタイア時期に入る層が厚い。一方、歯科大学では学生の半数近くを女性が占めており、都市部での勤務医志向が強い。だからこれから地方で開業している65歳以上の院長が廃業しても、後継となる歯科医師の確保は容易ではありません。

そこをカバーしていく専門職の一人として歯科衛生士が位置付けられているのです。

医科ではすでに、看護師の特定行為研修制度の創設や診療看護師の育成、オンライン診療車(医療MaaS)の活用などで、医師不足への対応が進んでいます。歯科はまだその段階には至っていませんが、口腔機能実地指導料のような「歯科医師の指示のもと歯科衛生士が専門的に機能する」制度の整備は、その方向への布石と見ることができます。

在宅領域でも、今改定で歯科衛生士による食事観察・指導が歯科医師不在の場で算定可能になる(在宅歯科栄養サポートチーム等連携指導料4(新設))など、「歯科医師が指示を出すが現場には歯科衛生士のみ」というモデルが拡張されつつあります。

歯科衛生士の業務範囲の見直しについては、厚生労働省の研究事業としてすでに調査が行われており、今後の検討会での議論を経て方向性が示されていく可能性があります。現時点で確定していることではありませんが、歯科医療の提供体制が再設計されていくという大きな流れの中に、今回の口腔機能実地指導料の独立はあります。

院長に問いたいこと

口腔機能実地指導料が独立したことを、「また新しい加算が増えた」と受け取るか、「歯科医療の役割が変わろうとしている」と受け取るか。この違いが、3年後・5年後の医院の姿を変えます。

先生の医院では今、口腔機能管理に取り組んでいますか。取り組んでいるとしたら、歯科衛生士はその専門性を発揮できる環境にありますか。研修を受けた歯科衛生士が何人在籍していますか。

口腔機能管理のオペレーションへの落とし込みは、確かに簡単ではありません。最初はうまくいかないことも多いでしょう。しかし、うまくいかない中でも取り組み続けることで臨床の知見が積み上がり、それが医院の強みになります。取り組まなければ、何も積み上がりません。

国が口腔機能管理を独立した点数として評価するということは、この領域の重要性が今後さらに高まるということです。すでに取り組んでいる医院が、次の改定で有利な位置に立つことは間違いありません。

まとめ

口腔機能実地指導料の独立は、小さな制度変更ではありません。国が口腔機能管理を歯科医療の核心的な行為として再定義したこと、歯科衛生士の専門性を制度的に格上げし始めたこと、そして歯科医療の提供体制が再設計されていく流れの中にあること。これらを読み取れるかどうかが、改定を経営に活かせるかどうかの分かれ目です。

次回は、医科歯科連携における「キャッチボールの実態」をどうつくるかをお伝えします。

先生の医院のこれからを、心から応援しています。

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