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【診療報酬改定シリーズ第2回】令和8年歯科診療報酬改定が示す「国の意図」を読む  [2026年05月11日]
おはようございます。
歯科医院経営コーチの森脇康博です。
 
私は大阪の開業医団体で30年勤務し、院長の近くで経営と医院づくりを応援したいと独立して13年が経ちます。
このブログでは歯科医院経営とマネジメントに役立つ情報を発信します。
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点数の変化だけを見ていると、本質を見落とす

前回の記事で、多くの院長が診療報酬改定を「点」で見て「流れ」を読んでいないことをお伝えしました。今回は、令和8年改定の背後にある「国の意図」を読み解きます。

改定のたびに注目されるのは、点数が上がったか下がったかです。しかし点数の変化は結果に過ぎません。なぜその点数を上げたのか、なぜこの項目を新設したのか、なぜこの要件を厳しくしたのか?この「なぜ」を読み解くことが、改定を経営に活かす第一歩です。

今回の改定が示している「なぜ」を、四つの軸で整理します。

第一の軸:「治す医療」から「管理し続ける医療」への転換

令和8年改定が最も明確に示しているのは、歯科医療の役割転換です。「患者が困ったときに来院し、治療して終わる」という従来の歯科医療から、「患者の口腔機能を生涯にわたって管理し、全身の健康に貢献する」という姿への転換を、国は制度を通じて促しています。

口腔機能管理料の評価強化、口腔機能実地指導料の独立、歯周病継続支援治療の算定要件への「継続的な管理の必要性の説明」の明記。これらはすべて「長期管理」という考え方を実装するための制度設計です。

背景にあるのは、高齢化に伴う三つのフレイル予防への国家的な関心です。口腔機能の低下がオーラルフレイルにつながり、低栄養・誤嚥性肺炎・生活習慣病の悪化を引き起こす。この連鎖を口腔の段階で止めたいという意図が、診療報酬を通じて表現されています。

また、小児の口腔機能発達不全もかなり問題視しているのも改定内容から伝わってきます。特に令和8年の改定で管理の対象を大幅に拡げたことは、すべての歯科医院に必須の取組だと国が示しているのです。

国は歯科医院を「むし歯と歯周病を治す場所」ではなく、患者の健康寿命を延伸するための「全身の健康インフラ」として位置づけようとしています。この認識を持っているかどうかで、改定への対応がまったく変わります。

第二の軸:「連携の実態」が求められるようになった

以前の記事でもお伝えしましたが、今回の改定では歯科医科連携における「キャッチボールの実態」が問われるようになっています。

重症化予防連携強化加算では、医科の主治医へのフィードバック(情報提供)とその文書の保管が要件化されました。医科連携訪問加算では、医科からの依頼に基づいて歯科が入院患者の口腔管理に関わる仕組みが評価されています。

これまでの連携は「医科から情報をもらってカルテに貼る」という一方通行の構造でした。しかし国が目指しているのは、歯科も情報を返す双方向のキャッチボールです。糖尿病の患者に歯周病の治療を行い、その経過を医科の主治医に報告する。医科の治療効果を高め、入院期間の短縮や医療費の抑制につなげる。歯科医院がこの連携の中で実質的に貢献できているかを、データとして示す仕組みが整備されつつあります。

地域包括ケアシステムの根幹である多職種連携を国は本気で形にしようとしているのです。

第三の軸:「やっている医院」と「やっていない医院」に差をつけ始めた

今回の改定で、院長がもう一つ読み取るべき意図があります。国は、同じ歯科医院でも「取り組んでいる医院」と「取り組んでいない医院」に評価の差をつけ始めたということです。

ベースアップ評価料はその象徴です。令和6年改定で新設されたこの評価料は、今回の改定で「継続している医院」をより高く評価する仕組みに進化しました。令和6年度から継続して賃上げに取り組んでいる医院と、そうでない医院で評価に差がつけられています。さらに令和8年度と令和9年度の二段階で評価を引き上げ、医療従事者の確実なベースアップ実現を射程に入れています。

この構造は、ベースアップ評価料だけの話では終わりません。口腔機能管理に取り組んでいる医院とそうでない医院、連携の実態がある医院とない医院、電子的な情報連携の体制を整えている医院と整えていない医院・・・。あらゆる領域において「やっている医院をより高く評価する」という方向に制度設計が進んでいます。

この流れは令和10年・12年改定に向けてさらに強まります。今は「やっていなくても大きなペナルティはない」段階ですが、次の改定以降のどこかで、「やっていない医院が算定できる点数が限られるようになる」可能性は十分にあります。先手を打って動いた医院と、後手に回った医院の差が、経営上決定的なものになる時代が来ています。

第四の軸:「カルテや各種用紙に書いていないことはやっていない」時代への準備

多くの院長が見落としがちな視点があります。今回の改定では、カルテへの詳細な記載、施設基準の維持要件の強化、ウェブサイトへの掲示義務、研修受講の要件化、算定実績の報告。こうした「記録と開示」に関する要件が大幅に強化されています。

これは単なる事務負担の増加ではありません。国はレセプトデータと標準的電子カルテの情報を照合することで、算定の正当性を検証する仕組みを段階的に整えています。標準型電子カルテの普及が進めば、将来的にはAIによる自動審査(デジタルオーディット)や常時監視の体制が整うことも想定されます。

「書いていないことはやっていない」と見なされる時代に入りつつあります。歯科医療において適時調査で過去に遡って返還を求められるリスクも、施設基準の維持要件が厳格化されたことで高まっています。

これは脅しではなく、制度の方向性を読めば論理的に導かれる帰結です。この方向性を理解した上で、日々の診療記録を「いずれ検証される前提」で残す習慣をつくること。これが、長期的に医院を守ることにつながります。

「国の意図」を読んだ上で、院長が問うべきこと

四つの軸を整理しました。「治す医療から管理する医療へ」「連携の実態が求められる」「やっている医院とやっていない医院に差がつく」「記録と開示が検証される時代」。これが令和8年改定が示している国の意図です。

この意図を読んだ上で、先生に問いたいことがあります。

先生の医院は今、「管理する医療」に転換できていますか。連携の実態がありますか。ベースアップ評価料は算定し、賃上げを継続していますか。日々の診療記録は、いずれ検証される前提で残せていますか。

一つでも「できていない」と感じたなら、今がその変化を始めるタイミングです。令和10年改定の前に動けば、まだ間に合います。

まとめ

令和8年改定は、個々の点数変化以上に大きなメッセージを歯科医院に送っています。歯科医療の役割が変わること、連携の実態が問われること、取り組む医院と取り組まない医院の差が広がること、そして診療の実態が記録を通じて検証される時代が来ること・・・。これらを「国の意図」として読み取れるかどうかが、改定を経営に活かせるかどうかの分かれ目です。

次回は、ベースアップ評価料を算定していない医院にこれから何が起きるかをお伝えします。

先生の医院のこれからを、心から応援しています。

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