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◆歯科医院経営ブログ

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【第7章】歯科の医院ステージに合わせた組織体制の設計 ― 3年後・5年後から逆算する  [2026年05月08日]
おはようございます。
歯科医院経営コーチの森脇康博です。
 
私は大阪の開業医団体で30年勤務し、院長の近くで経営と医院づくりを応援したいと独立して13年が経ちます。
このブログでは歯科医院経営とマネジメントに役立つ情報を発信します。
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全国どこでも通用する収益モデルは、もう存在しない

物価上昇が続き、診療報酬の抑制策は今後も続く見通しです。人材不足は深刻さを増し、人件費と採用費は高騰しています。地方都市では少子高齢化が進み、生活インフラの維持が困難な地域が増えています。無医地域の拡大、大学病院の経営難、過疎地への医師派遣の困難等々・・・。医療提供体制そのものが地域によって大きく異なる時代に入っています。

国は全国の隅々まで1次から3次までの医療機関を配置することを諦めています。都市の中心部に医療資源を集め、周辺地域はオンライン診療が可能な医療MaaSが月に数回やってくる。急性期の場合にはオンデマンドバスで町の中心部の医療機関に行くか、重度の可能性があれば救急車を呼ぶ。

一方、都市部での医療機関経営は物価や人件費の高騰が大きな負担となります。過疎地の医療と違いこちらは地域医療計画から見て過剰と判断される医療機能には制限がかかり始めています。過疎化が進めば都市部に開業が集中することは国も想定内ですので、開業前の面談時に様々な制限をかけてくることが予想されるのです。

こうした環境の変化が意味することは、ひとつです。全国どこでも通用する歯科医院の収益モデルは、限られたものになってきているということです。

かつては「保険診療を中心に、ある程度の患者数を確保すれば成り立つ」という共通の経営モデルが機能していました。しかし今、都市部と地方では人口動態も競合環境も採用環境も、まったく異なります。だから同じ戦略を異なる地域に当てはめても、同じ結果は得られません。

医院規模を拡大しようとするなら、まず自院が置かれている地域の現実を正確に読むことが、すべての出発点になります。

組織体制の設計は「今の状況」ではなく「3年後・5年後」から逆算する

組織体制を設計するとき、多くの院長は「今の状況」を起点に考えます。今のスタッフ数でどう回すか、今の売上でどう組織を維持するか・・・。これは目の前の課題への対応としては自然な発想です。しかしこの発想だけでは、医院がステージを上るための設計にはなりません。

組織体制の設計に必要なのは、逆算の発想です。3年後・5年後に自院がどのステージに立っていたいかを先に描き、そこから「今何を整える必要があるか」を決める。この順番が組織設計の基本です。

ビジョンを持たずに人を増やしても、増えた人員をまとめる仕組みがなければ混乱が生まれます。売上が増えても、それを支える組織体制が追いつかなければ、院長の疲弊とスタッフの離職が繰り返されます。逆に言えば、3年後の姿から逆算して今の組織を設計できている院長は、成長が加速するステージで余裕を持って動けます。

先生の医院の3年後・5年後を、今具体的に描けていますか。

地域の近未来を読む ― 拡大できる地域とできない地域

医院規模を拡大しようとするとき、まず問うべきは「自院の地域が拡大戦略に適しているか」です。

確認すべき問いはいくつかあります。勤務ドクターと歯科衛生士の増員が可能な地域か。人口動態として、今後も一定の患者需要が見込めるか。競合医院の動向はどうか。自費診療のブランドを構築できる患者層がいる地域か。あるいは、拡大より現状維持・深化の戦略が現実的な地域か。

地方都市では、今後の人口減少と高齢化の進行によって、現在と同じ患者数を維持できなくなる医院が増えていきます。そういった地域で規模拡大を目指すことは、逆風の中で漕ぎ続けることになります。一方、人口が集中し医療需要が高まっている地域では、今のうちに規模と体制を整えることが中長期の競争力につながります。

地域の近未来を読む材料は、自院の周辺にあります。地域経済、人口推計データ、地域の開発計画、競合医院の動向、採用市場の変化・・・。これらを定期的に確認する習慣が、地域の変化に先手を打つ力になります。

単院拡大か分院展開か ― 選択によって組織設計は根本から変わる

医院を拡大する方向性には、大きく二つあります。一つの医院を大きくしていく単院拡大と、複数の医院を展開していく分院展開です。この選択によって、必要な組織設計や教育設計は根本から変わります。

単院拡大では、一つの場所にスタッフと設備を集中させます。院長のリーダーシップが直接届きやすく、医院文化を統一しやすい。しかしスタッフ数が増えるほど、院長からの距離が遠くなるスタッフが生まれます。チーフや部門長を育て、層として組織を支える人材が複数いなければ、拡大は院長の疲弊につながります。

分院展開では、各拠点を統括できる院長レベルの人材が必要になります。勤務ドクターへの権限委譲、各拠点での組織づくり、評価制度・教育制度・マニュアルの標準化・・・。これらが整っていない状態で分院を出すと、本院のオペレーションに支障が出ながら、分院も機能不全に陥るリスクがあります。分院展開は、本院の組織がある程度自走できる状態になってから始めることが原則です。そして何より分院長が独立開業しても次の分院長に目途がつけられる事が分院展開の前提です。そして、スケールメリットを働かせるのに必要な分院の規模は昔より大きくなっています。超大型歯科医院には開業部門があり経営管理部門、マーケティング部門などもある。だから開業して売上〇億円以上が開業前に読める。そこと競合するのです。だから有力な都市部において小規模な分院なら出さない方が良いこともあるのです。

どちらの方向を選ぶかは、院長の経営センス・地域の環境・採用できる人材の質と量・手元の資金力によって変わります。「あの医院が分院を出したから」という横並びの理由で選ぶのではなく、自院の経営資源と地域環境を照らし合わせた上で判断することが必要です。

ライフイベントと次世代育成を組織設計に組み込む

歯科医院の組織設計で見落とされやすいのが、ライフイベントへの対応です。女性スタッフが多い歯科医院では、産休・育休・子育て期のスタッフが一定数存在することが常態です。この現実を「例外的な事態」として扱うのではなく、組織設計の前提として組み込むことが必要です。そしてこれからは女性勤務歯科医師のライフイベントへの対応も必要になってくる。

特定のスタッフへの依存度が高い組織は、そのスタッフがライフイベントで一時的に抜けたとき、大幅な戦力低下に直面します。これを防ぐためには、第2章でお伝えした集団指導体制やスモール権限(限定的な権限)の活用が有効です。複数の人材がそれぞれの役割を担う体制は、一人が抜けても組織が止まらない構造をつくります。

また、育休から復帰したスタッフが力を発揮できる場を用意できるかどうかが、定着率に直結します。復帰後のポジションや役割が不明確な医院では、復帰をためらうスタッフが増えます。一方、復帰後のキャリアパスが見えている医院では、育休中もそのスタッフとの関係が続き、職場への帰属意識が保たれます。

次世代の幹部を計画的に育てることも、組織設計の一部です。今のチーフが抜けたとき、次を担える人材がいるか。いなければ、今から育てる計画を立てる必要があります。組織の継続性は、次世代育成への意識的な投資によってつくられます。

「憧れ」ではなく「成功確率」でモデリングする

医院の組織づくりや成長戦略を考えるとき、成功している医院をモデルにするモデリングは有効な手段です。しかし一つ、注意が必要なことがあります。

モデリングの対象を先輩などへの「憧れ」で選んでいないかという問いです。自費比率が高く、スタッフが多く、設備も整った大規模医院。そういった医院の成功モデルに憧れること自体は自然なことです。しかしその医院が成功しているのは、その院長の経営センス、その地域の特性、その医院が積み上げてきた歴史と信頼資本があってのことです。同じ戦略を異なる環境に持ち込んでも、同じ結果は得られません。

モデリングで重視すべきは「成功確率」です。自院の地域環境、採用できる人材の質と量、院長自身の強みと経営センス、手元の資金力・・・。これらを踏まえた上で、「自院が同じ方向に進んだとき、成功できる確率はどのくらいか」を冷静に判断する。この問いを持てる院長が、現実的な成長戦略を描けます。

地域と院長の経営センスによって、機能させられる組織規模は違い、上げられる売上も違います。自院に合ったステージを積み上げていくことが、長期的に見て最も確実な成長の道です。

このシリーズを締めくくるにあたって

導入記事から第7章まで、「院長が医院規模を拡大していく場合に必要な医院ステージの上り方」をお伝えしてきました。

院長の役割を手放すこと。チーフを育て権限を渡すこと。個人面談でスタッフの声を経営に活かすこと。スキル評価制度でスタッフの内発的動機を育てること。選ばれる医院になる採用戦略を積み重ねること。マニュアルの上に理念と行動規準を置くこと。そして地域の近未来を読みながら、3年後・5年後から逆算した組織体制を設計すること。

これらはすべて、今日から取り組めることです。一度に全部やろうとする必要はありません。しかし、どれか一つでも「自分の医院に当てはめて考えてみよう」と思っていただけたなら、このシリーズはその役割を果たせています。

医院を取り巻く環境は、これからさらに厳しさを増します。しかし、環境が厳しいほど、組織と仕組みを整えてきた医院と整えてこなかった医院の差は開きます。今から動き始めた院長が、5年後に大きなアドバンテージを持っています。

先生の医院のこれからを、心から応援しています。

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