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◆歯科医院経営ブログ

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特定のスーパースタッフに依存する医院が抱える時限爆弾 ― 誰が欠けても質が落ちない仕組みへの移行プロセス ―  [2026年03月12日]
おはようございます。
歯科医院経営コーチの森脇康博です。
 
私は大阪の開業医団体で30年勤務し、院長の近くで経営と医院づくりを応援したいと独立して13年が経ちます。
このブログでは歯科医院経営とマネジメントに役立つ情報を発信します。
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歯科医院のサポートをしていると、こんな場面に出会うことがあります。

「うちの歯科衛生士の〇〇さんは本当に優秀なんです。患者さんからも信頼されていて、歯科衛生士として頼りにしています。辞めてもらったら困るんで色々とサポートしています」

院長がそう話しながら、どこか誇らしそうにしている。

そのお気持ちは、よく分かります。

しかしその瞬間、私は別のことを考えてしまいます。

その方が突然、ライフイベントや家庭の事情で来られなくなったとき、この医院はどうなるのだろうか?

優秀な人材がいることは、間違いなく医院の強みです。

しかし、特定のスタッフ一人に依存している状態は、同時に医院が抱える「時限爆弾」でもあります。

 

エーススタッフが欠けたとき、何が起きるのか

よくある話なんですが、

長年、患者との信頼関係を築いてきた歯科衛生士が家庭の事情で退職することになった。

その数か月後から、

・担当していた患者のキャンセルが増え始める

・継続管理していた患者が別の医院へ移る

・歯科衛生士チーム内に問題が発生する

・新人DHが不安そうにする

残った歯科衛生士が「〇〇さんのコミュニケーション力やリーダーシップを真似るのは難しい・・・。でも、どうすればいいか分からない」と戸惑う

これは特別な事例ではありません。

属人化が進んだ医院では、一人の退職が経営の空白を生みます。

そしてそれは、突然やってきます。

問題は「その人が優秀だったかどうか」ではありません。

その人の能力を、組織が受け取れる形に変えてこなかったことです。

 

暗黙知と形式知の間にある「経営の穴」

優秀なスタッフが持っているスキルには、二種類あります。

一つは、見えるスキル。治療の手順、使う器具の順番、患者への説明の流れ。

もう一つは、見えないスキル。患者の不安をどう感じ取るか。今日どう声をかけるか。患者さんが心理的安全性を感じる関わり方。そして、その歯科衛生士が無意識的におこなっている他の歯科衛生士への支援、悩みの相談。

前者は少し時間をかければ教えられます。

しかし後者、いわゆる暗黙知は、本人が意識せずに実践していることが多く、「何をしているか」を本人も言語化できていないことがあります。

この暗黙知が組織に残らないまま、その人が去る。

だから「歯科衛生士の〇〇さんがいた頃の医院とは違う」という状態が生まれるのです。

先生の医院で、優秀なスタッフの「仕事のやり方」はどこかに残っていますか。

それとも、そのスタッフの頭の中だけにありますか。

優秀な人材がいてくれる間に次を担う人材(特にリーダー)を育てる、仕組み化をする。

それは組織としての鉄則なのです。

 

仕組みへの移行とは、「縛ること」ではない

ここで多くの院長が誤解していることがあります。

仕組み化=スタッフの自由な発想を奪うもの、という思い込みです。

マニュアルを作れば個性が失われる。標準化すれば柔軟な対応ができなくなる。

そう感じている院長は少なくありません。

しかし、実際はその逆です。

仕組みとは、判断の土台を整えるものです。

「どこまでは共通でやる」「どこからは自分の判断でいい」という境界線を明確にすることで、スタッフは安心して動けるようになります。

属人化した医院では、判断の土台がそのスタッフ個人の中にあります。

新しいスタッフは、何が正解か分からないまま業務をこなします。

先輩の真似をしているうちに、その先輩の「やり方」がそのまま医院の標準になってしまう。

そうして知らないうちに、属人化の連鎖が続いていくのです。

仕組み化は、スタッフを縛るためではなく、全スタッフが安心して動けるための「共通の地図」を作ることです。

 

院長が不在でも診療が回る医院は何が違うのか

自走する医院と、院長が常に走り続けなければならない医院の違いはどこにあるのでしょうか。

一言で言えば、「判断基準、行動規準が共有されているかどうか」です。

院長がいるときと、いないときで、医院の動きが変わる医院は、判断基準が院長の頭の中にだけあります。

「院長だったらどう判断するか」をスタッフが想像しながら動いている状態です。

これは一見うまく回っているように見えますが、実は非常に脆い構造です。

院長の価値観や判断基準が言語化されていないと、スタッフは常に「正解かどうか不安な状態」で働き続けることになります。

判断に自信が持てないスタッフは、挑戦しなくなります。

失敗を恐れてマニュアル通りにしか動かなくなります。

その結果、院長は「スタッフが自分で考えて動けない」と感じる。

しかしこれは、スタッフの問題ではなく、判断基準が整備されていないという組織構造の問題です。

 

暗黙知を形式知に変えるカリキュラムの考え方

では、どうすれば優秀なスタッフの知恵を組織の財産にできるのでしょうか。

最初から完璧なマニュアルを作ろうとする必要はありません。

そして患者の状況に合わせて対応していく医療において、すべてをマニュアル化できるわけでもない。

大切なのは、「やっていること」「考えていること」「判断していること」を少しずつ言葉にしていくプロセスです。

例えば、チームメンバーへのこんな問いが有効です。

・患者さんに次回来院の必要性を伝えるとき、どんな言葉を選んでいますか?

・不安そうな患者さんに気づいたとき、最初に何をしますか?

・この患者さんが治療を中断しそうだと感じるのは、どんなサインがあるときですか?

これらは「答え」ではなく、その人が持っている判断の根拠を引き出す問いです。

この問いと答えが積み重なったとき、それはマニュアルやカリキュラムの素材になります。

優秀なスタッフは、仕組みを作る「先生」にもなれます。

そのことを本人が知ったとき、「教えること」「残すこと」への意欲が生まれることがあります。

仕組み化は、スタッフの成長を奪うのではなく、スタッフの知恵を医院全体の力に変えるプロセスです。

 

最後に、院長への問い

先生の医院で、今すぐ一人欠けたとして、欠けては困るスタッフは誰ですか。

そのスタッフがやっていることは、今どのような形で医院に残っていますか。

その人の役割を代わりに担える存在は育っていますか。

そして、今日の診療が「誰がやっても一定の質を保てる状態」に、どれだけ近いでしょうか。

仕組み化は難しくありません。

しかし、「そのうち」「余裕ができたら」と先送りにするほど、時限爆弾のタイマーは静かに刻み続けています。

答えは急いで出す必要はありません。

ただ、「今の状態でいいか」という問いだけは、今日立ち止まって考えてみていただければと思います。

 

先生の医院の強みが、特定の誰かの中ではなく、医院という組織の中に宿る日が来ることを願っています。

 

★こちらもご覧ください。
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