令和8年の歯科診療報酬改定を前に、多くの院長が「どの点数が上がるのか(下がるのか)」「何を算定できるのか」に注目しています。
一番の注目はSPTとP重防が統合されたこと。新点数だけでなく算定要件がどう変わるのか?でしょうか。
しかし、本当に重要なのはそこではありません。
改定後も経営が成立する医院の共通点
これからの歯科医院経営で、ほぼ確実に起こることがあります。
・人件費は毎年上がる
(大企業はそれ以上に上げて採用的優位性を築く)
・社会保険料・福利厚生費も増える
・物価が更に上昇
・金利が上昇
・診療時間は簡単に増やせない(逆に時短が進む)
つまり、経営コストは確実に増えていくので、何もしなければ生産性は確実に下がるのです。
この環境で経営を成立させるには、診療報酬改定を活かして収益を増やせる医院なのか?が問われるのです。
今のところ、「初再診」や「歯科外来物価対応料」などは確実に経営にプラスになりますが、歯科の改定予算から見て大幅に上がる可能性は低い。
じゃあ、どんな経営対策をおこなって「売上-経費=利益増」を実現していくのか?を今の段階で決めていく必要があるのです。
毎年、経営コストが上がっていく中でも利益が増えていく収益構造を作ることが院長の経営者としての役割です。
「点数を取れるか」では足りない理由
もちろん、施設基準を取得し、算定できる点数を増やすことは重要です。
しかし、
・点数は取れた
・仕事量は増えた
・スタッフは疲弊した
・時間は延びた
・利益は残らない
この状態では、改定対応は失敗です。
改定を「成功」にする条件は明確です。
患者単価が上がり、スタッフの成長によって一人あたり生産性が上がり、組織として余力が生まれていること
これが実現できて初めて、診療報酬改定は“経営の追い風”になります。
また、「治療品質の向上に合わせて自費価格を値上げする」は鉄則です。
高額な診断機器を導入した、ドクターが技術研修を重ね専門医を取得した。しかし、自費価格が変わらなければ収益性は低下します。
もちろん、値上げしても患者が納得できる理由とマーケティング対策がなければ需要を掴めませんが、コスト増や品質向上による値上げができるかは歯科医院経営にとって重要なのです。
そして「患者の離脱対策」も重要。新患を頑張って獲得しても「バケツの穴が大きい」医院では自転車操業になってしまうのです。
生産性向上は「気合」では起きない
生産性を上げるとは、スタッフに「もっと頑張れ」と言うことではありません。
・同じ以上の品質を
・同じ人数で
・去年より短い時間で
実現できる仕組みがあるかどうかです。
そのためには、
・診療フローは整理されているか
・スタッフは目的を理解して動けているか
・権限と責任は適切に委譲されているか
・「人が育つ設計」になっているか
こうした土台が必要になります。
点数だけを追いかけても、この土台がなければ時間と人件費だけが増えていく。
例えば、人が育ち土台が出来ていれば今回の改定で連携が強化された「重症化予防連携加算」も「口腔機能実地指導料」にも歯科衛生士が無理なく対応できます。
しかし、過去の改定に合わせて「生活習慣病連携管理」や「口腔機能管理」に取組んできていないならば、今後の改定を乗越えて行く土台はない。
人材育成とチームビルディングが生産性と直結しているのです。
医療の質と生産性向上は、対立しない
ここで誤解してほしくないのは、生産性を上げる=医療の質を下げるではない、ということです。
むしろ逆です。
・教育が進み
・権限委譲が進み
・チームで品質を守れるようになると
スタッフには余裕が生まれ、患者への配慮や説明の質は上がります。
生産性を上げながら医療の質も向上させられる医院ほど、強い経営体。
「時間をかければ治療品質が上がる」ではないのです。
これが、私が現場で見てきた現実です。
院長へ
ここで、ぜひ立ち止まって考えてみてください。
・令和8年改定後、先生の医院で患者単価が上がる根拠はありますか?
・同じ診療を、1年前より短い時間で回せるイメージは描けていますか?
・スタッフは、「改定対応=負担増」ではなく「成長の機会」として捉えられそうでしょうか?
もし、「まだはっきり答えられない」と感じたなら、それは決して悪いことではありません。
今、考え始めること自体が改定をチャンスに変える第一歩だからです。
改定は“結果”を試される場
診療報酬改定は、医院の未来を決めるイベントではありません。
これまで、
・何を積み上げてきたか
・何を後回しにしてきたか
・どんな組織を作ってきたか
その結果が可視化される場です。
だからこそ、点数表を見る前に、「改定後も収益を増やせる医院構造になっているか?」
この問いから、2026年への準備を始めていただきたいと思います。
さて、先生の医院では、どう取り組まれますか?
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