年商1億円はゴールではなく“分岐点”にすぎない
「売上1億円を超えました」
そう聞くと一見、成功医院のように思えるかもしれません。
ですが、今の時代、売上1億円=成功とは言い切れないというのが実際のところです。
むしろ私たちが現場で接する中では、売上1億円前後の医院が経営の中途半端さによる収益性の悪化に苦しみだしているのです。
この金額帯の医院は、規模として小さくはない。しかし、令和時代においては医療法人としての強みを発揮できるほどの経営基盤はない。つまり、「法人化はしたものの、経営効率が悪く、利益が残りにくい」といった構造的な課題を抱えやすいのです。
売上1億円医院が直面しやすい“収益効率の落とし穴”
例えば、売上1億円の歯科医院は以下のような医院像が想定されます
・院長+歯科衛生士3〜5名(週1~2回出勤の勤務ドクターがいる場合もあり)
・受付・アシスタントなどを含めて7〜12名規模(パート社員含む)
・ユニット4〜5台稼働
・医療法人化済だが、分院は持たず本院のみ
日本の歯科医院の売上の平均は令和5年実施の医療経済実態調査によると個人医院で4795.8万円、法人医院で10885.2万円です。
だから売上1億円は法人歯科医院の平均値と近い。
ですが、売上1億円の段階では、以下のような課題が見え始めます:
・法人化に伴い、社会保険・事務費用・会計処理など経営コストが跳ね上がる
・スタッフ教育・人事評価制度が未整備なまま人数だけが増えてしまう
・院長が経営判断・診療の両方を抱え続け、キャッシュフローや組織開発まで手が回らない
・ドクターが院長一人の体制で、自費対応やSPT管理が属人化しやすく、利益率が上がらない
つまり、1億円という売上水準は、「利益が拡大している法人医院の仲間入りはしたが、拡大戦略がなければ利益が残りにくい」ゾーンなのです。
医療法人化しても収益が残らない?その理由とは
医療法人にしたことで税制上のメリットや社会的信用は確保できても、経営の効率性や収益力が追いついていない法人医院は意外に多いものです。
売上が1億円を超えると、
・スタッフ人件費の合計が2,500〜3,000万円近くになり
・固定費(家賃、機器リース、広告、税理士・社労士報酬)も年間1,500万円以上になり
・院長が自ら動かないと数字が維持できない
という状況になりがちです。
この段階で、法人としての「戦略」「仕組み」「育成・評価体制」などが不十分なままだと、売上が増えるほど経営は苦しくなっていきます。
「1億円あるのに、まったく手元に残らない」という声が現実味を帯びてくるのです。
戦略のない“1億円止まり”が最も危険な理由
問題は、「このままでいいのか」と悩みながらも、現状を変えきれないまま“売上1億円”で止まってしまうことです。
・分院展開や地域シェア拡大の戦略がなく
・自費へのシフトも不十分で利益構造が弱く
・院長にかかる業務負荷は増え続ける
このような“戦略なき1億円法人”は、医療費抑制や制度改定の影響をもろに受けやすく、数年後にキャッシュが回らなくなる危険性もあります。
さらに、人材面でもこの規模では大手法人のような採用力はなく、待遇面での優位性も中途半端なままです。
つまり、「ブランド力・採用力・収益性」のいずれにも優位を持ちにくい、“最も経営リスクの高いゾーン”が、売上1億円規模の法人歯科医院なのです。
もちろん、売上1億円でも戦略次第では収益効率を高めて経常利益+役員報酬を増やすことが出来ます。ただし、有能な会計事務所のサポートを受けていて「一人当たり生産性」を高められない構造の医院は難しいと感じます。
先生の医院は“成長か、維持か”どちらのステージにありますか?
売上1億円をゴールと考えてはいけません。
むしろ、ここからが「どう伸ばすか」「どう差別化するか」「どう収益構造を改善するか」が問われるステージです。
先生の医院では、“このまま”で3年後も安定してキャッシュを残せる仕組みができていますか?
1億円の壁を“突破すべき通過点”として、戦略的に動き出せていますか?
昭和時代には成功者の目安であった売上1億円ですが、令和、それも経営コストが増大している令和6年以降では成功歯科医院であるとは限らないのです。
ご希望があれば、売上1億円を通過点にする令和時代の経営戦略立案についてのサポートも可能です。
未来に向けた一手を、今から一緒に考えていきませんか?