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【女性スタッフが輝くシリーズ第3回】信頼は一度失うと取り戻せない― スタッフとの関係構築の原則  [2026年05月26日]
おはようございます。
歯科医院経営コーチの森脇康博です。
 
私は大阪の開業医団体で30年勤務し、院長の近くで経営と医院づくりを応援したいと独立して13年が経ちます。
このブログでは歯科医院経営とマネジメントに役立つ情報を発信します。
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信頼を失う院長は二種類いる

スタッフの信頼を失う院長というと、感情的になって叱る、コントロール型で高圧的に管理する。こうした院長を思い浮かべる方が多いかもしれません。確かにそういった院長はスタッフの信頼を失います。

しかしもう一種類、見落とされがちな院長がいます。優しいが、信念を感じられない、リーダーシップに欠ける院長です。

スタッフに対して穏やかで、怒ることもなく、関係が良好に見える。しかしスタッフから見ると「この院長についていって大丈夫だろうか」という不安が拭えない。方針が定まらない、言っていることが変わる、困難な場面で逃げる。こうした姿を見せる院長も、時間をかけてスタッフの信頼を失っていきます。

信頼を築くためには、優しさと信念に基づくリーダーシップの両方が必要です。どちらが欠けても、スタッフは院長についていく気持ちになれません。

スタッフは四つの問いで院長を見ている

スタッフが院長を信頼するかどうかは、日常の中で積み重なる四つの問いへの答えで決まります。

一つ目は「患者に対して真摯に接しているか」です。患者が来院したとき、院長がその患者の健康を本当に考えて向き合っているか。スタッフは診療の場面を通じて、院長の患者への姿勢を見ています。患者を「症例」として処理しているのか、一人の人間として関わっているのか。その違いはスタッフに伝わります。

二つ目は「患者の健康のために自費を勧めているか」です。売上のために自費を売り込んでいると感じる瞬間、サポーター型のスタッフのシャッターは閉じます。「この治療が患者さんの健康に本当に必要だから」という確信を持って提案しているか。その姿勢がスタッフに伝わっているかどうかが、医院の文化をつくります。

三つ目は「掲げている理念を実現しようと院長が一番努力しているか」です。「患者の健康のために」という言葉を掲げながら、院長自身の行動がそこから離れているとき、スタッフは言葉と行動のギャップに気づきます。理念は院長が一番体現していなければ、スタッフには絵空事に見えます。

四つ目は「スタッフの成長を願い、高いハードルを超えることを求めているか」です。優しいだけで何も求めない院長のもとでは、スタッフは成長しません。医療従事者として高い水準を求められる厳しさの中に、「あなたにはできる」「応援されている」という期待を感じるとき、スタッフは挑戦する意欲を持てます。

先生は今、この四つの問いにどう答えられますか。

「理不尽」という言葉が出るとき、信頼は崩れている

スタッフがよく使う言葉に「理不尽」があります。

この言葉が出るのは、どんな場面でしょうか。院長に落ち度があるのに、その責任をスタッフに転嫁したとき。結果が出なかったときにスタッフを責めるが、うまくいったときは院長の手柄になるとき。院長には許されることがスタッフには許されないとき。説明なしに方針が変わり、以前と違うことを求められるとき。

スタッフが「理不尽だ」と感じる体験は、信頼の貯金を一気に引き出します。小さな理不尽が積み重なると、それまで築いてきた信頼関係は崩れます。そして一度「この院長は理不尽だ」という認識が生まれると、その後の院長の言動はすべてそのフィルターを通して受け取られます。院長が正しいことを言っても、「どうせまた…」という気持ちが先に立つようになります。

院長がスタッフに対して真摯に向き合うとは、患者への姿勢と同じです。自分の落ち度は認め、スタッフの努力を正当に評価し、理由を説明して方針を変え、自分にも同じ基準を適用する。これらは特別なことではありません。しかしこれができているかどうかが、スタッフとの信頼関係の質を決めます。

怒りは「感情」ではなく「手段」として使われるとき問題になる

院長が感情的になってスタッフを叱ることは、信頼を損ないます。しかしここで一つ整理しておきたいことがあります。

医療の本質から外れたスタッフの行動に対して、院長が毅然と「それは違う」と理由を添えて伝えることは必要です。人格否定ではなく行動の修正をお願いする。それは、「あなたの成長を願っている」という院長からのメッセージだからです。第二回でお伝えした通り、医療従事者として成長しないという選択肢は認められません。その基準を院長が言葉にして伝えることは、スタッフへの信頼と敬意の一つの形です。

問題になるのは、怒りが「院長の感情の発散」として使われるときです。スタッフのミスを叱るのではなく、院長のストレスのはけ口としてスタッフに怒りをぶつけるとき。院長自身の不安や焦りをスタッフへの怒りで覆い隠すとき。この怒りには基準がない。同じ場面でも怒ったり怒らなかったり、スタッフによって怒ったり怒らなかかったり。こうした怒りはスタッフに「理不尽」と受け取られ、信頼を失う原因になります。

「歯科医療に求められる品質基準として伝える厳しさ」と「感情の発散としての怒り」を、スタッフは明確に区別します。前者は信頼を高め、後者は信頼を壊します。

いったん味方になったスタッフは、最強の仲間になる

信頼を築くことは難しく、失うことは一瞬です。しかしその努力を続けることには、大きな意味があります。

院長を信頼したスタッフは、その院長のために力を尽くします。困難な場面でも逃げず、患者のためにも医院のためにも全力で動きます。院長が落ち込んでいるときに支えようとします。院長が間違っていると思えば、勇気を出して伝えようとします。こういうスタッフが組織の中にいることは、院長にとって何よりも心強い財産です。

一方、信頼を失ったスタッフは、その後の関係修復が非常に難しい。謝罪や改善の言葉を伝えても、一度閉じたシャッターは簡単には開きません。信頼は予防が最善の策です。失ってから取り戻そうとするより、日常の関わりの中で積み上げ続けることの方が、はるかに少ない労力で深い関係が生まれます。

先生は今、スタッフとの間に信頼を積み上げていますか。日常の小さな場面で、信頼の貯金をしていますか。

まとめ

スタッフの信頼を失う院長は、高圧的なコントロール型だけではありません。優しいが信念を感じられずリーダーシップに欠ける院長も、時間をかけて信頼を失います。スタッフは四つの問い(患者への真摯さ・自費の目的・理念の体現・成長への要求)で院長を見ています。そして「理不尽」という体験が信頼の貯金を一気に引き出します。

院長がスタッフに対して真摯に向き合い続けること。それが信頼をつくる唯一の方法です。いったん信頼を得たスタッフは、院長の最強の仲間になります。その仲間を一人ずつ増やしていくことが、組織をつくることの本質です。

次回は、院長が陥りやすい「甘すぎる」と「厳しすぎる」の罠についてお伝えします。

 

先生の医院のこれからを、心から応援しています。

 

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