採用は「今の穴埋め」ではなく「未来の投資」
多くの歯科医院では、「退職者が出たから」「忙しくなって人手が足りないから」という理由で急いで求人を出すケースが少なくありません。しかし、これは採用を“欠員の補充”と捉えてしまっている証拠です。
本来、採用は未来の医院の姿をつくるための投資であり、戦略の一環として考えるべきです。採用が場当たり的になると、医院の理念や文化とフィットしない人材を迎え入れてしまい、短期退職やチームの不和を招くリスクが高まります。
先生の医院では、採用活動が「将来のチームづくり」の視点で設計されていますか?
経営計画と人材戦略をつなぐ「採用計画」の重要性
採用を戦略的に行うためには、まず経営計画の中に人材に関する具体的な方針を盛り込む必要があります。例えば、3か年計画を作成する際に、
「2年目に訪問診療の体制を整えるために、歯科衛生士を1名追加」
「3年目には新人教育専任の役割を担える人材を確保」
といった具合に、人材の職種・スキル・人数を明記することで、採用に対する判断軸が明確になります。
採用計画がある医院は、「誰が辞めたか」ではなく「これから何を実現するか」を基準に採用の意思決定ができるのです。これにより、医院の価値観や将来像にマッチする人材と出会いやすくなります。
そして広告を出すだけでは人材が確保できなくなっていきますので、ネットワークを作っていくことを意識して頂けたらと思います。
「採用してはいけない人材」とは、どんな人か?
場当たり的な採用が繰り返されると、「とにかく歯科衛生士が欲しい」「受付が回らないから誰でもいい」という心理が働き、いわゆる“確証バイアス”に陥りがちです。結果、以下のようなミスマッチ人材を採用してしまうケースが増えます。
・医院の理念や成長環境には関心がなく、条件面だけを重視する人
・転職回数が多く、歯科業界以外も転々としている人
・過去の退職の仕方が不誠実で、社会人としてのマナーに欠ける人
・長年スキルアップの意思が見られない歯科衛生士
・院長の行動特性と合わないタイプ(関係性が悪化しやすい)
こうした方は、高い確率で医院文化と合わず、他のスタッフとの協働にも支障をきたす可能性があります。採用時のチェックポイントとして、スキル以上に「価値観」「人柄」「成長意欲」を重視したいところです。
「今はまだ必要ない人材」を採るという発想
理想的な採用は、「人が辞めたから」「忙しくなったから」といった“今の不足”に対応するだけでなく、「将来こういう人が必要になる」という見通しから行うものです。経営計画に基づいて採用活動を行えば、まだ業務的に必要ではない段階でも、「この人なら将来的に育てられる」と感じる人材を採る判断ができます。
こうした“先取り採用”は、実際にマンパワーが必要になったときに即戦力として動けるスタッフを確保するうえで非常に有効です。余裕をもって育成できるため、既存スタッフの教育負担も分散され、チーム全体のストレス軽減にもつながります。
過去には「あの時、人が足りていたけど採用しておいて良かった」と院長が仰る場面を私は何回も見てきました。
先生の医院では、「今はまだ必要ないけど、将来のために採っておこう」と思えるような採用判断ができていますか?
採用・育成・定着をつなぐ「人材戦略」が医院の未来を変える
採用、育成、評価、配置といった一連の人材マネジメントは、すべて経営計画とつながっていなければ意味を成しません。「採用計画のない育成」「育成計画のない評価」は、スタッフにとっても不安定な環境を生み出します。
採用した人材を医院の方針に沿って育成し、定着させ、やがて次の採用や育成を担ってもらう。こうした好循環を生み出すには、理念に基づいた人材戦略の明文化が不可欠です。
逆に、この視点を欠いた採用は、医院の文化を壊すリスクすらあります。採用は単なる「人数合わせ」ではなく、「文化をともに創っていく仲間を探すこと」であるという意識を、院長が常に持っておくことが重要です。
まとめ
歯科医院にとって採用は、ただの補充ではなく、医院の未来を形づくる戦略的活動です。そのためには、理念と経営計画に基づいた「採用計画」を立て、「誰を・なぜ・いつ採るのか」を明確にしておく必要があります。
「今必要だから」ではなく、「将来この人が必要になるから」という理由で採用を行い、その人材を育成していく体制が整えば、ミスマッチ採用や離職は確実に減っていきます。
場当たり的な採用から脱却し、採用を医院経営の柱にしていきましょう。
そうそう、「口管強基準」の届け出直しまであと二か月です(5月末)。か強診を届けておられる先生は忘れずに届けてくださいね。