「空いているポジション」とは治療コンテンツではない
空いているポジションを探そうとするとき、多くの院長は「どの治療コンテンツが競合に少ないか」という方向で考えます。しかしそれは、隙間の探し方として正確ではありません。
隙間とは治療コンテンツではなく、患者の潜在的な需要のことです。需要は大きいが、現在参入している歯科医院が十分に対応できていない患者のウォンツ。その未充足の需要が、中規模医院が狙うポジションになります。治療コンテンツから考えるのではなく、患者が本当に求めているがまだ満たされていないものを起点に考えることが、ポジション探しの正しい順序です。
大規模医院が対応しにくい領域に、隙間がある
大規模歯科医院は組織が大きい分、小回りが利かない領域があります。スタッフの労働環境整備、組織としての均一な医療品質と医療サービス設計、勤務ドクターを中心とする各チームの生産性向上、多数の患者をさばく効率的アポイントシステム。これらを優先せざるを得ない大規模医院では構造的に対応が難しい患者ニーズ、が、必ず存在します。大規模医院は需要の真ん中を取りに行くからです。
中規模医院の強みは、患者との距離の近さとパーソナルな対応です。院長やスタッフが患者一人ひとりの事情に深く向き合い、痒いところに手が届く対応ができる。大規模医院が「生産性を低下させる」と避ける領域を、中規模医院は強みにできる可能性があるのです。
ペルソナを決め、その患者に「直接聞く」
中規模医院がポジションを見つけるための最も確実な方法があります。通っている患者の中から狙うペルソナ(理想の患者像)を決め、そのペルソナの代表格となる複数の患者に、「どうすれば痒いところに手が届くか」を直接聞くことです。
院長が「こんなニーズがあるはずだ」と机上で考えるより、実際の患者の言葉を聞く方が精度は格段に上がります。「治療を続けるうえで物足りないと感じることは何か」「あと何が加われば医院の魅力が増すか」「長く通い続けて頂いている理由は何か」。こうした問いへの答えが、空いているポジションのヒントを与えてくれます。
地域のネットワークが、別の隙間を教えてくれる
もう一つの隙間の見つけ方があります。地域の医療・介護・福祉ネットワークへの参加です。多職種が集まる会議や地域連携の場に継続的に参加し、他職種の専門家が「歯科に期待していること」「歯科医院に足りていないと感じること」を聞くことで、患者への直接アプローチでは見えにくいニーズが見えてきます。
訪問診療に参入しながら点数の算定と効率化だけを重視し、地域の多職種からの信頼を得られていない歯科医院では、紹介が生まれません。地域のネットワークに参加する真摯な姿勢と、相手の要望に応える誠実さが、地域のネットワークからの信頼に繋がり、紹介という新しい患者の流れをつくります。効率化と対極にある付加価値に目を向けることで大規模医院とは違う道が開けるのです。
他にも院長のコミュニケーション力が高く、地域のビジネスや医療コミュニティに積極的に参加できるなら、そこを起点にした戦略は大規模医院には真似できない強みになります。
同じ治療コンテンツでも、ポジショニングで差別化できる
一点補足しておきたいことがあります。隙間は珍しい治療コンテンツではないということです(需要のボリュームが小さい為、参入しても成果が少ない)。ボリュームが大きい治療コンテンツであっても、ポジショニングの違いで大規模医院との差別化は可能なのです。これをビジネスの世界では「空いているポジション」といいますが、差別化は治療コンテンツの選択ではなく患者のニーズというよりはインサイト寄りの場所に眠っているのです。もちろん、どこが開いているのかは開業されている地域によって違います。
誰のために、どんな価値を、どのような関わり方で届けるのか。このポジショニングが明確であれば、患者に選ばれる理由が生まれます。大規模医院と同じ土俵に立つのではなく、同じコンテンツを持ちながら「痒いところに手が届く」価値として届ける設計が、中規模医院らしい戦い方です。次回は、そのポジショニングを支えるペルソナと治療ブランドの設計を論じます。
先生の医院のこれからを、心から応援しています。
![]() |
|
![]() |
|
![]() |

















