「ティール組織」という考え方を知っていますか
フレデリック・ラルーが著書『ティール組織』(2014年)で提唱した組織論は、世界中の経営者に大きな影響を与えました。
組織の進化段階を色で分類し、最も進んだ段階を「ティール(青緑)」と名づけた理論です。
ラルーは組織を以下のように分類しています。
衝動型(レッド)は、力による支配が中心の組織です。
順応型(アンバー)は、規則と階層による管理が基本で、多くの官僚的組織がここに該当します。
達成型(オレンジ)は、成果と効率を重視し、近代的な企業の多くがこの段階にあります。
多元型(グリーン)は、メンバーの価値観と関係性を重視し、心理的安全性や権限委譲に取り組む組織です。
そして進化型(ティール)は、階層や管理職を持たず、メンバーが自律的に意思決定し、組織が生き物のように進化していく形態です。
私が現場で見てきた限り、今の日本の歯科医院の中でも先頭集団を走っている医院の一部がグリーン組織にいる。
そして多くの医院はアンバーやオレンジで止まっているのです。
日本の歯科医院の権限委譲は実際には権限委譲になっていない事が多く、院長が自院がグリーンだと思っていても実際にはオレンジであることも多いのです。
ティール組織が機能する条件とは
ティール組織の魅力は、リーダーがいなくても組織が動くことです。
メンバーが自律的に問題を発見し、話し合い、役割を決め、実行する。指示を待たない。管理されなくても動く。
私がある歯科医院でこの光景を目にしたことがあります。
院内に自律型人材が三人いて、リーダーを立てることなく院内の課題について話し合い、短時間で課題の抽出、改善プランと役割分担、予算、実行日時、達成期限まで決めてしまいました。
三人が対等に話し合っていましたし、足りない視点をお互いに補い合っていた。
私はこの3人で動くならティール型になると感じたのです。
しかし同時に、これが例外的な光景であるかも分かりました。組織に自律型人材だけが揃っている医院はないからです。
ティール組織が機能するためには、すでに自律的に動ける人材が揃っていることが前提になります。
自律型人材は育てるものではなく、もとからそういう資質を持った人材を集めることで成立する面が強い。
ラルーの理論も、一から人材を育ててティール組織をつくることより、すでに自律的な人材が集まる環境を整えることを重視しています。
なぜ日本の組織でティール型人材は「問題児」になるのか
ここに、日本特有の構造的な問題があります。
日本の教育は長らく、組織に最適化することを前提にしてきました。
決められたことを正確に覚え、集団の和を乱さず、先生や上司の指示に従う。
この教育の中で育った人は、組織への適応力は高くなりますが、一方で自我の発達が抑制されやすくなります。
自己主張が弱くなり、自分の意見より場の空気を優先するようになります。
そのような環境の中で、自律的に考え動こうとする人材は「空気を読めない人」「勝手に動く問題児」として扱われやすくなります。
歯科医院の現場でも、自律型の人材が定着しにくいのはこの構造が背景にあります。
院長は「自分で考えて動いてほしい」と言いながら、実際に自律的に動いたスタッフを「勝手なことをする」と評価してしまうという矛盾が起きるのも、同じ理由です。
この場合の自律には「院長が望んでいる範囲で」という条件が付いているのです。
これは個人の問題ではなく、教育と文化の問題です。
ただし、この状況は少しずつ変わっていく可能性があります。
アクティブラーニングを中心とした新しい教育システムの中で育つ令和世代が社会の中心を担うようになるころには、自律型人材の比率は今より高くなっているかもしれません。
しかし現時点では、日本の歯科医院がティール組織を一から目指すことは現実的ではありません。
現実解は「ハイブリッド型」組織にある
では、ティール組織の理念から学べることはないのでしょうか。私はあると思います。
ただし、組織全体を一気にティール型に変えようとするのではなく、ハイブリッド型という現実解をとることが、今の歯科医院には最も合っていると考えています。
具体的には、医院全体はグリーン組織として運営しながら、自律型人材が複数いる部門や機能に限ってティール的な運用を取り入れるという形です。
たとえば訪問診療部門は、この発想と相性が良い。
訪問先での判断は現場のスタッフに委ねざるを得ない場面が多く、リアルタイムで院長の指示を仰ぐことが難しい。
そこに自律的に動ける歯科衛生士やドクターを配置し、売上予算、経費予算と権限を与え、その部門だけは院長が細かく口を出さないルールにする。
ワンチームとして機能する自律型人材をまとめ、院長はサーバント的にその環境を整えることに徹する。この設計は実現可能です。
院長が都度指示を出すのではなく、方針と基準を共有した上で任せる(報告と援助は必要)。こういった部分的なティール型の運用が、医院全体の生産性と患者満足の両方を高めていきます。
先生の医院の中に、こうした自律型チームとして機能させられる部門や人材はいますか?
自律型人材には「任せきる」覚悟が必要である
ハイブリッド型を機能させる上で、院長に最も求められるのは「徹底的に教えた上で任せきる覚悟」です。
自律型人材は、細かく管理されることを最も嫌います。
任せると言いながら途中で口を出す、決定を覆す、やり方を指定する。こうしたことが続くと、自律型人材はやがて自分のエンジンを切ります。
指示を待つ側に戻るか、医院を去るかのどちらかです。
以前の記事でお伝えした「二重権限の問題」と同じ構造です。
権限を渡したつもりで実際には渡せていない院長のもとでは、自律型人材は力を発揮できません。
逆に、本当に任せきれる院長のもとでは、自律型人材はどんどんチームを良くしていきます。
ティール型の部門をつくるということは、院長がその部門の日常判断から手を引くということです。
これは勇気のいることですが、その一歩が組織を次のステージに引き上げます。
そうそう、一つだけ注意点があります。自律型チームの中に課題達成型ではない人材は入れないでください。
その理由は書きませんが100%問題が発生するからです。
まとめ
ティール組織をそのまま歯科医院に導入しようとすることは、現時点では現実的ではありません。
しかし、その本質である「自律型チームに任せきる」という発想は、今すぐ取り入れられます。
医院全体はグリーン組織を目指して運営しながら、自律型人材が集まる部門だけはティール的な運用を取り入れるハイブリッド型。
この現実解が、日本の歯科医院が次の組織の段階へ進むための、最も現実的な一歩だと私は考えています。
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