どの地域にも歯科医院は数多くあります。
患者さんの視点からすれば、
「どこに行っても大きな差はない」と感じることも少なくありません。
しかし、そんな中でも予約が埋まる医院、口コミで広がる医院があります。
その違いを生むのが「ポジショニング戦略」 です。
1.「差別化」より大切なのは、“意味のある違い”を作ること
多くの院長が「他院との差別化を図りたい」と仰います。
しかし、差別化のための差別化では意味がありません。
マーケティングで大切なのは、
「患者にとって意味のある違い」を明確にすること。
例えば:
・夜間診療をしている → “忙しい人でも通える安心感”
・定期メンテナンスを重視している → “未来の健康を守る信頼感”
・女性ドクター在籍 → “子どもや女性も安心できる雰囲気”
同じ特徴でも、“患者がどう感じるか”によって価値は変わります。
つまり、ポジショニングとは「他院との違い」ではなく、
“患者の頭の中に残る位置づけ”をどう設計するか なのです。
2.競合調査の目的は「敵を探す」ことではない
競合調査というと、“敵の分析”と思われがちです。
しかし、実際には「比較軸を知る」ための作業です。
患者は医院を選ぶ時、無意識に比較しています。
たとえば、
・通いやすさ(立地・駐車場・予約の取り易さ)
・雰囲気(清潔感・スタッフ対応)
・院長の人柄と治療技術
・説明の丁寧さ・安心感
・費用・支払い方法
・スピード(予約の取りやすさ)
これらの比較軸を把握した上で、
「どの軸で勝負するか」「どの軸では無理をしないか」を決める。
これが経営戦略としての競合分析です。
例えば同じ飲食店でも朝食とディナーでは競合しない。バトルフィールドが違うからです。
3.ポジショニングの具体例 ― 同じ地域でも“立ち位置”は変えられる
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ポジションタイプ |
特徴 |
具体例 |
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専門特化型 |
特定の治療領域で信頼を獲得 |
インプラント・ワイヤー矯正・審美・訪問診療など |
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ファミリー型 |
家族全員の健康を守る |
小児+予防+保健指導の統合型 |
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地域密着型 |
“町のかかりつけ”として信頼 |
地域行事参加・高齢者支援・予防啓発 |
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プレミアム型 |
高品質・快適性を重視 |
時間予約制・丁寧な説明・空間デザイン |
ここで重要なのは、“どのポジションを選ぶか”ではなく、
そのポジションを医院の理念と一貫させること。
「なぜその立ち位置なのか?」が説明できる医院は、患者に信頼されます。
4.「選ばれる理由」を明確にする3ステップ
① 認知軸を見つける
患者が“医院を思い出す瞬間”を定義する。
例:「歯のトラブルがあったときに最初に思い浮かぶ医院」
つまり「応急処理だけしてくれる歯科医院」で先生の医院が思い浮かべば、先生の医院は急患ばかりが押し寄せる様になるのです。
② 感情軸を設計する
“どんな気持ちになれる医院か”を明文化する。
例:「ここに来ると安心できる」「私のことを理解してくれているスタッフがいる」
③ 理念軸で裏付ける
医院の理念や価値観とリンクさせる。
例:「一生自分の歯で食事を楽しめる人生を支える」
この3つを揃えると、“理念が伝わるブランディング” になります。
もちろん、①~③は具体的な仕組みにして実践しなければ成果を生むことはありません。
5.チェックリスト:「うちの医院はどう見られているの?」
☑患者に「なぜ当院を選んだのか」を聴いている
☑ 競合医院のホームページ・Googleマップ・口コミを定期的にチェックしている
☑ スタッフ全員が「うちの強み」を同じ言葉で説明できる
☑「理念→体験→印象形成」の流れが院内で一致し仕組み化されている
☑ “何を大切にする医院か”を患者が理解できる「コミュニケーション+広告」のデザインになっている
この5項目が揃っていれば、すでに医院は“選ばれる理由”を持っています。
6.今日からできる実践
「競合との違い」ではなく「患者が感じる価値」を整理しましょう。
スタッフミーティングで、ぜひ次の3つを共有してみてください。
1.患者は、当院の“何”に安心を感じていると思う?
2.患者が他院と比べて“便利”と感じている点は?
3.当院でしか得られない“体験”とは何か?
これを可視化すると、医院の“存在意義”が浮かび上がります。
まとめ
ポジショニングとは、医院の立ち位置を決めることではなく、
患者の頭の中に医院の価値を刻むこと。
「他院とどう違うか」ではなく、
「なぜこの医院を選ぶべきなのか」を明確にする。
それが、“理念で選ばれる歯科医院” の第一歩です。
医療なので、地域医療のなかでどんな役割を果たしていくのかもポジショニングとしては重要です。
地域環境は常に変化しています。だから地域の多職種や行政がどんな役割を果たしてくれる歯科医院を待ち望んでいるのかを把握してポジショニングすることも良いかもしれませんね。
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