おはようございます。
歯科医院経営コーチの森脇康博です。
今日から三方よし経営の柱の一つである「長期管理型歯科医院経営」について書いていきたいと思います。
①国が求める「かかりつけ歯科医院」と出来高払いの未来とは
②地域の歯科医療需要(マーケット規模)を分析した経営戦略とは
③患者の予約キャンセルと治療中断に要注意!、バケツに水を注ぎ続ける自転車操業医院とは
④トライアル率リピート率、バケツの穴が存在しない歯科医院経営の作り方とは?
⑤院長は誰に信頼され誰に愛される歯科医院を目指すのか?
⑥治療技術、診断力、治療計画立案力、治療計画提案力、治療計画完了率が歯科医院経営の生命線である理由
⑦CRM(顧客関係構築ソフト)への情報インプットとナレッジマネジメント
⑧脱治療計画!治療・重症化予防計画、健康管理計画への移行
⑨医療だからこそ、取組みの成果は数値で把握し時系列に管理して評価対策するべき理由
⑩長期管理型歯科医院は未来の予約が埋まる経営スタイル 先生の医院のかかりつけ患者は何人??
のうち今日は「①国が求める「かかりつけ歯科医院」と出来高払いの未来とは」についてです。
国の社会保障改革の方向性は一貫しており、令和2年に閣議決定された「全世代型社会保障改革の方針」をベースに「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」等で方向性が示され、全世代型社会保障構築会議などで継続的に論議されています。
ちなみに歯科医療については骨太の方針で、
全身の健康と口腔の健康に関する科学的根拠の活用と国民への適切な情報提供、生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)に向けた具体的な取組の推進、オーラルフレイル対策・疾病の重症化予防につながる歯科専門職による口腔健康管理の充実、歯科医療機関・医歯薬連携を始めとする多職種間の連携、歯科衛生士・歯科技工士等の人材確保の必要性を踏まえた対応、歯科領域におけるICTの活用の推進、各分野等における歯科医師の適切な配置の推進により、歯科保健医療提供体制の構築と強化に取り組むとともに、有効性・安全性が認められた新技術・新材料の保険導入を推進する。
と記されています。
昨年の診療報酬改定で「か強診」が廃止され「口管強基準」に変わりましたが、国の改革の方向性は変わってはいません。
歯科の場合は全体が”かかりつけ医”とされただけで、地域包括ケアシステムの推進の方向性は同じなのです。
つまり、保険医療機関においては今後も国が定めるかかりつけ機能を果たすことが求められ、「国が示す基準をクリアした医院は加算点数が算定できるが、クリアできない場合には加算点数が算定できない」などのインセンティブによって歯科医療機関を誘導しようとしているのです。
か強診取得医院も口管強基準は今年の5月末までの届け出が必要ですが、私は口管強基準の施設基準取得医院数が大幅に増えるとは考えていません。
残念ながら、国が進める社会保障改革に危機感を抱いて対応しようとしている歯科医院の院長はまだまだ少数であり、「まだ何とかなる」と思っている院長の方が多いからです。
しかし、現実はそう甘くはありません。
国が設定するハードルを超えずに今までと同じ診療をしていれば受け取れる診療報酬は少しづつ減少し、経営コストの増加によって営業利益は圧縮される。
そして賃上げと労働環境改善が出来ない歯科医院に勤務したいと考えるスタッフはいないのです。
ご存じでない方も多いでしょうが国は「出来高払い」の縮小も明言しています。
包括点数が増えていって最終的には標準医療、定額報酬制に近づいていく。
数年前にマスコミが「かかりつけ医の法制化」「かかりつけ患者一人当たりの定額制導入」という記事を書いて国が即座に否定しましたが、いま、病院で進む包括払いへの移行から考えても最終的には出来高払いを定額払い制に変えたいという思惑が見え隠れしているのです。
国民は保険制度に加入しているだけでは十分な治療が受けられず民間保険にも加入し、保険医療機関も保険医療を担っているだけでは経営が成り立たない。
残念ながらそれが国が目指す10年後の保険医療だと私は考えています。
それが良いとは思いませんが、これから爆発的に増えていく医療費や社会保障費を大幅に抑え、国民の負担を大幅に増やさないと国の財政が破綻してしまう。
だから、国民も民間保険に加入して足りない部分をカバーしてくださいということなのです。
高額療養費の負担上限がどの様に決着するかは読めませんが、そのうち負担増になる分は民間保険に加入して備えましょうとなるはずです。
医療や福祉はこれから最大のマーケットになっていきますので、そのマーケットを民間に開放しろという内外の圧力は昔からあるからです。
(私はこちらの方が本筋だと考えています)
他にも各種基金・連合会のコンピュータシステムが統合・連携できるようになれば、レセプト審査が本格的にAIに移行していきます。
国が進めている改革はまだまだあるのですが、またの機会に書きたいと思います。
保険医療機関は国から与えられた条件で収益性を最大化させ、保険外の収益も強化していくことが必須となっていく。
「自助の時代」はまだ始まったばかりなのです。
Posted at 05:00