歯科医院経営コンサルタントの森脇康博です。
今回は「地域別診療報酬とリスクマネジメント」についてです。
最近、地域別診療報酬が話題にのぼっています。
地域別診療報酬の設定は「特例」ですが、具体的な活用法についての指針が国から出されると、都道府県や保険者からの圧力が強まり、2023年までには現実になる可能性があると考えます。
日医総研のリサーチエッセイでは「地域別診療報酬は最終手段」だとし、
診療報酬の特例は高確法の下に運用されるものであり、これまで述べてき たとおり厳格な手続きが設定されている。財政制度等審議会(財政審)は、すぐにでも活用できるよう法律を改正してでも別の枠組みで実現すべきだといった主張をしているが、都道府県が予防・健康づくりをおろそかにして、診療報酬のコントロールに頼るおそれがあるなど、弊害が大きい。
(日医総研リサーチエッセイ No.66より引用)
と釘を刺しています。
私自身も反対の立場ですし、保険医療の崩壊が加速することを危惧しています。
しかし、要請した奈良県をはじめ都道府県や保険者は特例を拡大解釈したいのです。何故なら都道府県が策定した「第7次地域医療計画」「第三期医療費適正化計画(2018年~2023年)」には達成を裏付ける根拠が弱く、計画の達成が容易ではないという現状があるからです。
彼らにとって地域医療費削減計画達成に近づく為の”打出の小づち”が「地域別診療報酬」なのです。
地域別診療報酬がどういう形でいつ実施されるかは不確実ではあります。
医師会の政治力によって落としどころが変わる可能性もあります。
高確法第14条にある「適切な医療を各都 道府県間において公平に提供する観点」を国がどう判断するのか?が注目されます。
医院経営への影響を計算して対策をしておく
院長は地域別診療報酬が実施されても、実施されなくても、経営への影響を想定して対策しておく必要があります。
地域別診療報酬が実施された場合、1円下がると(1点×10円⇒9円)保険の売上は単純計算で10%下がりますが、利益は大幅に減ってしまいます(メカニズムを知らなければ顧問の税理士、または契約しているコンサルタントにお尋ねください)。
もし、実施されることがあれば、それをどうカバーしていくのか?を考えて経営対策をしておく。リスクマネジメントが必要です。
実額の固定費が多く損益分岐点比率が高い医院は特に注意が必要です。
<参考>
「高齢者の医療の確保に関する法律」
第九条
3 都道府県医療費適正化計画においては、前項に規定する事項のほか、おおむね都道府県における次に掲げる事項について定めるものとする。
一 住民の健康の保持の推進に関し、当該都道府県において達成すべき目標に関する事項
二 医療の効率的な提供の推進に関し、当該都道府県において達成すべき目標に関する事項
三 前二号の目標を達成するために都道府県が取り組むべき施策に関する事項
第十三条 都道府県は、前条第一項の評価の結果、第九条第三項第二号の目標の達成のために必要があると認めるときは、厚生労働大臣に対し、健康保険法第七十六条第二項の規定による定め及び同法第八十八条第四項の規定による定め並びに第七十一条第一項に規定する療養の給付に要する費用の額の算定に関する基準及び第七十八条第四項に規定する厚生労働大臣が定める基準(次項及び次条第一項において「診療報酬」という。)に関する意見を提出することができる。
2 厚生労働大臣は、前項の規定により都道府県から意見が提出されたときは、当該意見に配慮して、診療報酬を定めるように努めなければならない。
(診療報酬の特例)
第十四条(診療報酬の特例) 厚生労働大臣は、第十二条第三項の評価の結果、第八条第四項第二号 及び各都道府県における第九条第三項第二号の目標を達成し、医療費適 正化を推進するために必要があると認めるときは、一の都道府県の区域内 における診療報酬について、地域の実情を踏まえつつ、適切な医療を各都 道府県間において公平に提供する観点から見て合理的であると認められる 範囲内において、他の都道府県の区域内における診療報酬と異なる定めを することができる。 2 厚生労働大臣は、前項の定めをするに当たつては、あらかじめ、関係都 道府県知事に協議するものとする。
Posted at 09:37