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【女性スタッフが輝くシリーズ第4回】「甘すぎる」と「厳しすぎる」の罠 ― 適正な成長負荷をかける技術  [2026年05月27日]
おはようございます。
歯科医院経営コーチの森脇康博です。
 
私は大阪の開業医団体で30年勤務し、院長の近くで経営と医院づくりを応援したいと独立して13年が経ちます。
このブログでは歯科医院経営とマネジメントに役立つ情報を発信します。
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男性院長と女性院長、それぞれが陥りやすい罠

スタッフへの成長負荷のかけ方で、男性院長と女性院長にはそれぞれ異なる傾向が見られます。

男性院長は、スタッフへの接し方の「ライン」が見えにくい。スタッフが嫌な思いをするかもしれないという不安から必要以上に遠慮して甘くなるか、逆にその不安を押さえ込もうとして厳しくなりすぎるか、どちらかに振れやすい傾向があります。適切な距離感が見えにくいため、スタッフの反応を見ながら手探りで関わることになります。

女性院長は、同性だからこそ「甘えの許容ライン」が見えます。スタッフが言い訳をしているのか、本当に困っているのかを感じ取りやすい。しかしそのラインが見えるがゆえに、「甘えは許さない」という姿勢が強くなりすぎることがあります。その結果、複数のスタッフが同時に辞めてしまうという事態につながるケースも、現場では起きています。

男性院長の「甘すぎる・厳しすぎる」も、女性院長の「厳しくなりすぎる」も、根本的な原因は同じです。それは、院長自身の基準でスタッフへの負荷を設定しており、スタッフ個々の成長度を基準にしていないことです。

「甘すぎる・厳しすぎる」は院長基準で負荷を設定しているから起きる

たとえば、最高で100の成長負荷がかけたい状況で、院長が70の負荷を設定したとします。この70という数字は、院長の感覚では「適切な負荷」かもしれません。しかしそれを受けるスタッフにとっては、まったく異なります。

現在の成長度が40のスタッフにとって、70の負荷は重すぎます。追いつくことができず、失敗が重なり、自信を失います。一方、成長度がすでに80のスタッフにとって、70の負荷は軽すぎます。物足りなさを感じ、成長の実感が持てず、やがてより成長できる環境を求めて旅立っていきます。

院長基準の「適切な負荷」が、あるスタッフには甘すぎ、別のスタッフには厳しすぎる。この構造を理解せずに一律の基準でスタッフに向き合い続けると、いつまでたっても「スタッフが育たない」という状況が続きます。

「闘争逃走反応」ではなく「チャレンジ反応」へ

スタッフに成長負荷がかかったとき、二種類のストレス反応が起きます。

一つは「闘争逃走反応」です。強すぎる負荷がかかったとき、人は「戦う(反発する)」か「逃げる(離職する)」かのどちらかに向かいます。これは生理的な反応であり、スタッフの意志の弱さではありません。負荷が大きすぎると、スタッフはそれを「脅威」として受け取ります。

もう一つは「チャレンジ反応」です。適切な負荷がかかったとき、人は「自分にできるかもしれない」「やってみよう」という気持ちで向き合います。健康心理学者のケリー・マクゴニガル氏が指摘するように、同じストレスでも「脅威」として受け取るか「挑戦」として受け取るかで、身体の反応も行動の結果もまったく変わります。

そして、ストレス反応が「闘争逃走反応」に複数回流れるとそれが強化され、次回以降もストレスがかかった時にチャレンジを避けるようになるのです。

チャレンジ反応を引き出すために、院長に求められる準備があります。成長負荷をかける前に、その目的をスタッフに丁寧に説明し、同意を得ることです。「なぜこれをあなたに求めるのか」「この負荷を乗り越えたとき、あなたにどんな成長があるのか」。この説明が先にあることで、スタッフは負荷を「脅威」ではなく「自分への期待」として受け取れます。

しかし、この説明が省かれやすいのが現場の実態です。院長は「言わなくても分かるだろう」と思いがちですが、スタッフには届いていません。

歯科治療にエビデンスがあるように、スタッフへの成長負荷のかけかたにも守るべきルールがあるのです。

適正な成長負荷は「スタッフの現在地」を基に設計する

では、どのように成長負荷を設定すればよいのでしょうか。基準はシンプルです。院長の基準ではなく、スタッフの現在地から設計することです。

そのスタッフが今どの段階にいるかを正確に把握し、そこから少し上の「背伸びすれば届く」水準を中間目標として設定する。この適正成長負荷をかけることで、スタッフは達成の体験を積み重ねながら着実に成長していきます。

以前にブログでお伝えしたSL理論(状況対応リーダーシップ)の考え方と同じです。スタッフの成長段階によって、院長の関わり方と求める水準を変えていく。これができているかどうかが、育成の成果を決めます。

また、成長度が高いスタッフが成長途上の医院に入職した場合、院長から「みんなに教えてあげて」とお願いされることがよくあります。しかしそのスタッフにとって、自分より成長度の低い環境は「自分が成長できない場所」です。貢献への意欲はあっても、自分の成長を止めてまで留まる理由を見つけにくくなります。最終的により成長できる環境を求めて旅立っていくのは、当然の選択です。

成長度が高いスタッフには、より高い負荷と責任のある役割を与える。成長途上のスタッフには、そのスタッフの現在地に合った負荷で段階的に育てる。この個別設計が、組織全体を底上げしていきます。

先生の医院では今、スタッフごとの成長度を把握した上で、それぞれに合った成長負荷を設定できていますか。

成長負荷をかける前に、院長が準備すべきこと

スタッフに成長負荷をかけるとき、院長が準備すべきことがあります。

まず、目的の説明と同意の確認です。「なぜこれを求めるのか」「この成長があなたにとってどんな意味を持つのか」を丁寧に伝え、スタッフが自分の意志でその負荷に向かえる状態をつくります。この一手間が、闘争逃走反応ではなくチャレンジ反応を引き出します。

次に、失敗したときの受け止め方を伝えておくことです。「うまくいかなくてもいい、そこから学べばいい」という前提を先に伝えておくことで、スタッフは失敗を恐れずに挑戦できます。失敗を責める環境では、スタッフは安全な行動しか取らなくなります。

そして、成長の経過を院長が見ていることを伝え続けることです。負荷をかけたまま放置するのではなく、「今どんな状態か」「どこで詰まっているか」を定期的に確認し、必要に応じてサポートする。スタッフが「院長は見てくれている」と感じることが、挑戦し続ける力になります。

まとめ

「甘すぎる」「厳しすぎる」という問題は、院長基準でスタッフへの成長負荷を設定していることから生まれます。男性院長は接し方のラインが見えにくく、女性院長は見えすぎるがゆえに厳しくなりすぎる。それぞれの罠がありますが、解決策は同じです。スタッフの現在地を基準に、個々の適正成長負荷を設計すること。そして負荷をかける前に目的を説明し、同意を得ることです。

スタッフが「脅威」ではなく「挑戦」として成長負荷を受け取れるとき、チャレンジ反応が生まれます。その反応を引き出す環境をつくることが、院長がファシリテーターとして果たすべき最も重要な役割の一つです。

次回は、スタッフが長く働き続けられる組織をつくるためのライフイベント対応とキャリアパス設計をお伝えします。

先生の医院のこれからを、心から応援しています。

 

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