大手が「取りにいかないエリア」を見極める
東京の中心部を除く、札幌市・横浜市・さいたま市・名古屋市・大阪市・福岡市といった全国12の大都市部では、大型歯科医院や自費強化型歯科医院が、マーケットニーズのボリュームが大きい領域を積極的に取りにいきます。その結果、ニッチなニーズは相対的に手薄になっているのが現状です。
中規模・小規模の歯科医院がこの環境で戦うには、「需要は十分あるが、大型医院や自費強化型医院が手を出さないエリア」を見つけ、そこにポジショニングして経営資源を集中させることが有効です。これは弱者の戦略の基本です。大手と同じ土俵で戦うのではなく、大手が見落としているすき間に価値を見出すことが、大都市部で生き残る中規模医院の道になります。
歯科医師過剰地域では、資源集中の視点が重要になります。マーケットボリュームの真ん中は供給過剰と調整会議で判断される可能性が高いので、他の医院と同じ需要だけを奪い合うのではなく、他の医院が取り組めていない分野に目を向け、治療コンテンツや医療サービスとして収益化を図る必要があります。地域医療構想では病院を中心とした機能(三次・二次)の地域調整は加速度的に進んでいますが、プライマリケアの領域における機能調整はまだこれからなのです。ただし、大都市部で医師・歯科医師過剰地域と指定されている地域ではプライマリケア領域にも一定の制限が加えられていく可能性が高いと私は考えているのです。
大型医院は「多機能化」の時代に入っている
一方、大型歯科医院にとっては別の課題があります。ターゲット層の幅広いニーズに応えるための多機能化です。子育て中の母親、高齢者、富裕層、ビジネスパーソン、働く女性・・・。その中でターゲットが持つ複合的なニーズに、現在の歯科医療の枠を超えて応えていくことが求められる時代に入っています。
分かりやすい例が、駅の施設に入っているクリーニング店や保育所です。これらは「子育てをしながら働く女性と夫」という具体的なターゲットの複合的なニーズに応えた設計です。歯科医院も同じ発想で、単に治療を提供する場所から、ターゲットの生活全体に寄り添う場所へと進化していく可能性があります。
そこにこれから「医療」「介護」「福祉」「健康」「保育」など、行政や法律による縦割り規制の解消も加わっていく。そこに参入できるかどうかで大型法人の経営の未来が変わるのです。
大都市部ならではの「変化への機敏さ」
大都市部は人口が多い分、ライフスタイルの変化も速く多様です。そして女性や老人の労働参加率が高まることで彼らは忙しい。この変化を機敏にとらえ、複合的なターゲットニーズに応えられる歯科医院が、これから選ばれる医院になっていきます。
大型医院であれば多機能化による幅広い層への対応、中規模の医院であれば拡大できるか?空いているポジションに資源を集中させるのか?の判断。小規模歯科医院はニッチ+自費への特化。医院の規模と開業されている地域によって取るべき戦略の方向性は異なりますが、共通しているのは「今の歯科医療の枠組みをそのまま踏襲しない」という姿勢です。
医療制度改革が進み、経営環境が厳しくなり、地域住民のニーズが変化していく中で先生の医院は、大都市部の中でどのポジションを取ろうとしていますか。経営資源が足りていないのに大手と同じだけお店を拡げ、大手と同じ土俵で戦おうとしていませんか。次回は、東京23区の中心部という特殊な経営環境を論じます。
先生の医院のこれからを、心から応援しています。
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