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【歯科の院長は"患者単価とLTV"をどう高めるのか?第3回】口コミは「待つ」のではなく「設計する」―トリガーとターゲットの明確化  [2026年07月09日]
おはようございます。
歯科医院経営コーチの森脇康博です。
 
私は大阪の開業医団体で30年勤務し、院長の近くで経営と医院づくりを応援したいと独立して13年が経ちます。
このブログでは歯科医院経営とマネジメントに役立つ情報を発信します。
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口コミは「自然に広がる」ものではない

「良い治療をすれば、口コミで患者が来る」。そう仰った院長がおられます。しかし現実はそう甘くはありません。良い治療が口コミの土台になることは間違いありませんが、口コミを経営の集患チャネルとして機能させるには、待つのではなく「良い口コミを発生させる仕組みをつくる」という発想の転換が必要です。

マーケティングの視点から言えば、口コミには大きく三つのパターンがあります。患者個人から別の個人へ届くもの、患者個人からコミュニティ全体へ広がるもの、そして患者個人がSNSで発信することで不特定多数に届くもの。どのパターンを狙うかによって、仕掛けるべきトリガーとターゲットはまったく変わります。

先生の医院では、どういう内容の口コミを誰にどのパターンで広げようとしていますか。そのために具体的に何か設計していますか。

「無知・無関心」の層には、別のアプローチが必要

口コミ設計で最初に明確にすべきことは、誰に届けたいかというターゲットです。そして届けたい相手が、今どの段階にいるかを把握することが、アプローチの出発点になります。

マーケティングにはOATHの法則という考え方があります。対象者が「無知(Oblivious)」「無関心(Apathetic)」「考え中(Thinking)」「悩みを解決したい(Hurting)」のどの段階にいるかによって、届けるべきメッセージは変わるという原則です。

たとえば、口腔機能管理を子育て中のお母さんに広めたいとします。口腔機能管理はまだ多くの方に知られておらず、いわゆるキャズムを超えていない領域です。このテーマに対して、ほとんどのお母さんは「無知」か「無関心」の段階にいます。その層に向けて「口腔機能管理の重要性」や「トレーニング方法」を直接届けようとしても、メッセージは届きません。なぜなら、それはまだ彼女たちが「関心を持っている情報」ではないからです。

関心のある領域から入り、信頼を先につくる

「無知・無関心」の層にアプローチするには、その人たちがすでに関心を持っている領域から入ることが必要です。子育て中のお母さんであれば、子どもの食事や栄養、育児の悩みといった日常的な関心事がその入口になります。

たとえば、手抜きであっても栄養バランスが取れる離乳食の情報をSNSや院内ツールで継続的に発信する。フォロワーが増えてきた段階でSNSアンケートを実施し、参加型のコンテンツとして巻き込む。SNSのコミュニティ参加者向けに、気軽に参加できる離乳食教室をリアルで開催し、その様子をSNSで発信する。こうした積み重ねによって、医院は「子育てに役立つ情報を発信するプラットフォーム」として認知されていきます。

お母さん方にとっての信頼が育ったとき、初めて「実は子どもの口の発達についても、こんなことが大切なんです」というメッセージが届く土台ができます。「何を聞くかではなく、誰から聞くか」の原理がここでも働きます。信頼しているプラットフォームからの情報は、抵抗なく受け取られます。

来院中のお母さんへのアプローチは、別の設計で

一方、すでに来院しているお母さんへの対応は、まったく異なる設計になります。う蝕管理などで来院しているお母さんは、「子どもを虫歯にさせたくない」という動機をすでに持っています。この段階では、口腔機能管理の必要性を丁寧に説明することが有効です。動機がすでにある層には、専門的な情報が届きやすいからです。

来院中のお母さんが口腔機能管理の意義を理解し、「この医院の取り組みは子どもにとって大切なことだ」と感じたとき、ママ友への紹介という口コミが自然に発生する素地ができます。しかしそのためには、口腔機能管理の時間そのものが「楽しく、役立つ体験」として設計されていなければなりません。そして、指導の時間を「楽しく役立つ」と感じてくれたお母さんが口コミをしやすいように、「口コミツール」を設計しておくのです。

説明を一方的に受ける時間ではなく、子どもの成長に寄り添った対話の時間として位置づける。歯科衛生士との関係性の中に温かさがある。帰り際に「また来たい」と感じる何かがある。こうした体験の質が、紹介というトリガーを生む源泉になります。

口コミを「設計する」とはどういうことか

口コミ設計の要素を整理すると、次の三つになります。

一つ目は、ターゲットの明確化です。誰に広めたいのか。その人たちは今、テーマに対してどの段階にいるのか(無知・無関心・考え中・困っている)。この把握なしに、トリガーは設計できません。

二つ目は、パターンの選択です。個人から個人への紹介を狙うのか、コミュニティへの拡散を狙うのか、SNS発信を狙うのか。パターンによって、使うべきツールと仕掛ける場所が変わります。

三つ目は、トリガーの設計です。口コミが発生するためには、「これを誰かに伝えたい」と思わせる体験や情報が必要です。そのトリガーを意図的につくり、磨いていくことが、口コミ設計の核心です。「手抜きでも栄養満点の離乳食情報」はその一例です。医院が持つ強みや地域のニーズに合わせて、どんなトリガーが機能するかを考えることが、院長に求められる経営的な判断になります。

まとめ

口コミは待つのではなく、設計するものです。ターゲットが「無知・無関心」の段階にある場合は、その人たちがすでに関心を持っている領域から入り、信頼を先につくることが必要です。口腔機能管理のようにキャズムを超えていないテーマを広める際には、直接届けようとするのではなく、信頼というプラットフォームを先に育てる戦略が有効です。来院中の患者への丁寧な対応と、未来院層へのコミュニティ形成は、別の設計として並行して進めることが、LTVと新患獲得の両方を高める道になります。

 

先生の医院が地域のお母さんたちにとって「通い続けたい場所」になるための設計を、一緒に考えさせていただければ幸いです。

先生の医院のこれからを、心から応援しています。

 

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