歯科医院経営コーチの森脇康博です。
歯科医院の平均的な「人件費率は?」「労働分配率は?」
とご質問をいただくことがあります。
平均的と言われれば顧問の税理士さんは個人医院で人件費率20%程度と答えるでしょう。
他の業種でもそうですが、歯科医院の院長も平均データと比べて自院の数値がどうなのかを気にされる様です。
しかし、私はいろいろな歯科医院の決算資料(損益計算書、貸借対照表等,キャツシュフロー)を分析してきましたが、こういった比較にはあまり意味がないと考えています。
だいたい、歯科医院の収益モデルや売上額によって適正な経営数値が違うのに、平均化したデータが参考になるはずがないのです。
例えば、中大型歯科医院で人件費率が一時的に高くなっても、6カ月~1年後の「収益力の強化」への対策であれば問題はないのです。
新卒の衛生士を採用したとしてもすぐには戦力にはなりません。だから、その時期は人件費率が高くなることになります。
しかし、新卒の衛生士が育ってきて新たな予約枠を担当できれば、その分売上が増えて人件費率は下がっていくのです。
このことは設備投資や新たな治療コンテンツの追加においても言えます。
新たな投資(人や設備、仕組み)をする場合、売上に繋がるものと質の向上にはなるが売上には繋がらないものがあります。
例えば、スタッフに忙しいと言われてクリーンスタッフを採用しても、洗浄や滅菌のシステムを最新のものに買い替えても直接売上にはつながりません。
高級なユニットを導入したからといって売上が増えることは考えにくいのです。
上記の設備や人的投資は、医院ステージが上がって収益効率が高くなるなかで検討するべきものであって、経営の体力がついていない段階で検討するものではないのです。
また、高額な3Dスキャンのプリンターシステムに投資をしたけれど、投資額を回収できていない歯科医院も多い様です。ブロックの在庫を抱えることで収益性を悪化させ、競合が増えて価格を下げることにより更に収益性を悪化させる医院もあります。
歯科医院の経営分析では「収益力」がどれ位あるかを視ることが重要だと言えます。同じ売上を上げている中大型歯科医院でも、収益構造に大きな違いがあります。
売上と利益は連動しません。
だから、売上だけで歯科医院が上手くいっているかを評価することは出来ないのです。
これからの歯科医院経営ではこの「収益力」を高めることが大切になっていきます。
テーマ:歯科医院経営全般
Posted at 17:00