多くの院長は、経営環境分析をしていない
経営環境の分析をきちんと行っている院長は、実は多くありません。多くの院長の経営判断は、漠然とした感覚と周囲の院長の動きから生まれています。
たとえば、高齢化が進み、長年通ってくれたお年寄りが来院できなくなるケースが増えてくる。すると「やりたくないけれど、訪問を始めるか」という判断になる。あるいは、大学の同期や成功している先輩が始めたことを真似する。矯正治療領域においてアライナー矯正が開発されると、周りの院長がアライナー矯正に参入し始める(参入障壁が低い?と感じる)。すると「自分もやらなきゃ」と参入する。
これらの判断に共通しているのは、開業している地域の経営環境を読んだ上での経営判断ではない、ということです。
戦略がないまま動くと、経営資源は分散していく
本来の経営判断は、次の順序で行われるべきものです。開業している地域の経営環境を読み、自院の経営資源を整えながら、医院の未来をつくる分野に経営資源を重点的に投資する。そして、市場規模の大きな分野で優位性を築き、地域の人たちに「○○で困ったら○○歯科医院」と認知されるところまで持っていく。
この戦略がない院長は経営資源を分散して投資してしまいます。人も、時間も、お金も、あちこちに少しずつ使われ、どこにも柱が立たないまま年月が過ぎていきます。
「経営資源はいつも不足している」。その経営資源をどこに投下すれば医院の未来を切り拓けるかを正しく判断するには、経営環境(マーケット)の現在と未来の需要変化をどれだけ正確に把握できるかが問われるのです。
成果を出す院長は、周りに流されない
一方、医院を大きく強くしていけるアーリーアダプターの院長は、経営環境や競合の分析から自院の戦略を立てることが得意です。戦略と戦術の的中確率が高く、それが経営の成果に直結します。
そうした院長に共通するのは、「自分は周りの院長とは別だ」という意識です。周りの院長がトレンドに飛びついても、自院の柱から外れると判断すれば手を出しません。自分の柱があるので、戦略的に必要で成功確率の高い分野に、集中して投資することができるのです。パイロット事業が上手くいかないと判断すると撤退の判断が早いのも成功する院長の特徴です。
分析の入口を間違えると、努力が無駄になり続ける
経営環境の分析を間違えれば、間違った戦略と戦術が立てられます。そして間違った方向に努力が重ねられるので、どれだけ頑張っても成果は出ません。しかも厄介なことに、院長もスタッフも一生懸命に動いているため、方向が違っていることに気づきにくいのです。
分析から戦略、戦術、経営計画、アクションプランへと、一本の線でつなげて初めて、行動は成果に結びつきます。だから、この線の最初にある経営環境分析で判断を誤ると、経営資源が無駄に使われ続けることになるのです。
分析は、一人でやらなくても構いません
経営環境の分析は、マーケティング思考が鍛えられた院長でなければ、なかなか正確にはできません。そのため、専門家(専門家なら誰でも良い訳ではありません)のサポートを受けながら、分析と戦略立案を進めることをお勧めします。
例えば、東京23区全体では人口のストロー効果が強くなり2050年まで人口が増え続けます。人口が増え続けることにはメリットとデメリットがあって、特に保険医療機関はデメリット面への注意が必要なのです。そんなこともしっかり理解して戦略を立てられる専門家は限られる。入り口である経営環境分析を任せる相手を間違えれば、その後の判断すべてに影響します。だから自院の地域と経営資源を踏まえて分析してくれる専門家を見つけ、タッグを組むこと。それも院長の経営力の一つだと考えます。
先生は、自院の経営環境を、感覚ではなく分析として語れますか。次回は、医院の規模によって必要になる企業力がどう変わるのかを論じます。
先生の医院のこれからを、心から応援しています。
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