日本の歯科医院は、小規模が圧倒的
東京商工リサーチの調査では、全国の主な歯科診療所6,590社のうち、売上高1億円未満が49.9%、5億円未満では95.8%を占めています。日本の歯科医院は、院長を中心とした小規模な医院が圧倒的に多いのが実態です。※東京商工リサーチ TSRデータインサイト 2026/07/13の記事より引用
しかし医院の規模が変われば、院長に求められる経営力や経営方法、組織マネジメント力も変わります。小規模のときに通用したやり方を、そのまま続けていては越えられない壁があるのです。
規模のステージごとに、必要な企業力は違う
院長を中心に診療している小規模のステージでは、収益モデルの選択と収益構造の設計、院長のリーダーシップ、院長のコミュニケーション力、診療報酬の算定力、そして予約管理力、院長の治療提案力、紹介患者獲得力が土台になります。院長一人の力で稼ぎ、チームをまとめられる領域です。ただ、院長が医院規模を租税特別措置法の範囲内に収めるのか、小規模を超えて更に拡大していくのかで経営の仕方はまったく違いますので、そこは早い段階で明確にして頂きたいです。
勤務ドクターや歯科衛生士が複数在籍する中規模のステージになると、数値で医院を管理する力、仕組み化、役割分担が必要になります。そして売上1.5億円、チームメンバー20人を超えるあたりから、組織化の力、つまり組織マネジメントの力が問われるようになります。
規模拡大の各ステージで院長の力量が追いつかなくなる壁は、「稼ぐ力の構築力」と「組織化力」です。院長一人で稼ぎ、人をまとめられる領域を超えるため、小規模時代と同じやり方を続けていると、壁を越えられなくなりやすいのです。
組織化を始める時期は、院長によって違う
組織化をいつ始めるかは、売上やメンバー数だけでは決まりません。メンバーが30人を超えても、院長が頑張ればチームをマネジメントできないわけではないからです。
それでも、組織化を早めに始めたほうがよい理由があります。一つは経営面の理由です。医院が大きくなるということは、院長の稼ぎに依存する割合を減らしていくということです。勤務ドクターや歯科衛生士一人当たりの売上を増やしていくには、彼らが自律して動けるようになる必要があります。そのとき、院長のトップダウンが強く残っていると、彼らの自律を妨げてしまいます。
もう一つは、メンバーがさらに増える日に備えるためです。院長一人でマネジメントできるぎりぎりまで頑張ってしまうと、将来の幹部候補がマネジメントを経験する機会を失います。人の成長には時間がかかります。だから組織化が必要になる時期に向けて、幹部候補に少しずつ権限(責任)を委譲し、失敗も含めた経験を積ませておくことが重要です。
「完全委任」まで進めているか
院長がスタッフの成長に不満を感じるとき、その原因は、委任を最後まで進めていないことにある場合があります。教える、教えながら任せる、任せきるという段階を踏まずに、幅広い権限を自分に残してしまうのです。無意識のうちに、すべてをコントロールできる状態にしておきたいのでしょうが、緊急時などトップダウンが必要な時以外にたびたび院長が介入してしまうと、彼らは自分が果たす役割に責任を持てなくなってしまいます。彼らは私にこう言います、「どうせ院長が決めるんです・・・」と。この状態は非常にまずい。だから私は彼らが責任を果たし、院長が院長にしかできない役割に集中できるように組織化を支援するのです。
医院規模が拡大するときには、「院長が売上を担う」状態から「チームで売上を担う」状態へ変えなければなりません。規模の拡大と組織化が進めば最終的には、部門責任者が部門の売上、部門予算、マネジメントを統括し、院長は幹部会議で各部門からの報告を受けながら、医院全体の戦略を幹部に説明する形へ移っていく必要があります。
組織化は、院長が稼ぎ頭でなくなるためにある
経営面から見れば、組織化とは「院長が稼ぎ頭でなくなるための取り組み」です。院長の稼ぎに依存している医院は、院長の限界が医院の限界になります。院長が診療やマネジメントの最前線から段階的に離れ、全体の戦略に集中できる医院だけが、次の規模へ進むことができます。
先生の医院は、いま院長の稼ぎとコントロール力にどれだけ依存していますか。そして、幹部候補への権限委譲は、早い段階から始められているでしょうか。次回は、規模を問わず必要になる「稼ぐ力の土台」として、制度対応と数値による検証の力を論じます。
先生の医院のこれからを、心から応援しています。
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